絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『がちょうのペチューニア』

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知性!?とユーモア

 本当の知性とは何かを楽しく教えてくれる絵本です。

がちょうのペチューニア

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読み聞かせ目安  中学年  13分

あらすじ

 ある日、がちょうのペチューニアが草地を歩いていると・・・地面の上に、変な物が落ちていました。

これは何?とペチューニアが考えていると・・・「ほん」というものだと気づきます。

 

そしてペチューニアは、パンプキンおじさんが、本はとても大事な物で、

 

「ほんを もち、これに したしむ ものは、かしこくなる」

 

と言っていたことを思い出します。

そこでペチューニアは、

 

「じゃ、つまり あたしが この ほんを もっていって だいじにしたら、あたしだって かしこくなるって わけね。そうすれば、もう だれも あたしのこと、おばかさんだ なんて いわなくなるわ」

 

と考え、本を持ち帰り、いつも一緒に眠り、泳ぎ、自分はとても賢いのだと思い込むようになりました。

 

しだいに周りの動物たちも、

 

「もしかしたら、ペチューニアは、それほど おばかさんじゃ ないこもしれないよ。なにしろ ほんを もっているし、それに、とても かしこそうに みえるもの」

 

と言いはじめます。

 

その気になったペチューニアは、次々と困っている人のところへ、首を突っ込みにいきます。

そして・・・、おんどりのキングのとさかは、お百姓がめんどりと区別するために差し込んだプラスチックだと教えたり、めんどりのアイダにひよこの数をまちがえて教えたり、穴から抜け出せなくなった犬のイージーを煙で燻し出したり!虫歯で困っている馬のストローに、「ぜんぶ、ぬいちゃえば いいのよ。」と言ったり!! おしまいは、「きけん はなび ちゅうい」と書いてある箱を「キャンディーって かいてあるわ」と教え、みんなで突き合い大爆発!!

 

ペチューニアのおかげで、みんなひどい大迷惑に会いました。

 

その後、ペチューニアは気づきます。本には何か書いてあることを。

 

「やっと わかったわ。ほんは、つばさの したに はさんで もちあるくだけじゃ だめなのよ。なかみを あたまや こころに いれなくちゃ。そして、そのためには、じを おぼえなくちゃ いけないのよ」

 

そうわかったペチューニアは、すぐさま勉強に取り掛かりました。

本当に賢くなって、みんなを幸せにできるように。

 

 

 

読んでみて…

「ほんを もち、これに したしむ ものは、かしこくなる」

 

本を持っているだけで賢くなれると思っていたペチューニア。

形ばかり立派に取り繕って、中身は空っぽ。上辺だけの人の象徴として描いているのでしょう。

 

決して読まれることのない難しそうな本がずらりと並んだ応接間。高価な宝飾品やブランド物の衣服で着飾った紳士淑女風の人々。

大人の世界にも、形ばかり立派で中身は空っぽの人々がいっぱいいます。それではいけませんよ、中身をちゃんと充実させなければなりませんよ、そういったことをエスプリとユーモアたっぷりに描いた絵本なのだと思います。

 

ちゃんとお勉強しなくてはなりませんよ、ということを教えている絵本なのですが、この絵本は、それをとても軽やかに、明るく楽しく描いています。

 

オレンジ色の明るい表紙には、首をすっと伸ばして気取ったペチューニア。蝶や草花に囲まれて優雅です。

見返しには、首をより一層長く伸ばしてくねらせ、首をつっこむペチューニア。長く伸びる首、突っ込む首の意味は、お話を読み進めていくとわかりますが、それを予見するような興味深い絵になっています。

 

全編通して、絵の線は細く軽やかで躍るよう。

色遣いは、白地に赤、青、黄、緑、ピンクのみ。少ない色数ですが、とても鮮やかで明るくきれいです。

構成は、この鮮やかなカラーのページとモノクロのページが交互にでてきて、全体を通して、躍動感がある伸び伸びとした明るさがある、楽しい雰囲気の絵本になっています。

 

明るさ楽しさは、お話にもいっぱい!

 

「ほん」を手にしたペチューニアは、自分がそれだけで賢くなったと思い込み、得意になってすまし顔で歩いていきますが、面白いのは、その首が得意な気持ちに合わせてどんどんどんどん長く伸びるところ。まるでつんとすまして気取って歩く、お金持ちのご婦人のようです。表紙や見返しに描かれたペチューニアの姿の意味も、ここでわかります。

 

そして、自分は賢いと思い込んだペチューニアは、おせっかいにもいろんなところに、その長ーい首を突っんでいきますが、その突っ込みようのおかしさ!!本当は何にもわかっていないペチューニアは、見当はずれなことばかりしでかします。

 

ひよこの数が数えられないめんどりのアイダのところでは、かわりに賢いペチューニアが数えてあげますが、

 

「えーっと、みずのみばに 3ば。えさばこに 3ば。あんたの あしもとに 3ば・・・・・・ってことは、3かける3 だから、つまり6・・・・・・」

 

と、頓狂な計算!!

 

それを聞いたアイダが、

 

「それ、9より すくないんですか?」

 

と、聞くと

 

「いいえ、おおいんです。ずっと ずっと おおいんですよ」

 

と、またまた頓狂な受け答えをして、アイダを混乱させてしまいます。

 

お話を聞いている子どもたちは、もちろんひよこの数をちゃんと計算できますから、ペチューニアのおばかっぷりに爆笑です!

 

それから続くペチューニアのおばかな助言は、そのつど子どもたちの笑いを誘います。極めつけは、「きけん はなび ちゅうい」と書いてある箱を、なぜか「キャンディー」と読み、みんなで突っついて大爆発するところ!!

 

「花火だよ。は な び!」

「何やってんだよ!」

 

と声が聞こえてきます。

 

子どもたちはペチューニアのおばかっぷりを、客観的に見て、笑い楽しみます。

 

でも、この絵本のよいところは、面白おかしいだけではなくて、ちゃんと最後に、本というものは、中身を頭や心に入れなければ意味がないことを教えてくれるところ。

 

そして、何よりいちばんすばらしいのは、本がちゃんと読めるように勉強を始めたペチューニアが、何のために本を読むのかを記しているところです。

 

ペチューニアは、「いつの ひか ほんとうに かしこくなれるようにーー」勉強し、本を読みます。

でも、それは自分が賢くなって、みんなからあがめられ、首を長々と伸ばすためではなく、賢くなれば、「きっと みんなを しあわせにしてあげられる」と思うからなのです!!

 

本当の知性というものは、ただものをたくさん知っていること、頭の回転が速いこと、学歴が高いこと、ましてや本をたくさん持っていることなどではありません。

 

持っている知識や能力を使って、いかに人の役に立つか。人を、世の中を幸せにできるかが、知性に求められていることなのだということを、きちんと最後に子どもたちに伝えてくれているのです。

 

学ぶこと、知を獲得することの必要性などを説くと、とかく説教くさくなりがちですが、この絵本は、明るくたのしくユーモアたっぷりにそういったことを教えてくれます。

 

「ほんとうのかしこさ」を教えてくれる優れた絵本なのだと思います。

明るく優美な絵と、エスプリの利いたおもしろいお話。

知的で美しく楽しい優れた絵本です。

 

 

今回ご紹介した絵本は『がちょうのペチューニア』

ロジャー・デュボワザン作 松岡享子訳

1999.1.6 冨山房  でした。

 

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