誠実で生き生きとしたお仕事絵本
『ちいさいしょうぼうじどうしゃ』のスモールさんが、今度はお百姓さんになってお仕事です!
読み聞かせ目安 低学年 3分
あらすじ
農場に住むお百姓のスモールさんは、毎朝早く起きて、家畜小屋の動物たちに餌をやります。
牛乳を搾って、牛乳缶に入れ、牛を牧場に放し、トラックに牛乳缶を運びます。
スモールさんはトラクターを持っていて、このトラクターで、春には牧草地を掘り起こし、夏には牧草を刈ります。秋には、りんごを収穫したあと、トラクターで荷台を引っ張り、お店に並べます。
冬には、林で薪を作り、馬ぞりで運びます。
毎日夕方になると、卵を集め、牛を牧場から連れ帰り、また牛乳を搾り、家へ帰って晩御飯。
これがお百姓のスモールさんの1日です。
読んでみて…
『ちいさいしょうぼうじどうしゃ』のスモールさんが、今度はお百姓さんになってお仕事です。
表紙にはご自慢のトラクターに乗って、農道を進むスモールさん。消防士のスモールさん同様、お百姓のスモールさんも、きりりと引き締まった表情がすてきなイケメンです。緑豊かな明るい農場を進んでいきます。
表紙を開くと見開きには、「そらとぶとりからみた スモールさんののうじょう」と書いて、スモールさんの農場の、まさに鳥観図が丁寧に描かれています。
細かく描き込まれた図を見ていると、これからここでどんなお話が始まるのか、ワクワクしてきます。
この絵本では、『しょうぼうじどうしゃ』のときもそうでしたが、スモールさんの仕事が、子どもたちにわかりやすいよう、無駄なくきっちりすっきりと描かれています。
朝早く起きて、動物たちの世話をし、牛乳を搾り出荷すること。
春夏秋冬それぞれの季節の仕事があること。
トラクターでは、どんな仕事ができるのか。
それぞれのページで、スモールさんのそれぞれの仕事が、絵とテクストできっちりわかりやすく、リズミカルに説明されています。
とても淡々とスモールさんのお仕事を語っているのですが、どの場面でも明るく生き生きと働くスモールさんの姿が見られます。
動物、牛乳、畑、果樹園、林、トラクター。農場にあるすべてのものに、スモールさんのまっすぐな眼差しが向けられ、スモールさんが愛情と誠意をもって、仕事をしていることが伝わってきます。
農場の動物たちも、スモールさんといるのが嬉しそう。
牛も、豚も、馬も、鶏やアヒルたちも、スモールさんの餌やりに、ワクワク楽しそうな様子で、小躍りしてやってきています。
犬のティンカーも、じっとスモールさんの仕事を見つめたり、ときに牛とじゃれあいながら、スモールさんにいつも付いてきて、慕っているのが伝わってきます。
明るく生き生きとしたスモールさんの農場でのお仕事には、地に足のついた仕事ぶり、仕事に対する愛情や喜びが感じられます。
農場の仕事の、1日のサイクル、春夏秋冬1年のサイクル。循環する時間のリズムがあること。そのリズムにそって、自然と共に営む人間の暮らしというものも、この絵本では、シンプルにわかりやすく子どもたちに見せてくれているのです。
はっきりとしていて丸味をおびた描線は、柔らかいけれども甘ったるくなく、すっきりとしています。
きりっとした表情で働くスモールさんは、子どもに媚びることなく、誠実に働く人の姿を見せてくれます。
大きな出来事や、起伏に富んだストーリ展開などは何もありませんが、愛情をもって、自然と共に、地に足をつけて働くことの尊さが伝わってくるすてきな絵本です。
働くということ、生活するということの基本を、明るく生き生きと子どもたちに誠実に教えてくれる絵本だと思います。
いろいろな仕事に興味を持ちはじめ、まねしたり、憧れたりするようになる小さな子どもたちに、このような媚びのない、誠実なお仕事絵本を読んであげたいなと思います。
今回ご紹介した絵本は『スモールさんののうじょう』
ロイス・レンスキー文・絵 渡辺茂男訳
1971 福音館書店 でした。
スモールさんののうじょう |
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なお、「スモールさん」シリーズの絵本は、初版時はシンプルな3色刷りでしたが、版が改まって、現在はカラフルな多色刷りになっています。私は旧版の3色刷りの方が、すっきりしていていいなと思います。でもなかなか手には入りにくいので、3色刷りはどうぞ図書館などでご覧ください。
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