ちん とん しゃん♬
遊びの楽しさと自由に遊ぶ子どもの生命感あふれる絵本です。
読み聞かせ目安 低学年 5分
あらすじ
「ちん とん しゃん」
「うちが いっけん あったとさーー」
りすのうちでも、ろばのうちでもないおうち。ぼくだけが知っているおうち。
とてもすてきなベッドに、棚、ドア、壁、テーブル。
跳んだり跳ねたり、よじ登ったり、落書きもいっぱい!
かめにうさぎに大男。死んだねずみも連れて行く。
秘密ごっこで、お腹抱えて笑います。
「おつむ てんてん つる てん しゃん」
遊びはどんどん盛り上がり、
「おつむ てんてん つる てん しゃん つるつる てんてん つるてんしゃん」
「もっとやれ もっとやれ もっとやれ もっとやれ」
このうちは、山の上にも、谷の下にも、穴の中にもありません。
ぼくの頭の真ん中の中にあるおうち。
「てれつく てんてん すててん てん」
読んでみて・・・
「ちん とん しゃん」で始まる、なんともユニークでかわいらしく、楽しい絵本です。絶妙なポーズの「ちん とん しゃん」。何が始まるのかと思いきや、これがもう大騒ぎ!
ぼくだけが知っている、とてもすてきなベッドがあって、とてもすてきな棚があって、すごいドアがあって、壁には落書きしほうだいなすてきなおうち。
りすのうちでも、ろばのうちでもなく、山の上にも、谷の下にもなく、誰のものでもないぼくだけのうち。ぼくの頭の真ん中にあるおうち。
この秘密のおうちのなかで、「てれつく てんてん すててん てん」とお祭り騒ぎが、次々に繰り広げられるのです。
どれだけ落書きしても叱られない壁に、思いっきり落書きしたら、そこから次々にライオンや大男、さる、かめ、うさぎが出てきます。
大きなライオンは、椅子の詰め物をもぐもぐ食べて、もっと大きく膨らんで。
飲めや歌えの大騒ぎです。
やりたい放題の遊びは、どんどん盛り上がり、
「もっとやれ もっとやれ」
留まることを知りません。
もう、これは子どもの遊びたい放題の願望が、そのまま絵本になったものなのでしょう。
どんなに騒いでも、いたずらしても叱られない秘密のおうち。
体いっぱい使って遊べる楽しいおうち。
想像力の限りを尽くせるおうち。
子どもにとって、まさに夢のおうちです。
いたずら心いっぱいの子どもたちは、この本を読めばきっとムズムズ遊び心をそそられることでしょう。
解放感いっぱいの絵本です。
絵本自体は、一見地味で、とてもラフに描かれているようですが、表現はとても巧みです。
からし色の地に、ぼくの描いた落書きの黒い線がベースとなり、青いズボンを履き、白く抜かれたぼくが、浮き上がるような感じに描かれています。
ぼくの描いた夢の世界で、現実のぼくが、縦横に飛び跳ねて遊んでいる様子が、実によく表現されていると思います。
ぼくの、遊びに陶酔しきった表情も、とてもかわいらしくチャーミングです。
テクストのリズムもよく、
「てれつく てんてん すててん てん」
最初から最後まで、お祭りの笛や太鼓を思わせるリズムが鳴り響きます。
それはもう賑やか!
浮かれた感じが、生き生きと伝わってきます。
自由に遊ぶ楽しさ。
縛りのない喜び。
今を生きる子ども。
楽しさがいっぱいに詰まった絵本です。
「てれつく てんてん」と、思いっきり跳びあがり、どしんと着地したあと、最後のページでひとり、小さくちらりと振り返り、いたずらそうにニコッと微笑むぼくの顔は、とても満足そう。読み終わった子どもたちも、きっとぼくと一緒になって、大騒ぎして遊んできた、満ち足りた気持ちになるのではないでしょうか。子どもたちも一緒になって、最後にニヤッとしそうな、心憎い終わり方です。
大した筋というもののない絵本ですが、子どもの心の奥底を解放するような、自由な遊びの楽しさに満ちた、満足感溢れる絵本だなと思いました。
いろんなことからの縛りを解き放って、本来の子どもの自由な心の世界に遊ばせてくれる、楽しさ満載の絵本です。
閉塞感のあるご時世。子どもも、時には大人も、こんな絵本で自己解放してみるのもいいかもしれないなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『うちがいっけんあったとさ』
ルース・クラウス文 モーリス・センダック絵 渡辺茂男訳
1978.11.16 岩波書店 でした。
うちがいっけんあったとさ | ||||
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