絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『チムとシャーロット』

男の子の男気

『チムとゆうかんなせんちょうさん』のチムが陸でも大活躍!

 

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  読み聞かせ目安 中学年 10分 

 あらすじ

 ある日、チムと友達のジンジャーが浜辺を歩いていると・・・海に女の子が浮いていました!!

チムとジンジャーは、女の子を引き揚げ、家まで抱えて運んでいきました。

 

お母さんは、女の子をベッドに寝かせ、お医者さんを呼びました。

女の子はずっと眠りつづけ、チムとジンジャーは、その間ずっと交代で、枕もとについていました。

 

女の子はしばらくして目を開けましたが、記憶をなくしていました。

チムたちは、女の子を「シャーロット」と呼ぶことに決め、女の子の身元がわかるまで、いっしょに暮らしはじめました。

シャーロットは、優しくて思いやりがあって、ほんとうにかわいい子でした。

家仕事が好きで、お母さんはシャーロットに、お裁縫やお料理などいろいろ教えてあげました。

 

シャーロットがすっかりチムの家になじんだころ、シャーロットの後見人のアガサおばさんがやってきました。シャーロットは、何もかも思い出しました。シャーロットは実は、ほんとうの名前もシャーロットで、アガサおばさんの船に乗っていたとき、あやまって甲板から落ちていたのでした。

 

シャーロットは、家に帰らなければならなくなりました。涙ながらにチム一家に別れを告げ、屋敷に帰りました。

シャーロットは、お金持ちのお嬢さんで、大きな屋敷にはおもちゃもいっぱい。幸せな暮らしのはずでしたが、屋敷に帰ったシャーロットは、日に日に元気を失っていきます。チムの家に戻りたくて、しかたがなかったのです。

シャーロットは、どんどんやせ細り、お医者さんに診せても治りません。お医者を代えて、やっとシャーロットの気持ちは伝わり、病気が治るまでチムの家で暮らせるようになりました!

 

そのころ、チムとジンジャーも、大変なことになっていました!

ふたりも、シャーロットがいなくなって、すっかりしょげかえっていました。

ある日学校で、チムがシャーロット宛の手紙を書いていると・・・、男の子たちがそれをとりあげ、チムをひやかすようになってしまったのです。

 

そんな日が続いたある日、チムはとうとう我慢できなくなって、その後何年も語り草となる「チムのだいはんげき」を起こします!!

チムの名誉をかけて、チムとジンジャーは闘いました!

大勢の男の子たちと大乱闘です!!

 

闘い疲れてボロボロになったふたりが。家に帰ってみると・・・、そこにはシャーロットが待っていました!!

 

また、シャーロットとの楽しい暮らしがはじまりました。

不思議なことに、けんかした男の子たちも、その後、チムをからかわなくなり、仲良しに。シャーロットを助けたいきさつを話すと、チムに一目置くようななりました。

 

 

 読んでみて・・・

 以前ご紹介した『チムとゆうかんなせんちょうさん』(1963.6.1 福音館書店)のシリーズのひとつです。

 

masapn.hatenablog.com

 

『チム』シリーズは、海での活躍のお話が多いですが、この『チムとシャーロット』は、陸のお話。海の男として成長してきたチムが、陸でも立派に男気を見せてくれます。

 

浜辺で女の子を救助し、家に連れ帰ったチム。海の男として成長してきたチムですが、まだまだ小さな男の子。以前、船で助けいっしょに暮らしているお友達のジンジャーと、懸命に女の子を助け、抱え運んできます。小さな男の子たちが、海でぐったりした人をひとり救助するのは大変なことです。絵には、荒れる波間から、ぐったりした女の子を必死に救う姿、自分たちもぬれねずみになって、ずぶ濡れの女の子を、細い腕で、力を振り絞って運んでいる姿が、細やかによく描かれています。

 

アーディゾーニの絵は、一見ラフなペン描きですが、ラフな線の上に、カラーページは落ち着いた色合いながらも、みずみずしい水彩が施され、海辺の町の潮の香が漂うよう。ペン描きだけのモノクロページは、ペンの線がより細かく丁寧で、人物の表情だけでなく、体全体から、心情が伝わってくるようなものになっています。

助けられたシャーロットが、チムの家で、かいがいしくお母さんのお手伝いをする姿も、コマ割りのように描かれていて、一心に働く姿、お仕事をするのが嬉しくて楽しくて、思わず没頭してしまっている姿が、美しく魅力的に描かれています。

 

この絵本は、ときおり会話文も差しはさまれますが、基本的には語り手が、地の文でお話を進めていく構成。それでも、語り手が語り切れな登場人物の、会話や心中を、絵にマンガのように吹き出しをつけて、補うように語らせています。それが、語り手が語る物語の枠のなかの、もうひとつの枠を覗き見ているみたいで、ちょっとした裏話を見ているみたいで、興味深くおもしろいところともなっています。読み聞かせのときは、お話の流れが止まったりもどったりするので、そこはスルーして読んでしまうのですが、とても魅力的なところ。子どものひとり読みや、おうちでの読み聞かせのときは、立ち止まってゆっくり味わってもらいたいところです。

 

語りと同時に絵も、物語や登場人物の性格、心情を語っているすてきな絵本になっています。

 

チムは、シャーロットを助け、シャーロットが屋敷へ帰ったあとも、心をよせ続けます。でも、それを学校の男の子たちからからかわれるようになり、我慢できなくなって、大げんかをしてしまいます。暴力はいけないけれど、シャーロットへの思いと、自分の名誉をかけて、大勢のなかへ乗り込んでいく姿は、男気にあふれています。

ジンジャーも、チムをシャーロットに取られた感じがして、ずっとすねている様子をみせていましたが、チムの大事に果敢に手を貸し、乗りこんでいくさまは、チムとシャーロットへの友情のあかし。ジンジャーも、勇敢な男の子です。

 

勇敢にまっすぐ、友情と名誉のために闘ったチムとジンジャー。正々堂々の闘いのあとは、みんなケロリと仲直り。互いを認め合って、行いを尊重しあえる仲になっていくのもすがすがしく、見ていて気持ちのよいところです。こどものけんかは、こうあって欲しいものだなと、思ってしまいます。

 

シャーロットも、チムとジンジャーが、自分のために闘ってくれたのを、女の子らしく喜んでいたり、良家のしきたりや家柄など、世間体を気にするアガサおばさん。それにを、しゃくに感じているコックのおばさん。お医者さんにはお金がかかること、お金をかけてもなかなか名医には巡り合えないことなどなど、人間模様や大人の都合なども、そこここに散りばめられ、人の営みというものもよく見せてくれます。

 

語りと絵で、お話や登場人物の心情を細やかに描いていくこの絵本は、もう、絵本から児童文学の一歩手前まできています。心のひだを細かく追っていく、文学鑑賞の入門書ともいっていいかと思える絵本だなと思いました。

 

勇敢な男の子の男気と、子どもたちの愛情、信頼関係。そういったものをすがすがしく見せてくれる、すてきな絵本です。

 

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今回ご紹介した絵本は『チムとシャーロット』

エドワード・アーディゾーニ作 中川千尋

2001.7.10  福音館書店  でした。

チムとシャーロット

エドワード・アーディゾーニ/なかがわちひろ 福音館書店 2015年05月
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