絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『きょうはよいてんき』

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アルメニアの昔話

 素朴でのどかな昔話らしいお話です。

きょうはよいてんき

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  読み聞かせ目安  低学年  5分

 

あらすじ

 

お天気の良い日に、きつねが散歩をしていました。

あんまり歩いてのどが渇いたので、薪拾いをしていたおばあさんの、ミルクの壺からミルクを飲んでしまいました。

 

おばあさんはかんかん!きつねのしっぽをナイフで切り取ってしまいました!!

 

きつねは泣きながらいいました。

 

「おばあさん おねがい. ぼくのしっぽを もとどおりにぬいつけて. しっぽがないと なかまから ばかにされるんだもん」

 

おばあさんは、

 

「わたしのミルクをかえしておくれ. そしたら しっぽをかえしてあげるよ」

 

といいました。

 

きつねは、牛を探しに行きました。

牛は、きつねが草をくれたら、ミルクをくれるといいました。

 

きつねは、はらっぱに行って、草をちょうだいといいました。

はらっぱは、水をくれたら、草をあげるといいました。

 

きつねは、小川に行きました。

小川は、水差しを持ってきたら、水をあげるといいました。

 

きつねは、水差しを持った娘をみつけました。

娘は、青いガラス玉をくれたら、水差しをあげるといいました。

 

きつねは、物売りの男をみつけました。

物売りは、卵を持ってきたら、ガラス玉と取り換えてやるといいました。

 

きつねは、鶏に卵をちょうだいといいました。

鶏は、小麦を持ってきたらあげるといいました。

 

きつねは、粉ひきのおじいさんのところへいきました。

 

「ねえ、しんせつなおじいさん. おねがいします. こむぎをすこしくださいな. それをたまごにかえて ものうりにもっていくと あおいガラスだまがもらえて ガラスだまをむすめにあげると みずさしがもらえて みずさしにおがわのみずをくんで はらっぱにあげると くさがもらえて くさをうしにあげると ミルクがもらえて ミルクをおばあさんにかえすと ぼくのしっぽが もとどおりになるんです. しっぽがないと ぼくは なかまにばかにされるんです」

 

おじいさんは、きつねがかわいそうになって、小麦をわけてやりました。

 

きつねは、小麦を鶏にあげて卵をもらい、卵を物売りにあげてガラス玉をもらい、ガラス玉を娘にあげて水差しをもらい、水差しに小川の水をくんではらっぱにあげ、草をうしにあげてミルクをもらい、おばあさんにミルクを返しました。

 

おばあさんは、きつねのしっぽを、もとどおり丁寧に縫い付けてくれました。

 

 

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読んでみて…

 

素朴なアルメニア地方に伝わる昔話です。

昔話らしいおっとりとしたのどかさがあります。

 

お日様が輝くお天気の良い日、きつねが森の中を散歩しています。

 

昔話できつねというと、洋の東西を問わず、だいたいずるがしこいと相場が決まっていますが、このお話のきつねは、最初についつい、おばあさんのミルクを飲み干してしまうものの、ずるがしこさなどなく、それよりも哀れというか、健気というか、なんとも、じっと見守ってあげたくなるかわいらしさがあります。

 

おばあさんのミルクを飲むきつねは、大きなミルクの壺を倒して、とてもおいしそうに飲みます。でも、ミルクを飲まれてしまったおばあさんは、怒ってきつねのしっぽを、ナイフで切り落としてしまいます!

 

しっぽを切られたきつねは、さっきまでの幸せそうな表情とは一変!とても情けない哀れな顔で、牛のところへ向かいます。

牛の次は、はらっぱ、小川、娘、物売り、鶏、粉ひきのおじいさんと、次々に尋ね歩いていきますが、なかなか望み叶えられないきつねの顔といったら!

時に泣きそうだったり、甘えてすり寄るようだったり・・・。

そしてページを追うたびごとに、哀れさを増し、しょんぼりしょんぼり。

おじいさんのところへ来たときには、すっかりうなだれしきってしまっていています。

 

何かしてもらうために、交換条件を付けられ、その要素が場面ごとに次々加わっていくのは、いかにも昔話らしくおもしろいところですが、最後にやさしいおじいさんに会えて、やっと無条件で小麦がもらえ、念願のしっぽを縫い付けてもらえたときには、こちらもきつねといっしょになって、ああ良かったとほっとしてしまいます。

 

おばあさんにしっぽを縫ってもらっているときのきつねの表情は、甘えるような上目づかいで、ほんとに、もう無断でミルクを飲んだりしませんと反省している気持ちが伝わってきます。

 

それにしても、一度切ったしっぽを縫い合わせて、また元どおりにするなんて!

ここもやっぱりいかにも昔話風ですね。

 

昔話ではこんなふうに、よく体の一部を切ったり張ったりすることがありますが、決して血は出ません。

昔話はよく「図形で語る」といわれます。図形で描いたようにパツンパツンと語る。切った張ったも、ただ「切った」「張った」というだけで、ドロドロとグロテスクには語らないという特徴があり、このお話もそのセオリーにのっとっています。

 

大人からしてみれば、「あれ?切ったのに血はでないの?」「歩けちゃうの?」「またくっついちゃうの?」という感じですが、昔話はまた「身の丈で理解する」ともいわれるように、子どもたちは「ああ、切ったんだな」「くっついたんだな」と素直に身の丈で理解して、楽しむことができるようです。

 

 

この絵本にでてくる人物は、おばあさん、娘、物売りの男の3人ですが、3人とも中東と東欧の境に住む人らしい雰囲気が漂う姿で描かれています。

 

おばあさんは、刺繍の縫い取りの施された、質素だけれど民俗性のあるワンピース。頭にはスカーフを巻いています。

娘は、長い黒髪と漆黒のまつげが印象的な、中東辺りにいそうな美人です。

物売りの男は、トルコ風の帽子にサッシュベルト。

 

なかなかアルメニア地方などに触れる機会はないので、このような絵本で、東西の文化が混ざり合う地域のお話に親しんだり、楽しんだりするのもいいものだなと思いました。

 

『きょうはよいてんき』という題名そのままの、穏やかでのどかな、ゆったりとした楽しみのあるすてきな昔話の絵本です。

 

 

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今回ご紹介した絵本は『きょうはよいてんき』

ナニー・ホグロギアン作  芦野あき訳

1976.9.20  ほるぷ出版  でした。

 

 

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