絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『海べのあさ』

 はじめての経験

 乳歯が抜けた女の子の経験を、大きな自然を背景にゆったりと描きます。 

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 読み聞かせ目安  中・高学年  20分

あらすじ

ある朝のこと。サリーが目を覚まし、歯を磨いていると・・・大変‼

歯が1本ぐらぐらしています‼

サリーは、急いでお母さんに知らせました。

 

子どもが大きくなるとき、赤ちゃんの歯が抜けて、丈夫な大人の歯が生えるのを知ったサリー。抜けた歯を、枕の下に入れてお願い事をすると、願いが叶うということも知り、歯が抜ける瞬間を、今か今かと楽しみに待つことになりました。

 

朝ごはんがすむと、浜辺で蛤をとっている、お父さんのお手伝いにでかけました。

浜辺への道々、サリーは鳥やアザラシに、

 

「あたしの歯、1ぽん ぬけかかってるの!」

 

と見せて歩きます。

もちろん、浜辺にいるお父さんにも。

 

でも、お父さんと話をしながら、蛤をとっているあいだに、

 

「あれ!」

「あの歯、なくなった!」

 

サリーはがっかり。もうお願い事もできません。

泣きそうなのをがまんして、代わりにカモメの抜けた羽を1本拾い、お願いすることにしました。

 

それから、お父さんと 妹のジェインとボートに乗って、港のお店へお買い物にでかけました。

 

港の街でも、サリーは歯が抜けたことを、会う人ごとに教えてあげます。

 

「あたしの歯、ぬけたの!」

 

お店に入るなり、あいさつがわりに叫びます。

買い物が終わると、念願のアイスクリームを手に帰ります。

お家では、お昼ご飯に、おいしい蛤のスープが待っているようです。

 

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読んでみて・・・

 ゆったりと大きな海辺の自然を背景に、小さな女の子の成長のひとコマを描いた絵本です。

 

主人公の女の子の名前はサリー。同じくロバート・マックロスキーの『サリーのこけももつみ』(1986.5.26  岩波書店 )に、出てくる女の子と同じ名前。見た感じからしても、『こけももつみ』に出てくる女の子サリーが、大きくなったという感じです。くまとお母さんを取り違えたあのサリーも、歯が抜けるほど大きくなったのね、と感慨深くなります。

 

masapn.hatenablog.com

 

歯が抜けるという、はじめての経験をしているサリー。

自分の体の成長や、他の動物でも、歯が抜けたり、羽が生え変わったりすることを知って不思議に感じながら、同時にちょっと大人に近づいた自分を誇らしく思い、振舞いながら、お話は進みます。

 

「あたしの歯、1ぽん ぬけかかってるの!」

「あたしの歯、ぬけたの!」

 

街の人やお父さん、道で出会った鳥やアザラシにまで、見せびらかす自慢げなサリー。

実に子どもらしくかわいらしく、微笑ましい姿です。

 せっかくの歯がなくなってしまったとき、泣きそうになってもぐっとこらえて、カモメの羽を拾って歯の代わりにし、お願いするところなどは、子どもらしくも、一歩大人になった自覚が見えて微笑ましいだけでなく、小さな子どもに頼もしさも感じられます。

 

ちょと大人になったサリーは、妹のジェインの面倒もよく見るいいお姉さん。

サリーの両親をはじめ、港の大人たちも、子どもの育ちを暖かく見守る、おおらかで素敵な人たちばかりです。

 

絵本全体が、ゆったりとおおらかで伸びやか。

白地に濃紺のコンテだけで描かれた絵の数々は、シンプルで写実的。

抑えた色味であるにも関わらず、磯の香が漂ってくるような、生き生きとした味わいがあります。岩打つ波の音や、カモメの群れの羽音や鳴き声までも、聞こえてくるようです。

大空を飛ぶミサゴや、浜辺の大きな松の木と小さなサリーの対比は、自然の大きさも深く印象付けます。

 

サリーの両親も、港の大人たちも、ごく普通の市井の人々ですが、みな堂々として、それぞれの人生を楽しんでいる自信に満ちた、人としての豊かさにあふれる大人たちという感じ。大きな自然と調和して生きる人々の、凛とした生き方が垣間見れるようです。

 

サリーよりももっとちいさな子ども。妹のジェインだって、その存在感は負けてはいません。

まだ乳歯さえ生えそろっていないちびっ子ですが、ジェインの姿を追っていくと、こぼしたミルクを舐める猫を観察していたり、自動車修理場のタイヤによじ登ったり、みんながサリーの歯に注目しているのをよそに、ひとり猫の行方を追ったり・・・。

ちびっ子にはちびっ子なりの、豊かなドラマがあることも見せてくれます。

 

この絵本は、伸び伸びと広がりのある絵で、サリーという小さな女の子の育ちを軸に、サリーを取り巻く人々それぞれのドラマを垣間見せながら、その背後に、常に大いなるもの、人間を包む大きな自然を感じさせる描き方になっていて、描かれていることはとても平凡な出来事なのですが、淡々としていながら堂々と、大きな自然と自然と調和して生きる人々の暮らしを、ゆったりと豊かに見せてくれる、重厚感といってもいいような、確とした存在感のある、読み応えのある絵本になっていると思います。

 

おおらかに伸びやかにゆったりと、自然に身を委ねながら暮らすことのすばらしさを感じさせてくれる素敵な絵本です。

  

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 今回ご紹介した絵本は『海べのあさ』

ロバート・マックロスキー文・絵 石井桃子

1978.7.7  岩波書店  でした。

海べのあさ

ロバート・マックロスキー/石井桃子 岩波書店 1992年06月
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