年老いた消防夫と消防車のお話。
グレアム・グリーンの文章にアーディゾーニが絵をつけた絵本です。

読み聞かせ目安 中学年 15分
あらすじ
リトル・スノーリング村に、年取った消防夫のサム・トロリーじいさんと、小さな消防車、消防車をひく小馬のトビーがいました。
消防車をひく馬⁉
そうです、サム・トロリーじいさんの消防車は、自動車ができるずっと前からある消防車で、馬車の消防車なのです。
サムじいさんは、小さな消防車もトビーも大切にし、自慢にしていました。
5月30日は消防記念日。
サムじいさんは小さな消防車を磨き上げ、トビーにもしっかりブラシをかけ、晴れの日を楽しみにしていました。
ところがその前日の夕方のこと。
隣町のマッチ・スノーリングの町長から手紙がきます。
マッチ・スノーリングに、新しい消防自動車を入れるというのです。マッチ・スノーリングに新しい消防自動車が来れば、もうリトル・スノーリングに、古ぼけた馬車の消防車は必要ありません。
消防記念日の主役は、もちろん新しい消防自動車です。
サムじいさんは、これからどうやって暮らしていこうか、途方にくれました。
悩みに悩んだあげく、サムじいさんは行商を始めることに。
トビーのひく小さな消防車は、行商馬車になりました。
夏から秋と行商をしてまわり、寒い冬になると・・・サムじいさんはリュウマチに罹り、消防車はサビだらけになりました。とうとうトビーまで逃げ出して、自分の生まれた牧園に帰ってしまいました。
大晦日の晩のこと。
逃げたトビーの農園で火事が起きます。
みんなが慌てふためくなか、消防馬のトビーは勇敢に納屋の扉に体当たりし、サムじいさんの家へ急ぎました。
サムじいさんは、トビーに小さな消防車をつなぎ、火事場へ急ぎます。
農園の火事は無事消され、サムじいさんは勲章をもらいました。
意地悪な町長は免職となり、面目丸つぶれの新しい消防士たちと消防自動車は、ロンドンに送り返されてしまいました。

読んでみて・・・
イギリスの小説家グレアム・グリーンの書いたお話に、チムシリーズでお馴染みのエドワード・アーディゾーニが絵をつけた絵本です。
アーディゾーニ老齢になってからの絵本で、若かりし頃のみずみずしさはありませんが、細かいところまで優しさのいきわたった画風は健在。隅々まで飽きることなく楽しめる絵本です。
昔は船乗りだったサムじいさん。広い世界を見て回ってきましたが、静かなリトル・スノーリングの村が「世界じゅうのどこよりもすき」で、小馬のトビーと小さな消防車と、そして消防の仕事が大好きでした。
お話は丁寧に村の様子、サムじいさんの背景を語り、絵も古めかしい消防車から消火に勤しむサムじいさん、安楽椅子でくつろぐサムじいさんと、ひとつひとつ丁寧に描いていきます。几帳面な語り口と細部まで描き込まれた絵から、サムじいさんの几帳面で丁寧な性格が伝わってきます。
けれど小さな消防車と自分の仕事を誇りに思っているサムじいさんに、不幸が襲います。最新式の消防自動車に、仕事を奪われてしまったのです。
どうやって暮らしを立てて行こうか途方に暮れるサムじいさんを見ていると、とても切なくなってきます。こんなにも仕事とつつましい生活を大事にしてきたサムじいさんが、老いぼれということで社会から疎外されていくなんて。老年者の失業問題。このお話は80年も前の1946年に書かれたものですが、今の高齢化社会を予兆するかのようです。
でもサムじいさんは、老いた自分なりに出来る仕事を探します。持っている物を生かして、行商という新しい仕事にチャレンジするのです。世間から相手にされなくなっても、自分で生きる道を探していくサムじいさんの姿には、人生に誠実に向き合ってきた人の強さを感じます。
小馬のトビーはというと・・・そんな誠実なサムじいさんを裏切って、さっさと生まれた農園に帰ってしまいますが、それが返って幸せ⁈を運んできます。すたこらさっさと生まれ故郷に帰ったトビーでしたが一変!さすがサムじいさんの馬!培ってきた消防馬としての能力をフル稼働させ、農園の扉を開きサムじいさんを迎えに行ったのです‼
誠実なサムじいさんが報われ、心からほっと胸をなでおろすことができる結末は、人生への肯定感を養ってくれます。
古い絵本ですが、つつましく誠実に仕事と生活を愛し満ち足りていくサムじいさんたちの幸せが、じんわりと読む者のこころを潤してくれます。
静にゆったりとあじわいたい、暖かな一冊です。
今回ご紹介した絵本は『小さなしょぼうしゃ』
グレアム・グリーン文 エドワード・アーディゾーニ絵 阿川弘之訳
1975 文化出版局 でした。
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