絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『そらにかえれたおひさま』

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スロバニアの昔話

のどかでほんわか暖かい気分に包まれる楽しい絵本です。           

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読み聞かせ目安  中学年  10分

あらすじ

灰色の雲が空一面に広がって、おひさまが見えなくなりました。

もう3日間も見えません。

心配になったひよこたちは、おひさまを探しにでかけました。

 

どんどん歩いていくと、大きなキャベツ畑があって、かたつむりに出会いました。

 

「かたつむりさん、かたつむりさん、おひさまが どこに すんでいるか おしえてくださいな」

 

ひよこは聞きましたが、かたつむりは知りませんでした。

 

次にひよこたちは、垣根の上にいるかささぎに聞きました。

でも、かささぎも知りません。

かささぎは、キャベツ畑の裏に住んでいるうさぎなら、知っているかもしれないといい、一緒についてきました。

でも・・・、うさぎも知りません。

 

ひよこたちは、かささぎとうさぎと一緒に、あひるの所へ行きました。

でも、やっぱりあひるも知りませんでした。

 

次は、はりねずみの所へ行きました。

すると・・・、はりねずみは、山の上の雲の向こうにおつきさまが住んでいて、その先におひさまが住んでいるのだと教えてくれたのです!

 

みんなそろって、山に登り、雲に乗って、おつきさまの所まで飛んで行きました。

おつきさまは、みんなをおひさまの所まで連れていってくれました。

 

行ってみると、おひさまの家は真っ暗!

おひさまは、ぐっすり眠っていたのです。

みんなは、おひさまを叩き起こしましたが、おひさまは眠っている間に、輝き方を忘れてしまったというのです‼

 

これを聞いたうさぎは水を汲みにいきました。

あひるは、その水でおひさまを洗い、かささぎがタオルで拭いて、はりねずみがゴシゴシ擦り、ひよこたちがちいさなゴミの一つ一つを嘴でひろい、おひさまはすっかりきれいになって、金色に輝くおひさまに戻りました‼

 

おひさまはまた前のように、暖かい光の束をあちらこちらに投げかけるようになりました。

ひよこたちも、おひさまと同じように、明るく嬉しそうに、金色に輝くのでした。

 

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読んでみて・・・

スロバニア地方の昔話です。

全体的に暖かく、おっとりとしたお話と絵。ほのぼのとしたのどかな絵本です。

 

おひさまがもう3日も顔を出さず、辺りが暗く寒くなってしまって心配になったひよこたちが、おひさまを探しにでかけます。おひさまがどこにいるのか知らないので、ひよこたちは道々出会った動物たちに聞きながら、一緒になって探していきます。

当てのない、行き当たりばったりの旅ですが、ひよこたちはへっちゃら。お母さんからもらった、ライムギとケシの実のお弁当を持って、のんきに出発です。

ひよこたちの表情が、とても魅力的で、1羽1羽違っていて、ちょっととぼけた味があって、心配しておひさまを探す旅なのに、あっちキョロキョロ、こっちキョロキョロ。虫を追ったり、ミミズとにらめっこしたり、ピヨピヨかわいい声が聞こえてきそうな、愉快な旅路です。

 

道中出会ったかささぎやうさぎ、あひるやはりねずみも、飄々とした味のある表情で、やっぱりとてもユーモラスです。お人好しな性格がよく伝わってきます。

 

長い長い旅をして、高い高い山に登り、雲に飛び乗りおつきさまへ。

青くて細い三日月のおつきさまも、ひょろっとしていて、これまたユーモラス。

そして、やっと探し当てたおひさまが、大きなお顔にとても小さな目と口で、大きななりのくせにチョボンとした佇まい!

なんだかでっかいミカンみたいで、情けない表情に笑えてしまいます。

寝てる間に輝き方を忘れてしまったおひさま。

本来は、世界中を明るく照らすおひさまなのにね!

 

そんなおひさまも、ひよこやうさぎたちにすっかりきれいにしてもらって、金色の輝きを取り戻します。

煌々と輝くおひさまは、とても嬉しく誇らしそうです。

ひよこたちの目も眩むほど。

世の中はまた明るくなって、楽しく輝きに満ちた日々が帰ってきます。

 

このお話はきっと、冬の寒い日々、春の暖かいおひさまを待ち望んで暮らしていた昔の人々の素朴な心から、生まれてきたお話なのでしょうね。素直な昔の人の心が、まっすぐに伝わってくるお話だなと思いました。

小さな動物たちが、それぞれの特性を生かして働いて、おひさまの輝きを取り戻すのもいいところ。

飄々としてのどかで、ちょっととぼけた味わいのある絵も、楽しく安心感があって、このお話の素直な暖かさにとても合っていると思います。

白地に澄んだ色遣いの水彩も、明るく透明感があって、心が軽くなるような感じです。

見開きごとに、左右で、旅の道中とその新しい展開が示されているのも、ひよこたちの旅の流れがわかりやすく、小さな子どもにもお話がまっすぐに伝わってくると思います。

 

灰色の雲が、むくむく広がって、先が見通せない世の中。そんな中でも、いちばんいいと思える道を選んで進み、兎にも角にも歩きはじめれば、なんとか光にたどり着ける。明けない夜はない。止まない雨はない。晴れない空はない。

人生を世の中を、肯定的に捉え、明るく暖かい気持ちにさせてくれる、昔話の普遍的な力を感じました。

絵本全体が、おひさまの明るい光に包まれているような、暖かく嬉しい気分になる、のどかで楽しく、かわいらしい1冊です。

 

 

今回ご紹介した絵本は『そらにかえれたおひさま』

ミラ・ギンズバーグ文 ホセ・アルエーゴ エーリアン・デューイ絵 さくまゆみこ訳

1984.1.31  アリス館  でした。

そらにかえれたおひさま改訳新版

ミラ・ギンズバーグ/ホセ・アルエゴ アリス館 1984年01月
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