絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ガンピーさんのふなあそび』

受け入れられる喜び

  おおらかで優しい暖かな陽だまりのような絵本です。

            

 読み聞かせ目安  低学年  3分

あらすじ

川岸に住むガンピーさんは、舟を一艘持っていました。

 

ある日、ガンピーさんが舟で出かけようとすると、男の子と女の子が、一緒に連れてってと頼みます。

ガンピーさんは、けんかさえしなければいいと言います。

 

しばらく行くと、今度はうさぎが一緒に連れてってと頼みました。

ガンピーさんは、跳んだ跳ねたりしなければいいと言います。

 

次は猫が一緒に連れてってと頼みました。

ガンピーさんは、うさぎを追い回さなければいいと言います。

 

次は犬。その次は豚。羊、にわとり、子牛、山羊と次々に動物たちが、一緒に連れてってと頼みます。

ガンピーさんは、その都度、それぞれにしてはいけない事を守る約束をさせ、舟に乗せてやります。

 

舟は人と動物たちでもう満員!

みんなで楽しく川下りです!

 

・・・ところがそのうち・・・

 

山羊が蹴っ飛ばし、子牛がどしんどしん歩き、にわとりが羽をパタパタやり・・・

羊も、豚も、犬も、猫も、うさぎも、子どもたちも、みんなドタバタしはじめ、けんかまではじまり大騒ぎ!!

とうとう舟は転覆してしまいました!!

 

みんなは泳いで岸にあがり、お日様で体を乾かし、野原を歩いてガンピーさんの家へ。

みんなで美味しいお茶をいただいたあと、ガンピーさんが言いました。

 

「じゃ、さようなら」

「また いつか のりにおいでよ」

                      

 読んでみて…

 のどかな陽だまりのような絵本です。

 

表紙には、穏やかな川面に浮かぶ一艘の舟。

たくさんの動物と子どもたちを乗せ、ガンピーさんが舟を漕いでいます。

明るい陽光に照らされた黄色の丘を背景に、ゆったりと流れる川をゆく舟に乗った一同は、みんなこちらを見て、まるで

 

「こんにちは、あなたもどうぞ。」

 

とでも言っているかのように、優しいほほえみを浮かべています。

 

ページをめくるとガンピーさんの紹介。

こちらを向いてまっすぐ立ったガンピーさん。穏やかな笑みを浮かべ、ひょうひょうとした顔でこちらを見ています。

 

「こんにちは」

 

と、優しく声をかけてくれているような気がしてきます。

 

さて、このガンピーさんが、舟でお出かけをするわけですが、次々と子どもや動物たちがやってきて、乗せてとお願いします。ガンピーさんはみんなを快く受け入れて、安全走行のための約束をさせます。

 

でも、たくさんの動物や子どもが、ちいさい舟にぎゅうぎゅうに乗って、何も起こらないわけはありません。山羊が蹴っ飛ばしたのをきっかけに、もう大騒ぎ!挙句の果てに舟は転覆!!

 

それでもガンピーさんは、変わらずひょうひょうと穏やかな顔で事態を受け入れ、岸に上がるとみんなをお茶に誘います。

 

お茶のテーブルの楽しそうなこと!

見開き画面いっぱいに、大きなテーブルを囲んで、お茶にフルーツ、ケーキを並べ、動物も人間も一堂に、分け隔てなく美味しいおやつを味わいます。

舟遊びを十分に楽しむ経験と、転覆というハプニングでちょっとどっきりする経験をしたあとの、ほっと一安心する時間。明るく和やかで充足した時が流れています。

 

絵も、繊細で細やかなタッチの線と、明るいパステル調の彩色が柔らかく、全体的にとても和やかで暖かい雰囲気に満ちています。

舟が進行していく場面では、左ページがセピアと白。右ページが彩色になっています。

白とセピアの落ち着いたページは、舟を漕ぐガンピーさん。右の彩色ページは、次々に乗せてとやってくる子どもや動物たち。

 

彩色ページで、次々に現れる子どもや動物にスポットがあたり、目を惹きます。

子どもや動物たちは、それぞれ人なつっこそうだったり、いたずらっ子そうだったり、どこかとぼけた感じがあったり、淡々としていながらもみんな表情豊かです。

 

そして左の、ずっと白とセピアだけの落ち着いたページに描かれた、舟に乗るガンピーさん。どのページでも、ずっと優しく穏やかにこちらを向いて、新しい仲間を全部受け入れてくれます。安定した白とセピアだけの色遣いが、ガンピーさんの穏やかさ、いつも変わらず来るものを受け入れてくれる安心感を支えています。

 

ガンピーさんが漕ぐ舟の背景も、ページを追うごとに少しずつそれぞれ違っていて、木々が生い茂っていたり、岸に家があったり、大きな柳の木があったり、石橋の下をくぐったり・・・。静かな落ち着いたページながらも、景色が流れて、舟が進行している様子がよくわるようになっています。

 

子どもや動物たちは、最初の約束が守れず、舟を転覆させてしまったけれど、ガンピーさんは最後まで優しく、

 

「また いつか のりにおいでよ」

 

と、言ってくれます。

何があっても、いつでも穏やかに受け入れてくれる安心感、おおらかさ。

 

舟に乗って、川に落ちて、岸に上がり、帰ってお茶する。とてもシンプルな筋立てながら、楽しさとスリルが味わえ、そして何よりも、いつも人に受け入れてもらえる嬉しさ、安心感に満ちた絵本です。 この本を読む子どもたちも、きっと、舟遊びの楽しさとともに、人に受け入れられる喜びと安心感を得て、充足した時間を得ることができるだろうと思います。

 

暖かい陽だまりにいるような心地よさを感じさせくれる、のどかで素敵な絵本です。

 心穏やかに過ごしたいときにぴったりです。

                      

 今回ご紹介した絵本は『ガンピーさんのふなあそび』

ジョン・バー人ガム作・絵 光吉夏弥訳

1982.11  ほるぷ出版  でした。



ガンピーさんのふなあそび<新版>

ジョン・バーニンガム/みつよし なつや ほるぷ出版 2020年02月10日頃
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