馬で引くボートでお仕事
『せきたんやのくまさん』のくまさんが、ボートやさんになってお仕事です。
読み聞かせ目安 低学年 5分
あらすじ
あるところに、ボートやのくまさんが、妹のスージーと馬のデイジーといっしょに住んでいました。
くまさんは、ボートの家を1艘持っていて、ボートでいろいろな重いものを運びます。
朝早く起きて、スージーはご飯の仕度。くまさんは馬のデイジーに餌やりをします。
ご飯がすむと、デイジーをボートにつなぎ出発です。
干し草を運んだり、石炭を運んだり、通りがかりの男の子を、ちょっと乗せてやったりもします。
仕事が終わると、晩ご飯を食べ、くまさんは笛を吹き、スージーは歌を歌います。
それからボートの家に戻って眠ります。
これが、ボートやのくまさんの1日です。
読んでみて・・・
『せきたんや』にはじまる、「くまさんシリーズ」絵本の第6弾です。
今回のくまさんは、ボート屋さん。
ボートに馬をつないで、ボートは川を、馬はその岸に沿ってボートを引きながら進んで行くという、流れが急な川の多い日本では、なかなか見られない珍しいお仕事です。
くまさんのボートは、住居も兼ねていて、立派なかまどや、色とりどりの絵皿が飾られたかわいいキッチンもあります。そして今回は、ひとり暮らしではなく、妹のスージーもいっしょです。
これまでのシリーズとは、ちょっと違った設定のくまさんですが、ボート屋になっても、やっぱりくまさんはくまさん!実直で丁寧にお仕事します。
上手に馬のデイジーを操り、ボートを引かせ、トンネル(橋)をくぐるときなんて、実に手際よく、デイジーの縄を外し、ボートだけトンネルをくぐり、デイジーは岸を歩ませ、トンネルを抜けたら、さっとまた縄をつないで進みます。
ぱかぱか ぱかぱか!
熟練した仕事人です。
通りがかりの男の子を、気前よくボートに乗せてやったり。重い石炭や干し草を配達してもらった人々も満足そうで、くまさんの仕事が、人の役に立っているのがよくわかります。
「くまさんシリーズ」の絵本は、どれも実に単純ですが、それぞれの仕事を、ひとつひとつ順を追って丁寧に見せてくれて、仕事というものがどいうものなのかを、子どもにわかりやすく教えてくれるのが特徴です。
簡潔なテクストが、一語一語ストンストンと気持ちよく入ってきて、仕事や生活に、秩序やリズムがあることを教えてくれます。
丁寧な仕事が人を喜ばせること、誠実に働いたあとは、充実した満足感があることも、無駄のない基本的な事柄だけを描いた絵とテクストが、幼い子どもにもわかりやすく伝えてくれます。
「くまさんシリーズ」の絵本は、明るく清潔感ある水彩の絵も魅力的です。
が、・・・この『ボートやのくまさん』は、いろいろ細部を描き込みすぎたのか、ちょっとこれまでにご紹介した4作『せきたんや』~『うえきや』に比べると、焦点がぼやけてしまっている感じがあります。淡い色合いはきれいだけれど、よりいっそう淡く、ちょっとぼやっとした印象になってしまっているのです。
これまで丁寧だったくまさんの言葉遣いも、丁寧でなかったり・・・。
くまさんのかわいらしさや誠実さも、なんだかぼやけてしまっている感じがします。
「くまさんシリーズ」の絵本は、実はこの『ボートや』の前に『ぼくじょうのくまさん』(1997 童話館出版)、後に『しょうぼうしのくまさん』(2020 福音館書店)もあるのですが、『ぼくじょう』と『しょうぼうし』は、さらに一段とぼやけた印象です。
シリーズ最初の『せきたんや』から、50~60年の年月がたってしまったせいでしょうか。
作者もフィービとセルビ・ウォージントン(『せきたんや』『パンや』『ゆうびんや』)から、フィービとジョーン・ウォージントン(『うえきや』『ぼくじょう』)、フィービ・ウォージントンだけ(『ボートや』)、フィービ・ウォージントンとオリバー・ウイリアムズ(『しょうぼうし』)と変わっているせいか、シリーズの回を重ねるごとに、ちょっと質が落ちてしまっている感があり、先の4作がとてもいいだけに残念です。
シリーズものの宿命なのかな?とも思ってしまいますが、ボート屋という珍しいお仕事と、スージーという妹と協力して生業を立てているのが、他のシリーズと違って、目先が変わって面白いので、今回『ボートやのくまさん』をご紹介してみました。
ボートの屋根の上で、ピクニックのように広げるお昼ご飯も、ソーセージにマッシュドポテト、お豆にアップルパイと、おいしそうで楽しげなところも魅力的な1冊です。
今回ご紹介した絵本は『ボートやのくまさん』
フィービ・ウォージントン作・絵 こみやゆう訳
2020.9.10 福音館書店 でした。
ボートやの くまさん | ||||
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