らいおんハートをポケットに♡
弱虫の男の子の心の成長を描いた絵本です。
読み聞かせ目安 低学年 7分
あらすじ
ラチは世界中で一番弱虫の男の子。犬を見ると逃げ出し、暗い部屋には怖くて入れず、友達も怖くて、みんなからバカにされています。
ラチはいつも泣いてばかり。
弱虫のラチは、勇ましいライオンの絵が好きで、憧れて、いつも眺めていましたが、ある朝目を覚ましてみると、そばには小さな赤いらいおんが!
らおいんは一見、ちっぽけで何の役にも立ちそうにないように見えますが、意外と力持ちで、ラチを押し倒すこともできました。
らいおんは、ラチを強くしてやると約束してくれます。その日から二人は毎朝、強くなる体操をします。
そしてある日、らいおんをポケットに入れて散歩に出たときのこと、ラチは犬が怖くて泣いている女の子を助けることができました。
真っ暗な部屋にクレヨンを取りにいくことも、らいおんが付いてきてくれたのでできました。
椅子を片手で持ち上げることも、逆立ちもできます。
そしてとうとう、相撲でライオンに勝つこともできたのです!
らいおんのお陰ですっかり強くなったラチは、友達のボールを取ったのっぽを追いかけます。
ラチは勇敢にのっぽを追いかけ、ボールを取り戻します。
そしてラチは、ポケットにいるはずのらいおんにお礼を言おうとしますが、ポケットに入っていたのは、なんとりんごだったのです‼
ラチは、ライオンがいなくても強い子でいられたのです。
家に帰ると、「きみは、らいおんと おなじくらい つよくなったね。もう、ぼくが いなくても だいじょうぶだよ。」と書いた、らいおんからの置手紙がありました。
ラチはもうすっかり強い子になりました。
読んでみて…
前回、前々回に続き、らいおんの絵本です。
今回のらいおんの絵本は、もっとず~っと小さくてかわいらしいらいおん。
ペン書きのシンプルで無造作な絵で、淡々とした中にユーモアを漂わせながら、男の子の心の成長を描いている、素朴で愛らしいらいおんの絵本です。
使われているのは、白、黒、黄、緑、橙の五色だけ。とてもシンプルですが、各ページこれらの色遣いがそれぞれ効いていて、とても鮮やか。
そして何より表紙がシック‼
黒地に黄色い文字、ラチとらいおんの絵が右寄りに描かれ、とてもシンプルでお洒落な装丁の絵本です。
内容の絵も、ラチくんはひょろっとしていかにも弱虫そう。
でも、何より愉快なのは、このラチくんを強い子にしようと現れたらいおんの姿!
ほんとにちっぽけで、ぜんぜん強そうではありません。小学生くらいの子どもが、手芸で作ったぬいぐるみのようなのです。しっぽなんて、ぼさぼさの毛糸の房を一本の毛糸でぶらさげているようです。なんとも頼りない姿です。
そして、このぬいぐるみのようならいおんが、ラチに体操を教える場面の可愛いこと‼まったく強くなさそうな体を、「いち にっ さん!いち にっ さん!」と右に左に、上へ下へ、ひょうひょうとした顔で動かしているさまが、とても愉快です。
でも、このらいおんのお陰で、泣いてばかりいたラチくんの表情が、次第に明るくしっかりしていきます。だんだん目もぱっちり開いてきて、のっぽを追いかけるときの頼もしい眼差しといったら‼最初のラチくんとは大違いです。
自分を支えてくれるものがあること。自分の可能性を信じてくれるひとがいること。それがどれだけ子どもを強くたくましく育ててくれるかを、シンプルに示してくれている絵本だと思います。
誰でも、ラチのように弱くて自身のない所があります。この本を読む子どもたちも、犬が怖かったり、暗いところが怖かったり、友達の輪に入れなかったり、それぞれに苦手なものがあり、ラチに共感するところがきっとあるでしょう。
弱いところのある自分でも、支えてくれるもの、信じてくれるものがあれば、強くなれる。そんな希望を子どもたちに与えてくれる絵本だと思います。
小型で、ごくさりげない絵本ですが、子どもの育ちをしっかり支えてくれる1冊になると思います。
この本を読む子どもたちが、みんなラチのように「勇敢な心=らいおんハート」をポケットに入れて、大きく育っていってくれたらいいなと思いました。(ラチのポケットに入っていたりんご、まるでハートみたいです♡)
今回ご紹介した絵本は『ラチとらいおん』
マレーク・ベロニカ文・絵 とくながやすもと訳
1965.7.14 福音館書店 でした。
ラチとらいおん |
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