古くから伝わるお話歌の絵本
想像を膨らませるお話歌の歌詞を何倍にも膨らませた、豊かなわらべ歌の絵本です。
読み聞かせ目安 低・中学年 3分
あらすじ
かえるだんながめかしこみ、馬に乗ってねずみの家へ。
かえるだんなは、ねずみの娘に求婚だ。
「かわいい かわいい おじょうさん、わたしと けっこん してください」
ねずみのおじさんの許可もでて、さあ結婚式の準備です。
結婚式は、野原の向こうの木の洞穴で。
ご馳走に衣装を準備して、お客も次々やってきた。
こがねむしに、あらいぐま。まだらのへびに、まるはなばち。
のみに、灰色がんに、ありんこたち。
はえもひよこもやってきた。
でも・・・最後にぎょろ目の雄ねこがくると・・・。
どんちゃん騒ぎはおしまいに。
読んでみて・・・
イングランドやスコットランドなどで、400年以上も前から歌われてきたお話歌を、絵本に仕立てた1冊です。
ブーツを履いて、刀とピストルで正装したかえるだんなは、意気揚々と馬に乗り、ねずみのお嬢さんへ求婚に出かけます。
堂々とした、ダンディーなかえるだんな。明るく快活な性格が伝わってきます。
ネズミのお嬢さんは、愛らしく、乙女の恥じらいを見せながらも嬉しそう!
赤いベンチにちょこんと座り、恥ずかしそうにうつむいていますが、その目はキラキラと輝いています。
お嬢さんの住む家の、木のうろも、昼顔の花に囲まれ、ピンクのカーテンが掛かり、じょうろやプランターが並んでいて、いかにもかわいらしい女の子の部屋という感じで、お嬢さんの愛らしさを伝えています。
ねずみのおじさんの許しが出たあとは、結婚式の準備がトントンと進み、野原のさまざまな動物たちが、お祝いに駆けつけます。
村の楽しい結婚式という風情。
サイダーの樽を背負ったこがねむし。大きなスプーンを抱えたあらいぐま。いなせにバンジョーかき鳴らすまるはなばち。
次々とやってくる陽気な仲間たち。
明るく美しい野原を背景に、幸せいっぱいの結婚式がはじまります。
絵は、『りすのパナシ』(リダ・フォシェ文 フェードル・ロジャンコフスキー絵 石井桃子訳 2003.4.20 童話館出版) や『野うさぎのフルー』(リダ・フォシェ文 フェードル・ロジャンコフスキー絵 石井桃子訳編 2002.12.10 童話館出版)で、森の動物たちを生き生きと描いたロジャンコフスキーです。
ロジャンコフスキーの 画面いっぱいの明るい絵は、この絵本でもとても生き生きとしていて、野原の動物たちをとても魅力的に見せています。
ウエディングケーキの上で、音楽を奏でる虫たち。
食べ過ぎてお腹を壊した赤ちゃんひよこに、漏斗を使って薬を飲ませる虫がいたり。
歌詞に出てこないところも、想像を膨らませ、楽しくユーモラスに描いていて、長い間、人々の間で歌い継がれてきたこのお話歌を、ロジャンコフスキー自身が、隅々まで楽しみながら描いているのがよくわかります。
「おはなし歌のおはなし」と題して、再話者のラングスタッフがはじめに述べていますが、このお話歌は、いつ誰が語ったり歌ったりしはじめたのかはわかりませんが、何百年にも何世代にも渡って、歌い継がれてきたもの。
時や場所によって、言葉や節回しが少しずつ変えられたりしたこともあるそうです。
イングランドやスコットランドから、新大陸アメリカにも伝わり、アメリカの中でも、人々の移動に伴い、北へ南へ、西へ東へ。お話歌も広がっていきました。
ラングスタッフは、アメリカ各地に伝わっている「かえるとねずみ」のお話歌を、さまざまなバージョンで集め、繋ぎ合わせ、この絵本に仕上げたのだそうです。
世界各地に見られるわらべ歌や昔話は、みなこのように何百年にも、何世代にも渡って語り継がれ、歌い継がれてきたもの。同じ話型でも、地方によって少しずつお話が違っていたり。また、はるか遠く離れた外国で、まったく同じお話があったり。
お話の伝播や発生に、さまざまな想像を膨らませながら楽しむのも、昔話やわらべ歌を楽しむ醍醐味のように思います。
この絵本の巻末には、楽譜も載っています。ごく簡単な歌なので、子どもたちといっしょに歌ってみるのも、きっと楽しいと思います。
今回ご紹介した絵本は『かえるだんなのけっこんしき』
ジョン・ラングスタッフ再話 フョードル・ロジャンコフスキー絵 さくまゆみこ訳
2001.3.10 光村教育図書 でした。
かえるだんなのけっこんしき | ||||
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