絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

ぼくはきみできみはぼく

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すばらしくかわいい♡絵本

かわいい子どもらしさが、みずみずしく溢れ出ている絵本です。

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読み聞かせ目安  中学年  20分

あらすじ

愛と友情についての、子どもたちの言葉の数々。

 

原っぱに佇む女の子

「このこは いま ともだちを

まっているところ

まっていて もっと

まっているの」

 

小さな弟がいる男の子

「このこは まだ しゃべれない。

でも ぼくには このこの いっていることがわかるーー

このこが いえのなかで わめいて、

どうしたらいいのか わからなかったとするでしょーー

でも ぼくには わかる。だから みんなに おしえてあげられるよ。」

 

仲良しの女の子ふたり。

「ふたごっぽく なりたいの、

ふたごっぽい くつと ふたごっっぽいコートで。」

 

「あいっていうのは ハガキをだすこと

ほかの ひとに だすよりも たくさんーー」

 

すきの うた

あのこが すき だって

あのこは わたしが すきなの だって

わたしたち すきどうしなの

だって

だって

ーーほら、これが そのダンスーー

だって、そうなんだもん!」

 

などなど、子どもたちの愛情が、詩とお話と、セリフとたくさんの絵の数々で綴られていきます。

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読んでみて・・・

もう、とってもすばらしく、かわいらしい絵本です。

小さな子どもの「すき」と「愛」がいっぱい!

大好きな友達と一緒にいる嬉しさ楽しさ。

好きな動物。お人形。宝物。夢。

それらがどんなに大好きか、子どもたちにとって大切なものであるかが、みずみずしく福福と詰まっている絵本なんです。

 

最初のページは、

 

「このこは いま ともだちを

まっているところ

まっていて もっと

まっているの」

 

たったこれだけのテクスト。

右画面の右下に、お花を持ったちいさな女の子が、ぽつんと佇んでいます。

白い画面に、原っぱと空、雲、太陽が、細い黒の線描きでラフに描かれ、見開き左側は何にもなく真っ白。

細やかで素朴な線が、子どもの素直な心とその存在を、この上なく可愛く描き出しています。

まだ、語彙の圧倒的に少ない子どもが、持っている言葉を精いっぱい使い、意味を最大限に広げ、自分の心を表現しているのが、美しい詩のような形となり、絵とテクストが最小限であることから生まれる大きな余白が、友達を待っている女の子の、期待の大きさを表しているようです。

 

絵は、どのページも白地に黒の細い線描き。小さな小さな絵ばかりです。

仲良しのお友達との関係が、マンガのコマ割りや、お芝居の一場一場のように、愉快に繋げて描かれていたり。その時その時の様々な気分が、1ページに散りばめるように収めれれています。

大人からすると、一見散漫な、ちぐはぐしているような感覚が、子どもの中では全然ちぐはぐではなく、子どもの論理の中で満足して収まっている独特の雰囲気が、見事に描かれているように感じます。

 

好きなもの、興味のあるものが、あちこちに溢れていて、ひとつひとつに新鮮な感覚で反応する子ども。小さな事も見逃さず、拾っていく感覚の敏感さ。

ちょっとした事の照れくささやくすくす笑い。みずみずしく湧き出してくる子どもの気分が、そのまま1冊に入っているような、スクラップブックのような絵本です。

 

湧き出してくる気持ちの羅列は、時に核心を突く言葉にもなります。

 

「あいしてるは すきと だいたいおなじだけど ただ ちょっと ちがう いいかたを するのーーでも おなじより ちょっと ええと もっとーーあいには もっとが いっぱい あるの!」

 

子どもらしくも、真を得た言葉です。

この絵本にはユーモアもいっぱい散りばめてあって、例えばこの「あい」のくだりは、続きに、

 

「あいしてたら しょうがクッキーぼうやの あしを あげちゃう りょうあしとも それにあたまも!」

 

と女の子がいっているのに、その愛を受けた男の子が小さく、

 

おさとうでできた ボタンだけでいいよ。」

 

といってみたりww。

素直な心もそのままに、ユーモラスに描かれていて、とても楽しく魅力的です。

 

どのページのどの子も、とても魅力的て愛らしくて、小さな宝物がいっぱい詰まった、宝箱のような絵本なんです。

子どもたちのいろんな場面のいろんな気分が、ふんだんに盛り込まれているので、読む子どもたちもきっと、心の隅から隅まで満たされたり、くすぐられたりして、満足することでしょう。

 

ただ難点は、絵があまりにも小さいので、教室など広いところでの読み聞かせには、残念ながら全く向きません。

おうちで1ページ1ページ、隅から隅まで、じっくりゆっくり繰り返し味わって楽しむのに向いた絵本です。

 

本当にいつまで見ていても見飽きない、かわいさ満点の、愛おしい絵本です。

子どもだけでなく大人でも、自分のために持っていたくなる、かわいいかわいい絵本です♡

 

 

今回ご紹介した絵本は『ぼくはきみできみはぼく』

ルース・クラウス文 モーリス・センダック絵 江國香織

2014.11 偕成社  でした。

ぼくはきみできみはぼく

ルース・クラウス/モーリス・センダック 偕成社 2014年11月
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