どうぶつ?どうつぶ?
不思議な魅力いっぱいの昔話風な楽しい絵本です。
読み聞かせ目安 中学年 10分
あらすじ
ある山奥に優しいボボじいさんが住んでいました。
ボボじいさんは、毎日鳥や動物たちのために、おいしいものをたくさん並べて待っていました。
りすたちには、くるみのケーキ。
小鳥たちには、種入りプディング。
うさぎたちには、キャベツのサラダ。
ちいちゃいねずみたちには、ちいちゃいチーズ・ボールを。
そんなある日、ボボじいさんの所へ、見たこともないへんな動物がやってきました。
犬に似ているような、キリンにも似ているような。
頭の先から尻尾の先まで、きれいな青いとげとげのついた動物です。
「あんたは、なんちゅう どうぶつだい?」
ボボじいさんが聞くと、
「ぼか どうぶつじゃない」
「ぼか どうつぶ!」
「どうつぶ」なんて変な言葉はありゃしないと、ボボじいさんが思っていると、どうつぶは食べ物を欲しがりだしました。
でも・・・いろいろ勧めてみましたが、どうつぶが食べる物はありません。
よくよく聞いてみると、どうつぶの食べ物は、なんと「にんぎょう」!
それも、きかんぼの子どもの人形を取り上げるのではなく、特別いい子から取り上げた人形だというのです。
ボボじいさんは、悲しくなりました。
ボボじいさんは、考えた末、どうつぶを誉めそやしはじめました。
「あんたの しっぽはみごとだねえ!」
「それに くろい まゆげも きれいだねえ」
「でもねえ いちばん すばらしいのは せなかに ならぶ あおい とげとげだねえ」
そして、もっときれいになるためには、「じゃむ・じる」を食べることだというのです!
「じゃむ・じる」は、ボボじいさん特製のちいちゃなケーキです。
見栄っ張りのどうつぶは、もっときれいになりたいと、毎日「じゃむ・じる」を食べました。
そうしてどうつぶの尻尾は、日に日にきれいに長くなり・・・、とうとう山に巻きつけられるほどになりました。
おかげでもう人形は、食べられなくなりました。
読んでみて・・・
『へんなどうつぶ』。
題名を読むと、とたんに「え~!なにそれ~。」「どうぶつじゃないの~。」と、子どもたちから声が聞こえてくる、不思議なタイトルの絵本です。
お話も奇想天外。
「どうぶつ」じゃなくて「どうつぶ」と名乗るへんな生き物が、優しいボボじいさんの元へ、食べ物をもらいにやってきます。
犬に似ているところもあるし、キリンにもにている、とありますが、どう見ても恐竜風な「どうつぶ」。
けれども食べ物は、肉や木の実などではありません。
なんとどうつぶの食べ物は人形!
それもいい子たちから取り上げた人形というのですから、何から何まで予想外のぶっとんだ生き物です。
けれども、それに対応するボボじいさんも奇想天外、予想外!
どうつぶに「じゃむ・じる」という、けったいな物を食べさせます。
「じゃむ・じる」は、ボボじいさん特製のちいちゃなケーキで、ボボじいさんが、いつも山の動物たちのために用意している、くるみのケーキと種入りプディング、キャベツのサラダ、ちいちゃいチーズ・ボールを混ぜて捏ねて、ちいちゃい丸いボール状にした物。
これが美容効果満点で、見栄っ張りのどうつぶの心をくすぐります。
ボボじいさんの思惑通り、まんまと「じゃむ・じる」にはまったどうつぶは、もういい子たちの人形を食べることなんて、すっかり忘れてしまいます。
「どうつぶ」や「じゃむ・じる」といった、とってもけったいでキャッチーな代物がw登場しますが、お話の運びは無駄がなく、簡潔で骨太な昔話のよう。
素朴で大胆な、おおらかさがあります。
白黒のみで描かれた絵も、素朴なお話の味わいをそのままによく表しています。
図案化された版画のような絵は、どうつぶの尻尾のように、うねうねと動くような躍動感あるリズムがあり、お話と同様、絵の構図も大胆です。
白黒だからこその、単純明快な美しさがあります。
圧巻は、最後の場面。
美しく長く伸びた尻尾を、山肌にぐるぐると巻きつけ、山の頂上に座るどうつぶの元へ、ボボじいさんのところからじゃむ・じるを運ぶ小鳥たちの群れが、列をなしてぐるぐると飛んでいくところ。
見開き画面いっぱいに、どうつぶの尻尾の渦と、小鳥たちの列の流れが響き合い、画面全体のうねりとモノクロの余白による構図も響き合って、お話のクライマックスをダイナミックに盛り上げています。
お話の持つ不思議な雰囲気もマックスに。
ちょっと怖いような、不思議な、でも強烈に惹きつけられる、昔話のような素朴な魅力いっぱいの楽しい絵本です。
子どもたちの柔らかい想像力が豊かに広がっていくような、独創的な不思議さのある面白い1冊だと思いました。
今回ご紹介した絵本は『へんなどうつぶ』
ワンダ・ガアグ文・絵 渡辺茂男訳
1978.11.21 岩波書店 でした。
なおこの絵本は、以前は白い表紙で、岩波書店から出版されていましたが、現在は瑞雲舎から、黄色い表紙で出版されています。
へんなどうつぶ | ||||
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