仲良きこと
子どもの心の動きを巧みに表現した絵本です。
読み聞かせ目安 低学年 3分
あらすじ
ジェームズとぼくは、いつも仲良し。
でも、今日は違う。ジェームズなんか大嫌い!
ジェームズはいつもいばるし、クレヨンは貸してくれないし、シャベルを取ったり、砂を投げたりする。
もう、友達になんてなってやらない!!
仲良しだったころは、誕生日パーティによんだり、クルクルクッキーをわけたり、ガマガエルのいるところを教えたり、みずぼうそうにまで一緒にかかったりした。
でも、もう一緒にみずぼうそうにかかったりするもんか!
ジェームズはいつも威張りたがる。
ジェームズをやっつけてやろう。
クレヨンをスープに入れたり、学校に行かせないようにお家の人に言ってやるんだ。
ジェームズの家に行っていってやる。
「きみとは ぜっこうだ!」
「いいとも!」
「さいならあ!」
「さいならあ!」
・・・・・・
でも・・・、
「ねえ、ジェームズ!」
「なんだい?」
「ローラー・スケートやらない?」
「オッケー!クルクルクッキー はんぶん あげる。」
読んでみて…
他愛もない子どもの仲違いと仲直り。
それをとてもシンプルに描いた絵本ですが、子どもの表情、心の動きがとても伸びやかに、しかも巧みに表現された絵本になっています。
白地に黒と赤、緑だけの抑えた色遣いのなか、ジェームズとジョン(ぼく)の、喜怒哀楽が、頭の先からつま先まで全身で、力いっぱい表されています。
表紙には、ツンとして向き合った二人の子ども。題字のページはにらみ合い。次のページでは、一つの傘に入った二人が、くっつきそうなほど顔を寄せ合って、にらみ合っています。
いつもは仲良しだったけど、今日は違うという場面では、見開きの左右両端に、それぞれジョンとジェームズが、うつむいて背を向けてぽつんと立っています。二人の間の白い空間が、怒りに震えながらも、どこか心に引っかかる寂しさをよく表しています。
この左右に分かれた二人の姿は、ジョンがジェームズへの怒りを語る場面と、仲良しだったころの回想の場面の始めに、それぞれ2回差し込まれています。同じ絵ですが、これから語る、ジョンのジェームズに対する感情が、余白によって暗示されるようになっていて、とても巧みな構成になっていると思います。
こうして余白によって導かれた、仲良しだったころの二人の姿は、ほんわかした雰囲気のなか、にっこり肩を抱き合ったり、大きな口を開けて笑ったり、みずぼうそうにかかっていても、楽しそうにニコニコと二人して一緒のベッドに入ったり・・・。二人でいる嬉しさ楽しさが、体いっぱいにあふれています。
ジョンは、ジェームズに対する怒りと愛着を感じながら、二つの相反する感情に揺れながら、もやもやした思いで過ごしていることがわかります。
でも・・・、ついに、ジェームズに対する不満の方が爆発!
もう遊ばないと決意して、ジェームズを懲らしめる方法を考えるようになるのです。
いつも貸してくれないクレヨンをスープに入れちゃおう。
学校中で一番偉いと思ってるから、来させないようにしよう。
たまりにたまった憤まんをぶちまけます。
そして、意気揚々とジェームズの家に乗り込んで、
「さいならあ!」
・・・でも、そんな思いも束の間。
ジェームズに思いのたけをぶつけたら、なんだか急に寂しくなって、ジェームズが恋しくなって・・・。
「ねえ、ジェームズ!」
と自分から声をかけ、それから先は、あっという間に仲直り!
「ローラー・スケート やらない?」
と、はにかみながら誘ったら、一足のローラースケートを片方ずつ履いて、一つのクッキーを分け合い、手をつないで、手振り足振り楽しく遊びはじめます。
ジョンが怒りに任せてジェームズの家に乗り込んだとき、ザアザア降っていた雨もすっかりやんで、明るいお日様が顔を出しています。お天気でも子どもの感情の変化が表されていて巧みです。
感情がお天気のようにころころ変わる、まさに「今」を生きる子どもそのものが、生き生きと巧みに表現された絵本です。
この絵本は、低学年の子どもはもちろん、中学年以上の子どもも喜びます。
大きくなってきた子どもは、「子ども」というものを一歩引いて客観視して認識することができるので、ちいさい子がジョンと同化して楽しむのとは違った楽しみ方をするようです。
短い本なので、他の本と組み合わせて、大きくなった子どもたちにも、ぜひまだまだもっと読んであげたいと思います。
今回ご紹介した絵本は『きみなんかだいきらいさ』
ジャニス・メイ・ユードリイ作 モーリス・センダック絵 こだまともこ訳
1975 冨山房 でした。
きみなんかだいきらいさ | ||||
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