パイロットのスモールさん
「スモールさん」シリーズのスモールさんが飛行機を操縦します。
読み聞かせ目安 低学年 5分
あらすじ
スモールさんは、小さい飛行機を持っています。
ある晴れた日、格納庫から飛行機を出し、整備士さんと一緒に点検し、ガソリンを入れて離陸の準備をしました。
準備が完了すると、いよいよ離陸です。
スモールさんの乗った飛行機は、上昇し600メートルの高さまで到達しました。
右旋回に水平飛行、スモールさんは宙返り飛行だってできますよ!
湖の上、町の上、雲海の上。
美しい景色を眺め、スモールさんは飛んで行きます。
エアポケットもへっちゃらです。
途中でガソリンのパイプが詰まるトラブルもありましたが、草原に無事着陸。
パイプの修理が終わったら、自分の飛行場目指してまた飛び立ちました。
飛行機を格納庫へ戻したら、車に乗ってお家へ帰ります。
読んでみて・・・
「スモールさん」シリーズのスモールさんが、今度はパイロットになって登場です。
スモールさんは、飛行機の操縦も上手です。
整備士さんと、丁寧に飛行機を点検し、冷静に的確に飛行の準備をしていきます。
ガソリン弁を開いたり閉じたり、プロペラを回してガソリンをエンジンに送り込んだり・・・。
飛行機が飛び立つまでの複雑な準備を、順を追って丁寧に見せてくれます。
スモールさんと整備士さんが、きちんきちんと準備を進めていく過程を細やかに描くことで、飛行前に高まっていく心地よい緊張感も、読む子どもたちに自然と伝わるようになっています。
エンジンがかかったら、風向きを確かめ飛行機を移動させ、いよいよ離陸です。
急角度で上昇したら水平飛行。右旋回の仕方など、操縦桿の操作も丁寧に見せてくれ、丁寧で的確に描かれてあるだけ、その作業が重要で緊張感を伴うものであることも伝わってきます。
エアポケットに落ちたときの、お腹が空になったような感覚。
宙返り飛行のときの、体が座席に押し付けられる感覚。
元の体勢に戻ったスモールさんが、ほーっと息を吐いて、くっくと笑うところなど、緊張感やそれが解けたときの安心感、面白さなどが、まだ知識の少ない幼い子どもにもわかるよう、優しいく丁寧に描かれていきます。
「スモールさん」シリーズは、前回ご紹介した『ちいさいヨット』でもそうでしたが、
どんなに複雑な乗り物の操縦の仕方でも、その乗り物の仕組みから順を追って、要所を押さえて、全体像が掴めるように説明してくれます。
単純な絵とテクストで、複雑なことを幼い子どもにも、その乗り物に乗ったことのない子どもにも、わかりやすく伝えられるということは、ごくさりげなく描かれているけれど、すごい技量だなと思います。
そして「スモールさん」シリーズのいいところは、やっぱりスモールさんの誠実さ。
どんな仕事でも手を抜かず、丁寧にきちんとやっていくところ。
仕事というものが、ちいさな作業をコツコツと積み上げていくことで達成されるということが、とても分かりやすく、説得力を持って子どもたちに伝えられていきます。
どんなアクシデントがあっても、動じないスモールさんの態度も、子どもたちに大人への、お仕事をする人々への安心感、信頼感を与えてくれます。
スモールさんの安心感に包まれて、スモールさんと一緒になっていろんなお仕事を体験できるのは、子どもたちにとってとても喜ばしく、誇らしくあることでしょう。
「スモールさん」シリーズの絵本は、淡々としたお話ばかりですが、好奇心と知識欲と、ワクワク感と、ちょっとしたスリルといったいろいろな感情が、穏やかな中にしっかりと満たされていく上質なシリーズ絵本だなといつも思います。
今回ご紹介した絵本は『ちいさいひこうき』
ロイス・レンスキー文・絵 渡辺茂男訳
1971.7.20 福音館書店 でした。
ちいさいひこうき |
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