子どもとおもちゃの関係
ほんのちょっとの間に成長する子どもの心を描いた絵本です。
読み聞かせ目安 低学年 5分
あらすじ
ふわふわくんはおもちゃのくまで、アルフレッドが赤ちゃんのときからの友達でした。
はじめはふわふわくんの方が大きかったのですが、今ではアルフレッドの方が大きくなりました。
ふたりはいつもいっしょです。
朝ご飯のときも、アルフレッドがコースター・ワゴンに乗るときも、テレビを視るときも、寝るときも。
でもある日、アルフレッドのところに新しいおもちゃがやってきました。
とらのおもちゃで、アルフレッドは、しまくんという名前を付けて、遊ぶようになりました。
ふわふわくんは、おもちゃ箱に放り込まれてしまいました。
アルフレッドは、しまくんといつもいっしょ。
もう・・・ふわふわくんとは、遊ばなくなってしまいました・・・。
そんなある日、アルフレッドがおもちゃ箱を、裏庭の大きな木の下に持ち出し、積み木で自分としまくんの家を作って遊んでいると、妙なことがおこりました!
「どうして ぼくも なかまにいれてくれないの?」
「ぼくだって いっしょに あそびたいよ。」
ふわふわくんが、立ち上がってしゃべっているのです!!
それでもアルフレッドは、ふわふわくんを放り投げ、しまくんと遊びつづけます。
すると・・・ふわふわくんが大きな木に登りはじめました!!
木の枝にぶらさがるふわふわくんに、アルフレッドはいいました。
「ふわふわくん、おりておいでよ。おまえと あそぶから。」
でも、ふわふわくんは降りません。
アルフレッドは泣き出してしまいました。
お母さんが来ました。
ふわふわくんは、さらに高い高いところに登ってしまったので、お母さんにも届きません。
お父さんが、はしごを掛けても届きません。
お父さんとお母さんは、長い棒を探しにいきました。
その間にふわふわくんは、ちょっと下まで降りてきました。
「おりてきてよ、おねがい。」
アルフレッドはふわふわくんに頼みます。
「まえみたいに ともだちになるかい?」
「ああ、なる!」
ふわふわくんは、木から飛び降りてくれました。
お父さんとお母さんが、長い棒を持って戻ってきたとき、アルフレッドは積み木の家の中で、しまくんとふわふわくんといっしょに、クッキーを分け合って遊んでいました。
読んでみて…
新しいおもちゃを手にすると、古いおもちゃは見向きもしなくなる。
子どもにはよくあることです。
アルフレッドは、赤ちゃんのときから親しんできたふわふわくんに、目もくれなくなってしまいます。
そんなアルフレッドに対して、この絵本では、おもちゃであるふわふわくんが反撃!
木に登って降りてこないという行動を起こし、アルフレッドに抗議するのです!!
おもちゃからの反抗。
ちょっとどきっとしてしまいます。
ふわふわくんは、お父さんでもお母さんでも手の届かないところまで登っていき、アルフレッドへの抗議を体で表現します。
でも、お父さんとお母さんがいなくなったとき、ふわふわくんはアルフレッドにちょっと歩み寄り、アルフレッドと問答し、その結果、ふたりの間に和解が成立!
アルフレッドとしまくんとふわふわくん。3人での遊びが始まります。
戻ってきたお父さんとお母さんは、きょとんとしています。
この絵本では、子どもの心の成長、新たな関係性の構築を描いているのだと思います。
ふわふわくんはおもちゃのぬいぐるみですが、アルフレッドにとっては友達。
古いおもちゃと新しいおもちゃの関係というだけでなく、古くからの友達と新しい友達。子どもにとっての、人間関係の構築をおもちゃに託して描いているのでしょう。
1対1の狭い友達関係から、複数の友達関係。
拒絶と和解、融和を通して、子どもが世界を広げていくようすが描かれています。
それも、大人のいないところで。
お父さんとお母さんがいなくなった隙に、ほんのちょっとの間で、大人の手助けなしに成長する子どもの姿が描かれているのです。
子どもは気まぐれ勝手で、新しいものに飛びつくけれど、大人の知らないうちに、びっくりするような成長を遂げていることってありますよね。
そんなほんのちょっとの間のびっくりするような成長を、描いている絵本なのだと思います。
アルフレッドのお父さんとお母さんは、
「くまのやつ、かぜで おちてきたんだな。」
「でも、どうして あんなに たかいところまで のぼったのかしら。」
と不思議がります。
この絵本では、このお父さんとお母さんの問いに対して最後に、
「どうしてだか、わたしたちは しってますね!」
と、書いてありますが、アルフレッドとふわふわくんの秘密をしっている「わたしたち」=子どもたちは、アルフレッドとふわふわくんの秘密を共有している楽しみとともに、大人の知らないところで築き上げることのできる自分たち子どもの力のあることも、そのとき同時に理解し、満足することだと思います。
最近テレビのCMで、「いってきます」と「おかえり」の間で、親がしらない間に、子どもがずいぶん成長しているということを表現しているものを見ましたが、この絵本のアルフレッドも、まさにそれと同じだなと思いました。
親の、大人の知らない間に、しっかり成長を遂げていく子どもたち。
ちょっとの間の大成長に、びっくりしながらもほほえましく、子どもたちの育ちを見守っていきたいなと思いました。
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いつもありがとうございます。
今回ご紹介した絵本は『ふわふわくんとアルフレッド』
ドロシー・マリノ文・絵 石井桃子訳
1977.6.24 岩波書店 でした。
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