インドの昔話
奇想天外で大胆!ユニークな昔話です。
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読み聞かせ目安 中学年 7分
あらすじ
昔々、インドにクロドリの夫婦が住んでいた。
亭主のクロドリはとてもいい声の持主だった。
ある日、王様が近くを通りかかり、王様はクロドリの声を聞くと、
"あの声の主をつれてこい。わしの宮でんで鳴かせてみたい”
と命じた。
ところが、間違って女房のクロドリが連れていかれてしまった。
女房をさらわれたクロドリは怒り狂い、武装して女房を連れ戻しにでかけた。
「ランパンパン、ランパンパン、ランパンパン、パンパン。」
威勢よく太鼓をならして行進していった。
しばらく行くと、王様に子どもを殺されたネコに出会った。
ネコは、クロドリの供をすることにし、クロドリの耳の中に飛び込んだ。
「ランパンパン、ランパンパン、ランパンパン、パンパン。」
クロドリが、太鼓を叩いて行進していくと、今度はアリの群れに出会った。
アリには、王様から巣にお湯を流された恨みがあり、クロドリの供をすることにした。
クロドリは、アリも耳の中に入れ、さらに行進していった。
しばらくいくと、次は王様に木から引きちぎられた枝に出会った。
枝も、クロドリの耳の中に入り、クロドリの供をした。
またしばらくいくと、今度は王様から水を汚された川があって、川もクロドリの耳の中に入り、クロドリの供となった。
「ランパンパン、ランパンパン、ランパンパン、パンパン。」
王様の城についたクロドリは、女房をかえすよう王様に談判したが、断られ、にわとり小屋に放り込まれた。
王様は、にわとりがクロドリをやっつけてくれるだろうと思っていたが・・・
"ネコさん、ネコさん、出てきておくれ、
ここは、にわとりでいっぱいだ。
やつらをおそって、はね毛をまい上げ、
やつらをひっかき、おいちらせ”
クロドリは、耳の中のネコに頼んで、にわとりを追い払った。
王様は怒って、今度はクロドリを馬小屋に放り込んだ。
けれども、クロドリは木の枝を耳から出して、馬をひっぱたかせ、馬を追い出した。
怒り狂った王様は、クロドリをゾウの檻に放り込んだ。
王様は、クロドリがゾウにぺちゃんこにされると思ったが、クロドリはアリを耳から出し、アリがゾウの頭を刺し、噛みついたため、ゾウは気が狂って、互いに踏みつぶし合い、みんな死んでしまった。
最後に王様は、夜中の事態を自分の目で見届けようと、クロドリを自分のベッドの柱に縛り付けた。
クロドリは、川の水を耳から出して、王様の部屋を水浸しにした。
びしょ濡れになった王様は、とうとう降参し、クロドリに女房を返した。
クロドリは女房を連れて家に帰り、木の上で幸せに暮らしたとさ。
読んでみて…
インドに伝わる昔話を、マギー・ダブが再話したお話です。
ちっぽけなクロドリが、最高権力者の王様をやっつける痛快なお話。
小さなものが大きなものを倒す、東西各地の昔話によくあるパターンですが、インドならではなのでしょうか、独特の奇想天外な大胆さのあるお話になっています。
クロドリは、王様の城に向かう途中、ネコ、アリ、枝、川に出合い、仲間にしていくのですが、そのお供をみんな、耳の中に入れてしまうという度肝を抜く展開!!
クロドリは、王様の仕打ちに対し、この耳の中に入れたお供を呼び出して、そのつど難なく苦境を切り抜けます。
いつも権力をふるって自分勝手にしていた王様は、ちっぽけなクロドリに振り回されててんてこ舞い!
怒り狂って、今度こそ今度こそと、クロドリを追い込みますが、すべて蹴散らされ降参!!
力のない民衆が、暴君に打ち勝つ願望を形象化したお話なのでしょう。
ホセ・アルエゴとアリアンヌ・ドウィの絵は、独特のユーモアと伸びやかさがあります。
まるで原生生物が増殖していくような風情とでもいう感じの、ぶよーんとしたユーモラスな画風です。
女房を奪還しにいくクロドリも、とても生き生きとユーモラスに描かれています。
ちっぽけなクロドリは、したたかに完全武装して、王様の城へ乗り込みますが、その武器は棘の刀に、蛙の皮の盾、兜はくるみの殻です。
武装が整ったクロドリのにんまりとした表情もユニーク!
ちょっと不気味でニヤッとしたネコの表情、にわとりや馬、ゾウたちの間抜けてとぼけたような顔もユーモラスです。
「ランパンパン、ランパンパン、ランパンパン、パンパン。」
繰り返し鳴り響く太鼓の音も、威勢よく、お話にリズミカルな調子を与えています。
語り口も無駄がなくすっきりとテンポよく、始めから終わりまで一直線に進む昔話らしさを伝えています。
奇想天外で、独特な大胆さのある展開の昔話が、これまた独特で大胆なユーモアある絵と、すっきりとした語り口で描かれた、とても面白い昔話絵本になっています。
最後のページには、回り流れる川の上に、アリ塚が乗って、その上にうねうねとした枝組みの木があり、その上にネコが乗り、刺さった枝にクロドリの夫婦がとまっています。
お話に出てきたもの、お話の勝者が集った、めでたい締めくくりのページですが、この奇妙な取り合わせ、組み立ての世界観!
インドならではのものという感じがします。
西洋の昔話とも、日本の昔話とも、ちょっと違った独特の味わいのある面白い絵本です。
子どもたちにぜひ、いろいろな外国の昔話をとおして、いろいろな世界観を知り、楽しむ経験をつんでいってもらいたいなと思いました。
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いつもありがとうございます。
今回ご紹介した絵本は『ランパンパン』
マギー・ダフ再話 ホセ・アルエゴ/アリアンヌ・ドウィ絵 山口文生訳
1989.6.20 評論社 でした。
ランパンパン | ||||
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