光あふれる想像の遊び
ふんわり軽々と想像の遊びの世界へ。
読み聞かせ目安 低・中学年 3分
あらすじ
とうさんはいけないっていうけれど、おふろばをそらいろにぬりたいな。
台所はきいろ。
遊び場の壁はまっしろ。
天井はどの部屋もみどりに。
壁にはかめさんをいっぱい描いて、窓をいっぱいはめて。
うちの周りの壁にもおかしな絵を描くの。
種もいっぱい蒔くよ。
大きなまっしろいドアも付けて。
馬と友達みんなと一緒に住むうち。
草木も茂り、広々とした海もある夢のおうち。
読んでみて・・・
『あなはほるものおっこちるもの』『ぼくはきみできみはぼく』『うちがいっけんあったとさ』などと同じ、ルース・クラウスとモーリス・センダックのコンビによる絵本です。
この絵本も上の3作と同じく、子どもの楽しい遊びの夢でいっぱい!
特別なストーリはありませんが、誰に咎められることもなく、思いっきり遊べる理想のおうちという点では『うちがいっけんあったとさ』に通じています。
「とうさんは そんなことしちゃ いけないよ だって。」
といいながら、おふろばをそらいろに。台所をきいろに。遊び場をまっしろにして、かめさんをいっぱい描き・・・。
思う存分、想像のお絵かきがはじまります。
子どもの心が、現実からふわっと想像の世界に、跳びあがる瞬間が描かれていきます。
光あふれる色とりどりの窓をはめて。
うちの周りの壁には、大きい大きい絵を描いて。
ふたりの子どもが、ケーキの中に足をずぶずぶ突っ込んじゃう変な絵を描いて。
種を蒔いて、寝室で馬を飼って、友達みんなと一緒に住んで・・・。
自由気ままな楽しいおうちを、現実と夢を軽々と行き来しながら作っていきます。
ルース・クラウスの肩ひじ張らないテクストは、しなやかな子どもの想像力を、軽やかに歌っているようです。
センダックの絵も、淡い色が光の束のように輝いていて、上にあげた3冊が、モノクロの線描きだったのとはまるで違っています。一見同じ人物が描いたとは思えないくらいです。
輪郭線が限りなく淡く、光に融けこんでいるかのようです。
夜の場面でさえ、月と星のきらめきが眩しいほど。
夢の中の心地よさに溢れている絵になっています。
子どもにとって現実は、楽しいこともたくさんあるけれど、大人の都合や決まり事に振り回されたり、縛られたりすることもきっと多いことでしょう。
まだ経験の少ない子どもたちにとっては、そのほとんどが未知のこと。
子どもの世界は、実は不安に囲まれた世界でもあります。
常に背伸びをしている緊張感もあることでしょう。
そんな子どもたちにとって、しがらみから解放された夢の遊びの世界は、自己解放のために必要不可欠な場なのでしょうね。
この絵本の主人公の男の子は、常に重力から解放されたかのように、ふわりと浮き上がって、どのページ、どの場面でも、軽々と夢と現実を行き来しています。
まるで羽が生えているかのように。
毎日の多くの時間を、想像の世界で遊んでいる子どもたち。
この絵本の男の子のように、夢のおうちを作ったり、秘密基地を作ったり、何かになりきって遊んだり・・・。
子どもたちは、軽々と現実と想像の世界を行き来して、日々遊んでいますが、その想像遊びは、子どもが子どもとして生きるために、自分自身を解放するために必要なものでもあるのでしょう。
体中の力を解放して、緊張を解き放って、軽々と気持ちよく、光あふれる想像の世界で遊ぶ子どもの世界が、明るく生き生きと描かれた絵本です。
大人も五感を解放して軽やかに、子どもと一緒に楽しみたい絵本だなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『おふろばをそらいろにぬりたいな』
ルース・クラウス文 モーリス・センダック絵 大岡信訳
1979.9.21 岩波書店 でした。
おふろばをそらいろにぬりたいな |
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