実直な暮らしの積み重ね
『せきたんやのくまさん』が今度は植木屋さんに。やっぱり実直なくまさんです。
読み聞かせ目安 低学年 3分
あらすじ
植木屋のくまさんは、朝になるとエプロンを付け、手押し車に植木ばさみと箒を入れ、お隣の家へ行きます。お隣の庭の手入れをするのです。
まず、垣根の高い木を、鳥の形に刈り込みます。
「ちょきん ちょきん ちょきん!」
次に芝生を刈り、刈った芝を手押し車に入れます。
隣の奥さんからお金をもらうと、家に帰ってお昼ご飯です。
午後は自分の畑で野菜を収穫します。
それから、門の外に野菜や花を並べると、お客さんがたくさんやってきました。
野菜や花が売り切れると、手押し車を物置にしまい、手を洗って晩ご飯です。
その後、すっかりくたびれたくまさんは、寝間着に着替え、ぐっすり眠りました。
これが、うえきやのくまさんの1日です。
読んでみて…
『せきたんやのくまさん』が、今度は植木屋さんになってお仕事です!
植木屋さんでも、またまたやっぱりこのくまさんは実直・堅実!!
あいかわらずの丁寧で真面目な働きぶりです。
お話も、これまでのどのシリーズとも同じで、くまさんの持ち物紹介から始まります。
植木屋のくまさんが、スコップと、熊手と、赤い手押し車を持っていること。それらを持って、朝から仕事に取り掛かることを、絵とテクストではっきりと、わかりやすく具体的に見せてくれます。
「ぎー がたん、ぎー がたん」
手押し車を押して、お隣の家に行くと、丁寧な仕事にかかります。
垣根は、丸味を持たせながらまっすぐきっちり刈り込み、木はなんともかわいらしく、器用に鳥の形に刈り込んでいきます。イギリスの家の庭らしい、美しい剪定法です。
庭の芝も丁寧に刈り込み、お手入れ終了!
奥さんから、ビスケットとレモネードをいただき、お金をもらって家に帰ります。
くまさんに、丁寧で真面目な仕事への感謝と、仕事に見合った代価が払われることを、子どもたちにきっちりわかりやすく見せてくれます。
お家の畑では、その日に必要な分だけを、これまた丁寧に収穫し、きれいに陳列。
くまさんの野菜は、とてもおいしいので、ご近所の評判です。お客さんは喜んで買っていきます。そして、くまさんはいつも「こんにちは」や「どうも ありがとうございます」を忘れずにいいます。
丁寧で実直な仕事と、それに対する正当な評価・報酬。
裨益を受ける者同士の感謝の情のやりとり。
労働の場における、最も基本的で大切なことを、幼い子どもにもわかりやすく、具体的に見せてくれます。
これは「くまさんシリーズ」全編通していえることで、どの絵本もとてもシンプルに、朝起きて仕事して寝るというくまさんの1日を、淡々と記しただけですが、働くということ、生活するということの基本を、子どもたちにきっちり確認させ、積み重ねていくことで着実に身に付けさせてくれているのだと思います。
何の大きな出来事もないけれど、大きな感情の起伏もないけれど、生きていくうえでいちばん基本となり、力となることを、無駄なくすっきりと教えてくれているのです。
今回の『うえきやのくまさん』は、絵の明るさ華やかさでは、シリーズ一番!
初夏の緑や花々が、どのページにも色鮮やかに輝いています。
くまさんが仕事するお隣の庭は、赤や黄、橙、青、紫・・・色とりどりの花々が咲き乱れ、芝生も木々も青々としています。玄関の扉の周りにも、花がぐるりと咲き渡ってとてもきれい!
くまさんの家の庭には、キャベツにんじんetc・・・、さまざまな野菜が実り、小鳥や蜂や蝶が舞っています。
お家の中も、花々を随所にあしらい、明るく美しくしつらえてあります。
こんなに明るく美しいところで暮らせたら、きっと心も体も生き生きと伸びやかに なるに違いないという健やかさです。
無駄なくすっきりと簡潔に、明るく暖かく健やかに、あたりまえの日常を具体的にきっちりとわかりやすく描いた「くまさんシリーズ」の絵本。
単純すぎるくらい単純ですが、生活するということ、働くということの基本を、子どもたちがひとつひとつ積み重ね、確認し、自分のものにしていける絵本シリーズなのだと思います。
同じパターンの繰り返しも、安心感を与え、落ち着いた気持ちの中で、生きる力を付けてくれるように思います。
当たり前の暮らしを当たり前に着実にできる力。丁寧に実直に働く力を、積み重ねさせてくれる優れたシリーズ絵本です。
今回ご紹介した絵本は『うえきやのくまさん』
フィービとジョーン・ウォージントン作・絵 まさきるりこ訳
1987.5.30 福音館書店 でした。
うえきやのくまさん | ||||
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