絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ランパンパン』

*当ブログではアフェリエイト広告を利用しています。

インドの昔話

奇想天外で大胆!ユニークな昔話です。

ラン パン パン―インドみんわ (児童図書館・絵本の部屋)

新品価格
¥1,320から
(2020/3/1 14:02時点)

 読み聞かせ目安  中学年  7分

 

 あらすじ

 

昔々、インドにクロドリの夫婦が住んでいた。

亭主のクロドリはとてもいい声の持主だった。

 

ある日、王様が近くを通りかかり、王様はクロドリの声を聞くと、

 

"あの声の主をつれてこい。わしの宮でんで鳴かせてみたい”

 

と命じた。

ところが、間違って女房のクロドリが連れていかれてしまった。

 

女房をさらわれたクロドリは怒り狂い、武装して女房を連れ戻しにでかけた。

 

「ランパンパン、ランパンパン、ランパンパン、パンパン。」

 

威勢よく太鼓をならして行進していった。

 

しばらく行くと、王様に子どもを殺されたネコに出会った。

ネコは、クロドリの供をすることにし、クロドリの耳の中に飛び込んだ。

 

「ランパンパン、ランパンパン、ランパンパン、パンパン。」

 

クロドリが、太鼓を叩いて行進していくと、今度はアリの群れに出会った。

アリには、王様から巣にお湯を流された恨みがあり、クロドリの供をすることにした。

 クロドリは、アリも耳の中に入れ、さらに行進していった。

 

しばらくいくと、次は王様に木から引きちぎられた枝に出会った。

枝も、クロドリの耳の中に入り、クロドリの供をした。

 

またしばらくいくと、今度は王様から水を汚された川があって、川もクロドリの耳の中に入り、クロドリの供となった。

 

「ランパンパン、ランパンパン、ランパンパン、パンパン。」

 

王様の城についたクロドリは、女房をかえすよう王様に談判したが、断られ、にわとり小屋に放り込まれた。

 

王様は、にわとりがクロドリをやっつけてくれるだろうと思っていたが・・・

 

"ネコさん、ネコさん、出てきておくれ、

ここは、にわとりでいっぱいだ。

やつらをおそって、はね毛をまい上げ、

やつらをひっかき、おいちらせ”

 

クロドリは、耳の中のネコに頼んで、にわとりを追い払った。

 

王様は怒って、今度はクロドリを馬小屋に放り込んだ。

 

 けれども、クロドリは木の枝を耳から出して、馬をひっぱたかせ、馬を追い出した。

 

怒り狂った王様は、クロドリをゾウの檻に放り込んだ。

 

王様は、クロドリがゾウにぺちゃんこにされると思ったが、クロドリはアリを耳から出し、アリがゾウの頭を刺し、噛みついたため、ゾウは気が狂って、互いに踏みつぶし合い、みんな死んでしまった。

 

最後に王様は、夜中の事態を自分の目で見届けようと、クロドリを自分のベッドの柱に縛り付けた。

 

クロドリは、川の水を耳から出して、王様の部屋を水浸しにした。

びしょ濡れになった王様は、とうとう降参し、クロドリに女房を返した。

 

クロドリは女房を連れて家に帰り、木の上で幸せに暮らしたとさ。

 

 

保育士の転職なら、保育士特化型転職支援【イクシィ】

 

 

読んでみて…

 

インドに伝わる昔話を、マギー・ダブが再話したお話です。

 

ちっぽけなクロドリが、最高権力者の王様をやっつける痛快なお話。

小さなものが大きなものを倒す、東西各地の昔話によくあるパターンですが、インドならではなのでしょうか、独特の奇想天外な大胆さのあるお話になっています。

 

クロドリは、王様の城に向かう途中、ネコ、アリ、枝、川に出合い、仲間にしていくのですが、そのお供をみんな、耳の中に入れてしまうという度肝を抜く展開!!

 

クロドリは、王様の仕打ちに対し、この耳の中に入れたお供を呼び出して、そのつど難なく苦境を切り抜けます。

 

いつも権力をふるって自分勝手にしていた王様は、ちっぽけなクロドリに振り回されててんてこ舞い!

怒り狂って、今度こそ今度こそと、クロドリを追い込みますが、すべて蹴散らされ降参!!

 

力のない民衆が、暴君に打ち勝つ願望を形象化したお話なのでしょう。

 

 

ホセ・アルエゴとアリアンヌ・ドウィの絵は、独特のユーモアと伸びやかさがあります。

まるで原生生物が増殖していくような風情とでもいう感じの、ぶよーんとしたユーモラスな画風です。

 

女房を奪還しにいくクロドリも、とても生き生きとユーモラスに描かれています。

ちっぽけなクロドリは、したたかに完全武装して、王様の城へ乗り込みますが、その武器は棘の刀に、蛙の皮の盾、兜はくるみの殻です。

武装が整ったクロドリのにんまりとした表情もユニーク!

 

ちょっと不気味でニヤッとしたネコの表情、にわとりや馬、ゾウたちの間抜けてとぼけたような顔もユーモラスです。

 

「ランパンパン、ランパンパン、ランパンパン、パンパン。」

 

繰り返し鳴り響く太鼓の音も、威勢よく、お話にリズミカルな調子を与えています。

 

語り口も無駄がなくすっきりとテンポよく、始めから終わりまで一直線に進む昔話らしさを伝えています。

 

奇想天外で、独特な大胆さのある展開の昔話が、これまた独特で大胆なユーモアある絵と、すっきりとした語り口で描かれた、とても面白い昔話絵本になっています。

 

最後のページには、回り流れる川の上に、アリ塚が乗って、その上にうねうねとした枝組みの木があり、その上にネコが乗り、刺さった枝にクロドリの夫婦がとまっています。

お話に出てきたもの、お話の勝者が集った、めでたい締めくくりのページですが、この奇妙な取り合わせ、組み立ての世界観!

インドならではのものという感じがします。

 

西洋の昔話とも、日本の昔話とも、ちょっと違った独特の味わいのある面白い絵本です。

 

子どもたちにぜひ、いろいろな外国の昔話をとおして、いろいろな世界観を知り、楽しむ経験をつんでいってもらいたいなと思いました。

 

 

ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。

いつもありがとうございます。


絵本ランキング

にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

今回ご紹介した絵本は『ランパンパン』

マギー・ダフ再話  ホセ・アルエゴ/アリアンヌ・ドウィ絵  山口文生訳

1989.6.20  評論社  でした。

 

 

ランパンパン

マギー・ダフ/山口文生 評論社 1989年06月
売り上げランキング :
by ヨメレバ

このブログに掲載している著作物の書影・書誌データ等は、版元ドットコム・各出版社ホームページ・個別の問い合わせ等を経て、使用の許諾を確認しています。