絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『おへやのなかのおとのほん』

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"Noisy Book"シリーズの絵本

  身近な音から様々な想像を掻き立ててくれる絵本です。

            

 読み聞かせ目安  低・中学年  5分

あらすじ

 かぜをひいた子犬のマフィン。

今日はいちにち、お部屋で寝ていなければなりません。

今日のマフィンにできることは、耳をそばだて音を聞くことくらいです。

 

でも・・・、おうちのなかにはいろんな音がありました!

箒で床を掃く音。

スプーンの音。

電話、掃除機、料理する音・・・etc。

 

針が1本落ちる音。

ハエやスズメバチの羽音。

誰かが本を読む音・・・?

ほんとに聞こえたかしら?

どんな音?

 

ご飯を食べる音。

雪やみぞれが降る音。

風の音。

車の音。

街に灯がつく音は、聞こえる?

 

誰かが階段を上がってくる音。

誰の音?

お父さん?お母さん?男の子?料理人?

てんとうむし?ぞう?!

兵隊さん?水兵さん?!

あひる?ピエロ?

ねずみ?ねこ?

 

いちにちお部屋にいたマフィン。

次の日はもう、かぜもすっかりよくなって、おもてでいろんな音を聞きました。

                     

 読んでみて・・・

 以前ご紹介した『しずかでにぎやかなほん』(マーガレット・ワイズ・ブラウン作 レナード・ワイスガード絵 谷川俊太郎訳 1996.9.7 童話館出版 )のシリーズ絵本、"Noisy Book"のうちの1冊です。

 masapn.hatenablog.com

 

『しずかでにぎやかなほん』と同じく、マフィン(『しずかでにぎやかなほん』ではマッフィン)という子犬が聞いた、いろいろな音からさまざまな想像を膨らませる絵本ですが、『しずかでにぎやかなほん』が、マッフィンの目を覚ました静かな音が何の音か、という疑問から、ビルが空をひっかく音とか、牝牛がペチコートを着ている音、魚のいびき・・・などなど、自由奔放に奇想天外な発想が繰り広げられていたのに対し、この『おへやのなかのおとのほん』は、かぜで寝ているマフィンが、お部屋のなかで聞いている音という設定で、より身近で、日常的な音の想像を膨らませるものとなっています。

 

かぜをひいて、いちにち寝床で寝ていなければならないマフィン。子どもたちも、自分におこりうる状況、経験のある状況で、容易に共感できる境遇だと思います。

寝ている自分にできるのは、音を聞くことくらい。退屈でしかたがないけれど・・・。よくよく耳をそばだてていると・・・、いろんな興味深い音が聞こえてきます。

 

掃除の音や料理の音、家電の音といった、身近な日常の音からはじまり、針が1本だけ床に落ちる音や、ハエやスズメバチの羽音、読書する音など、「ほんとに聞こえるの?」といった音に想像が広がり、それぞれに、

「どんなおとかしら?」

「それはどんなおとかしら?」

と、問いかけがあります。

 

家族の食事で、セロリを食べる音、スープを飲む音、生のにんじん、ステーキ、ほうれんそうを食べる音。それぞれに、

「それはマフィンにきこえたとおもう?」

みぞれの音、雪の音、雪の降った道を車が走る音。灯がつく音。

「どんなおとかしら?」

「マフィンにそれが、きこえたかしら?」

ひとつひとつ子どもたちに問いかけていきます。

このひとつひとつの問いかけは、テクストに心地よいリズムを与え、子どもたちの耳と心に響き、子どもたちの経験とその記憶に共鳴し、子どもたちの

「聞こえたー!」

「聞こえなーい。」

「むしゃむしゃ!」

「ボリボリ!」

「さらさら。」

さまざまな音の想像と反応を、豊かに導いていきます。

お部屋のなかで聞く音という身近なものだけに、反応はより多く返り、また柔軟です。

 

レナード・ワイスガードの絵も、白地に赤、紺、黄土色だけの組み合わせで、すっきりとしています。切り絵的にデザイン化された絵は、余計なものがないけれど、子どもたちに形のない音というものを想像させる助けとなっています。

また、紺色はところどころ、版画的な擦れのある風合いが施され、寒色に暖かみを与えています。全体的にこの紺色が多いのも、静かに寝ていなければならないというマフィンの境遇、寝床のなかという状況を、静かに表現しているようにも感じさせます。

洗練されたデザイン性、想像力を豊かに掻き立てる単純化、そして暖かみのある優れた絵になっていると思います。

 

そして最後に、病床のマフィンのもとに、家族みんなが階段をのぼって、贈り物をもってやってくる場面。病床の心細さを、暖かく包み込んでくれる家族の愛情に、子どもたちも、かぜをひいたときの自分の経験や記憶などを重ね、ほっと安心し、見守られる喜びを感じることでしょう。

 

何のことはない、ごく身近な音を表現した絵本ですが、子どもたちの豊かな耳の感覚、想像力を新鮮に広げてみせてくれる素敵な絵本です。

表紙見開きの、おうちのなかを描いた絵も、ドールハウスを覗くように、楽しめるものになっています。

読み聞かせ目安は5分程度。短い方なので組み合わせによい絵本ですが、子どもたちの反応が、思った以上に良い場合は、もうちょっと時間がかかってしまうかもしれません。

                      

今回ご紹介した絵本は『おへやのなかのおとのほん』

マーガレット・ワイズ・ブラウン文 レナード・ワイズガード絵 江國香織

2004.9.30  ほるぷ出版  でした。

おへやのなかのおとのほん

マーガレット・ワイズ・ブラウン/レナード・ワイスガード ほるぷ出版 2004年09月
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