絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『しずかでにぎやかなほん』

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見て聴いて楽しむ絵本

 明るくモダンな意表をつく絵本です。

            

 読み聞かせ目安  中学年  3分

あらすじ

小さな子犬のマッフィンが、何かの音で目を覚ました。

何だろう?

ありが這ってる音?

蜂がびっくりしている音?

ぞうがつま先立ちで階段を下りる音?

 

ちがうよ。

 

バターが溶ける音?

お花が咲く音?

高いビルが空をひっかく音?

牝牛がペチコートを着る音?

きりぎりすのくしゃみ・・・?

ねずみのため息?

魚のいびき?

 

とっても静かな音。

静かな静かな音。

 

いろんないろんな静かな音・・・。

 

マッフィンにはわかった!

 

それは、

「のぼってくる おひさま」

 

朝が、今日という日が、はじまる音。

 

車が回り、目覚ましが鳴り、牛乳配達が馬に囁く音。

新しい葉っぱが開き、花が開く音。

いろんな音、音、音。

 

「あたらしい いちにち」のはじまる音!

                     

 読んでみて・・・

 マッフィンという子犬をとおして、日常にあるさまざまな音に耳を傾ける絵本です。

 

マッフィンの目を覚ましたのは、何の音?

マッフィンは、あれやこれやと思いを巡らします。

その音への思いが、実に意表を突いたものばかり!

どれも、ほんのかすかな小さな音なのですが、

 

「ありが はってる?」

「はちが びっくりしてる?」

 

にはじまり、

「かいだんを ぞうが つまさきだちで おりて くるのかな?」

「バターが とけてゆくのかな?」

「たかいビルが ひっかいてるのかな そらを?」

「めうしが ぺティコートを きてるのかな?」

 

なんて、「そんな音あるの?」「どんな音?」と、子どもたちから声が聞こえてくる、奇想天外な不思議な音ばかり!

 

そして、マッフィンが考えるそれぞれの音が、そのつどページの終わりに、「ちがうよ」「いいや」「まさか」と否定されていくのですが、子どもたちからも、それに呼応した「ちがーう」「ちがーう」という声が聞こえてきます。

 

静かな静かな音。静けさそのものみたいな音ってどんな音?

その問に対する、自由で奔放な発想。それに呼応する、子どもたちの柔軟な感受性に、はっとさせられます。

 

テクストの書体も、場面場面や、言葉ごとにさまざま。

大きかったり、小さかったり。細かったり、太かったり。

ゴシック体だったり、明朝体だったり。

自由に姿形を変えていきます。

谷川俊太郎の翻訳も、リズムよく、軽妙な中にも、さりげない詩情があります。

 

レナード・ワイスガードの描いた絵も、洒落ていて、モダン・アートそのものといった感じ!!

赤、黒、黄、青、緑、白の6色だけで描かれているのですが、どれも濁りのない原色に近い色で、ぱっきっと描かれています。はっと目が覚めるような色遣いです。

構図も大胆!幾何学的な切り絵風な表現をベースに、コンテの手描きが加えられ、モダンで都会的な画面に、暖かさや和やかさを与えています。その配分が、なんとも絶妙でおしゃれ。

絵本で、このような優れたアートに触れられるのも、すばらしいことだなと思います。

 

子どもたちの日常は、いつも新鮮な体験でいっぱい。この絵本の主人公マッフィンは、子犬ですが、日々、新鮮な体験をし、さまざまなことに想像を膨らましている、子どもそのものの投影なのでしょう。さまざまな音を聴き想像する。あるいはひとつの音からさまざまなものを想像する。自由で豊かで柔軟で大胆な発想が、きらきらと輝いています。

 

そして、この輝きは、マッフィンが探していた音の答えとさらに響き合い、輝きを増していきます。

静かな音の正体は、

 

「のぼってくる おひさま」

 

朝日!新しい1日のはじまりの音でした!

新しい1日がはじまると、まわりのさまざまな音が、一見ありふれたどこにでもあるような音が、新しい音として輝きを増していきます。

 

「くるまが まわりだす。

めざましが なろうとする。

ちょうが はねを ひろげる。

ぎゅうにゅうはいたつが うまに ささやく。

あたらしい はっぱが ひらく。

はえが 100まんもの ふくがんの めを みはる。」

 

「のぼってくる おひさま」とともに、すべてが新しく輝きを増して、今日という新しい1日のための特別なものとして、目の前に立ち上がってくるのです!

ありふれた当たり前のものでも、新鮮な驚きをもって見、聞くと、たちまち新鮮な特別なものとして立ち上がる。日常に倦んだ大人の目にも、はっとさせられるものが、ありふれた日常に希望をあたえる力が、この絵本にはあるように感じました。

 

しずかで にぎやかな ほん』。

とっても「しずか」な音のなかに、こんなにも「にぎやか」な音があり、とってもありふれた日常のなかに、とっても新鮮な驚きがある。

自由な発想で、柔軟にものを見聞きする輝き。そういった輝きに満ちた子どもたちの感性の豊かさ。そういったものに改めて気づかされる絵本だと思いました。

                      

このマーガレット・ワイズ・ブラウンの『しずかで にぎやかな ほん』は"Noisy  Book"シリーズとして、他にもまだ数冊出されています。またの機会に、他の絵本もご紹介しようと思っています。

 

今回ご紹介した絵本は『しずかで にぎやかな ほん』

マーガレット・ワイズ・ブラウン作 レナード・ワイスガード絵 谷川俊太郎

1996.9.7  童話館出版  でした。

しずかでにぎやかなほん

マーガレット・ワイズ・ブラウン/レナード・ワイスガード 童話館出版 2019年01月
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