絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ジルベルトとかぜ』

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いろいろな風を感じて・・・

 風との戯れが、 静かに心に深い印象を与える絵本です。

ジルベルトとかぜ

マリー・ホール・エッツ/田辺五十鈴 冨山房 1975年08月05日
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読み聞かせ目安  高学年  7分

 

あらすじ

 

ぼく(ジルベルト)と風は友達。

 

風が「おーい」と呼ぶと、ぼくも「おおーい!」と応えて、風船を持って遊びにいく。

 

風はぼくの風船を取り上げ、木のてっぺんへ持っていく。

 

風は洗濯物と遊ぶのが好き。

傘も好き。

 

牧場の木戸を、ぎしぎし、きいきい揺する。

でも、ぼくが登ってると揺すれない。

 

ぼくは風と駆けっこをする。

でも、いつも風が勝つ。

 

凧あげの時、風はお兄ちゃんたちの手伝いをする。

お兄ちゃんたちの凧は、たかーく上がる。

でも風は、ぼくを手伝ってくれないんだ。

そんな時、ぼくは風が嫌いになる。

 

秋になると、風はぼくに、りんごの実を落としてくれる。

 

ぼくが、海(水たまり)に舟を浮かべると、風が走らせてくれる。

風ぐるまを持っていると、ぶんぶんうなるほど回してくれる。

 

風は、ぼくのシャボン玉が好き。

風はシャボン玉が作れないけど、ぼくは作れる。

 

ぼくが落ち葉を掃くと、風は落ち葉をまき散らす。

 

ときどき風は、とても強くなって、木や柵を折ったりする。

そんな時、ぼくは家の中に駆け込んで、鍵をかけちゃう。

そして風にいうんだ、「だめだよ!」って。

 

風はとても疲れてしまう時もある。

そんな時、ぼくは柳の木の下で、風と一緒にふたりして寝るんだ。

 

 

読んでみて…

 

詩を読んでいるような、独特の印象を与える絵本です。

 

表紙は鮮やかで明るい黄色。真ん中に褐色の肌の男の子が、白い服を着て、白い帽子を風に飛ばされないように、しっかり押さえ、こちらを向いて微笑んでいます。

 

表紙をめくると、絵本にはあまり見られない、地味な、うっすらと茶が混じったようなグレーの見開き。次のページには、同じ色の背景に、白い凧を持ったジルベルトが、とても印象的な、きりっとした目でこちらを見ています。

 

この絵本は、一冊通してずっと、地味な茶がかったグレーを背景にしています。

絵は黒の鉛筆で描かれ、色といえば、ジルベルトの肌の褐色と、風や風と戯れる洗濯物、風船などが、白くのせられているだけです。

 

抑えた色遣いだけに、白が際立って見え、そのページそのページで異なる風の様子、風と戯れる物がクローズアップされ、深く印象に残ります。

 

褐色のジルベルトの顔も、表紙と表紙見開きは、しっかり正面を向き、強い印象を読む側に与えますが、お話の中では、ほぼジルベルトが、風を追って横を向いたり、後ろを向いたりしていて、ほとんど正面に向けてはいません。

 

しかしその分、ジルベルトの後ろ姿や肩、地面にしっかり立っている足、風に吹き飛ばされないように傘を力いっぱい持っている手など、ジルベルトの体全体が、とても印象深く、表情豊かに見えるようになっています。

 

 

ジルベルトは風と友達。

風に「おーい」と呼ばれて表へ出ます。

風船を飛ばす風、洗濯物を翻す風、傘を壊す風、柵を鳴らす風、凧を飛ばす風。

その時々で、いろいろな風の姿があり、ジルベルトにとって楽しく面白い時もあれば、困らせられたり、怒ったり・・・。風との戯れには、いろいろな感情を掻き立てられます。

 

ジルベルトと風との遊びを通して、子どもたちはいろいろな風の様態に気づくことができるでしょう。

 

小さな子は、ジルベルトと一緒に、ジルベルトのように風と遊び、楽しみながら風という自然現象のさまざまな姿を知るでしょう。

 

大きな子は、もっと客観的に、風の姿を見つめ、その違いに、自然に対する観察眼を開かれるのではないでしょうか。

 

この絵本は、ジルベルトという、小さな男の子が主人公なので、一見、小さい子ども向けなのかなと思われるかもしれません。

ですが、この絵本を通して、風のさまざまな様態に気づくこと、さらには自分の周りに当たり前にある、さまざまな自然の姿に目を向けることができるようになると思うので、ぜひ大きくなった子どもにも、読んでもらいたいなと思います。

 

静かにじっと風(自然)を見つめることは、自分の周りのあらゆるものを見つめること、ひいては、自分自身を見つめることへと繋がっていくのではないかなと思います。

 

 外界の観察が内省へと導いていく、ちょっと哲学的な要素もある感じがします。

 

小さな子どもだけでなく、大きな子どもも、さらには大人も、さまざまな段階にある人たちが、自分と自分を取り巻く環境に目を向けるきっかけになる一冊なのではないかなと思います。

 

とても地味な絵本ではありますが、そのぶん静かに、でもとても深い印象をもって、読む人読む人の心に響いてくるものがある絵本です。

 

ジルベルトの眼差しと、風と戯れる詩情が、読む人の心にまっすぐ入ってくる、とても印象深い絵本です。

 

心静かに過ごしたいときなどに、ぴったりの一冊です。

 

 

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 今回ご紹介した絵本は『ジルベルトとかぜ』

マリー・ホール・エッソ作・絵  たなべいすず訳

1975  冨山房  でした。

 

 

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