絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ひよこのかずはかぞえるな』

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捕らぬ狸の皮算用 

 ことわざを物語に仕立てたユーモラスな絵本です。 

ひよこのかずはかぞえるな〔復刊〕

イングリ・モルテンソン・ドーレア/エドガー・パーリン・ドーレア 福音館書店 2003年02月
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by ヨメレバ

 読み聞かせ目安  中学年  6分

 

あらすじ

 

ある朝のこと。

めんどりが卵をひとつ産みました。

 

「こけこっこう!」

にわとりを飼っているおばさんは大喜び!

今朝の卵と、これまで貯めておいた卵棚の卵を合わせて3ダース、36個の卵を街へ持って行って売ろうと考えます。

 

おばさんは、36個の卵をかごに入れ、てくてく出かけていきました。

道々おばさんは考えます。

 

「このたまごが、いったい いくらになろうかね?」

 

わき目もふらずに金勘定をはじめました。

そして、お金を手に入れたら、何を買おうかと考えはじめます。

 

まず、めんどりを2羽。そうしたら今持っているめんどりと合わせて3羽。

3羽のめんどりが毎日3個卵を産む。そうしたらまた3羽めんどりを買って・・・。

そのうち鳥小屋はいっぱいに!!

 

大儲けしたら、羊を買って、ガチョウを買って、毛や羽を売って・・・豚や牛も買って、大金持ちに!!

女中や下男も雇って贅沢三昧!!

大富豪と結婚して奥方様に!!

 

夢はどんどん広がりますが・・・。

 

あんまり調子に乗りすぎて・・・ついつい頭に載せた卵のかごが・・・滑って落ちて・・・、

 

「ぴしゃん!」

 

「あらまあ、どうしよう!」

 

おばさんの夢は、儚く消えてしまいました。

 

それでも、おばさんは考えました。

 

「わたしにゃ くらしていけるい ちいさい うちがあるし、ひとりぼっちに ならないですむ いぬと ねこがいるし、まいあさ おこしてくれる おんどりも、まいにち たまごを うむ すてきな めんどりも、いてくれるもの。すてきな めんどりが いるだけでも、なんて しあわせなこったろうね」

 

と。

 

 

 

 読んでみて…

 

 「Don't count your chickens before they are hatched.」(捕らぬ狸の皮算用)ということわざを、お話仕立てにした絵本です。

 

表紙には、真っ青な空を思わせる水色を背に、立派なおんどり。じっとこちらをにらんでいるようです。「かぞえるなよ!」といっているのでしょうか。

 

表紙を開くと、見返しには15個の卵が!

メキメキ割れて、中からそれぞれいろんなものがかえっています。

ひよこはもちろん、牛、家、ソーセージ、男の人、卵から卵!!

とっても奇妙な卵の孵化です。

 

そうです!この奇妙な卵の孵化は、卵がいっぱい売れてお金持ちになったら、何を買おうかと考えるおばさんの夢そのもの!

おばさんが、これから繰り広げる妄想の数々を示しているのです。

 

主人公のおばさんは、コロコロ太った人の良さそうな陽気なおばさん。

森の中の家で、鶏や犬、猫といっしょに暮らしています。

 

おばさんは、卵が売れたら何を買おうかと、次々に妄想を膨らませ、強欲ぶりを発揮しますが、いつもちょっととぼけたような顔をしていて、明るくのんきな人柄が伝わってきます。

 

きっと、飼っている鶏や犬、猫も大事にかわいがっているのでしょう。朝、鶏が「こけこっこう!」と卵を産んだのを告げると、犬たちはまるで甘えるように、窓にすり寄り、おばさんを起こしています。

卵を喜ぶおばさんの周りで、動物たちもとても楽しそうにしています。

猫は、おばさんが街へ卵を売りに行く道中、ずっとお供しています。おばさんになついていて、普段から愛が通っていることがよくわかります。

 

おばさんの強欲妄想止まらぬお話の絵本ですが、憎めない愛らしさあふれるおばさんでの夢だから、ユーモラスで楽しいものになっているのだと思います。

 

絵も、カラフルで暖かく、おばさんだけでなく、動物たちもちょっととぼけた表情をしていてユーモラスです。家の脇に咲くひまわりにも顔が描いてあったりして、生き生きしています。

 

おばさんが、妄想をはじめるページは、黄金に輝く卵のアーチが描かれ、そのアーチをおばさんがくぐっていくようになっています。「黄金卵妄想のはじまりはじまり!」という感じで、とっても愉快です!

 

お話自体はとてもシンプルな絵本ですが、絵の細部はけっこう凝っています。

おばさんの卵売りについていく猫が、道々ネズミを追いかけてすったもんだしていたり。

道に映る雲の影が、おばさんの妄想する品々だったり!

道端の木に、これまたおばさんの妄想するハムがなっていたり!

割れて飛び散る卵の黄身が、これまたまたまたおばさんの妄想した品々の形で、夢が儚く飛び散ったさまを現していたり!!

随所で飽きさせない楽しさ与えてくれるものになっています。

 

 

おばさんは、最後に夢のつまった卵を割ってしまいます。

子どもたちは「あーあー。」といいますが、おばさんはあっけらかんとしています。

卵が割れて、夢は儚くついえてしまったけれど、今の自分には十分幸せな家がある。いっしょに暮らす仲間がいる。

おばさんは、今の暮らしに十分満足していて、その上で夢を見ているのです。

 

叶っても叶わなくてもいい夢。

 

現実の暮らしを愛し大切に営んでいる大人が抱く、大人だからこそ抱ける淡い夢の遊びといえるのかもしれませんね。

 

そんな意味で、シンプルなことわざ話の絵本ですが、実はけっこう大人も楽しめる味わいのある絵本だといえるのかもしれないなと思いました。

 

暖かさとユーモア、そしてちょっとした大人の楽しみのある、味のある一冊です。

 

 

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 今回ご紹介した絵本は『ひよこのかずはかぞえるな』

イングリとエドガー・パーリン・ドーレア作  瀬田貞二

1978.2.10  福音館書店  でした。

 

 

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