「石ころは〈地球の花〉」
身近な石ころに宇宙の、生命の秘密が詰まっています。
読み聞かせ目安 中・高学年 3(8)分
あらすじ
水のない月は灰色の世界。
石も灰色。
地球の石は、色とりどり。
川原や海岸で拾った石をよく見ると・・・つぶつぶがある石、つぶつぶがない石。
白っぽいつぶつぶ。灰色っぽいつぶつぶ。黒っぽいつぶつぶの石。
キラキラする石、しない石。
でごぼこの石、ざらざらの石。
ポロポロと割れやすい石。
いろんな模様がある石。
地球にはたくさんの石がある。
読んでみて・・・
科学の写真絵本です。
まずはじめのページは、月の写真。
水のない月は、灰色の世界で、石もみんな灰色です。
でも地球は・・・。
ページをめくると、森の中を勢いよく流れる、豊かな水をたたえた川の写真が!
流れの中に、大小さまざま、色もさまざまの石が、水と太陽の光を浴びて、キラキラ輝いています。
そしてその後は、さまざまな石が、それぞれくわしく紹介されていきます。
普通の図鑑的な本なら、○○岩、○○岩・・・と、石を分類して紹介していくものだと思いますが、この本はまず、石の持つ色とつぶつぶに注目!
「地球の奥深くには『マグマ』という、熱い熱い、どろどろのスープのようなものがある。マグマが冷えてかたまると、いろいろなつぶつぶをもつ石になるんだ。」
地球の組成と石の成り立ちに触れ、マグマからできた、キラキラした白や黒のつぶつぶがある石。赤く光るつぶつぶ(ガーネット)を含む灰色の石。黒っぽいキラキラのつぶつぶがある石などなど、火山活動から生まれた石が、次々と紹介されていきます。
その後はキラキラしない石の紹介。
砂の粒が積み重なってできた、ざらざらした石。
泥がかたまってできた石。
サンゴや虫の死骸がかたまっできた石などなどetc。
紹介される石たちは、どれもそんなに珍しい石ではなく、川原やその辺でふつうに拾ってこられるような、地味な石ばかりですが、そこは写真絵本ならでは!
拡大写真はきれいで、迫力があります。
つぶつぶの手触りが伝わってくるようです。
巻末には「石ころは〈地球の花〉」と題して、さらに詳しい本格的な解説があるのですが、この解説も魅力的です。
「つぶのある石、つぶのない石」「石の見分けかた」・・・と順に、写真本文をさらに詳しく科学的に解説していくのですが、単に解説するだけでなく、想像力が広がっていくような解説になっているのです。
石の見分け方や説明から「さらにくわしく、石はなにからできている?」と、原子の話になり、「原子はどこからきたの?」となって、宇宙の話になり、石を作るケイ素原子や酸素原子が、地球が生まれるときに集まってきた星のかけらに、たくさん入っていたこと、百億年前くらいに生まれた原子が、私たちの地球を作り、石を作り、生き物の体を作ったことなどを述べ、そして、
「太陽系の惑星で、こんなにさまざまな石があるのは地球だけです。
石は、私たち地球のこと、宇宙のことを伝えてくれます。
宇宙の中で偶然が重なってできた地球で、長い時間をかけて幾種類もできた地球の石は〈地球に咲いた花〉なのです。」
と結びます。
石ころの中に、宇宙の、地球の、生命の秘密が詰まっている。
普段、踏みつけられる石たちに、壮大なドラマがあることに気づかせてくれます。
それもあえて、特別な、貴重な石ではなく、その辺にふつうに転がっている石を使って表現しているのも、心憎いところ。
より身近に、子どもたちに、宇宙の神秘を感じさせてくれるような素敵な演出です。
宇宙は不思議。自然は不思議。どうなってるんだろう?
そう思う気持ちは、科学(化学?)的好奇心のみならず、文学的好奇心にも通じること。
「塩吹き臼」など、日本をはじめ中国や朝鮮、ヨーロッパ各地にも類話のある「海の水はなぜからい」の起源説話系のお話などは、自然を不思議と感じる心が生み出したもの。
子どもたちに宇宙の神秘を、自然の神秘を感じる心を、科学の本からでも、お話の本からでも、そして実際の自然そのものと接することからでも、さまざまな角度を通して、育んでいって欲しいなと思います。
なお、この絵本を教室などの読み聞かせで読む場合は、大きな文字のテクストだと、とても短いので、他の絵本と組み合わせて、低~中学年から。小さい文字のテクストまで読むなら、けっこう詳しくなるので、高学年でも興味を持って読んでもらえると思います。
今回ご紹介した絵本は『石はなにからできている?』
西村寿雄文 武田晋一写真 ボコヤマクリタ構成
2018.9.30 岩崎書店 でした。
石はなにからできている? |
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