躍動感満点の絵本
あふれんばかりの生命力。夢が詰まったお話です。
読み聞かせ目安 中学年 8分
あらすじ
よく晴れたある日、アンディは図書館でライオンの本を借ります。
ライオン好きのアンディは、夢中でライオンの本を読みます。ご飯の前も、ご飯の後も。
寝る前にはおじいさんが、ライオン狩りの話をしてくれます。
そして、アンディはライオンの夢を見るのです。
ライオンのことで頭いっぱいのアンディは、翌日、学校へ行く途中、変なものに出会います。くねくね動く長くて変なもの・・・それは・・・ライオンのしっぽでした!!
アンディは、「にげるが かち」と思い、逃げます。
すると、ライオンもアンディと反対方向に逃げだし、ぐるぐるぐるぐる、あっちこっち、あっちこっち。
とうとうどちらもへとへとになり、座り込みます。
すると・・・、ライオンが自分の前足にとげが刺さっているのを、アンディに見せるのでした。
アンディは、持っていたくぎぬきで、ライオンのとげを抜いてやり、ライオンは上機嫌!
それから間もなくのこと、町にサーカスがやってきました。
アンディも当然、ライオンの芸当を観に行きましたが、芸当の真っ最中に一頭のライオンが逃げ出し、サーカスは大騒ぎに!
サーカス中が逃げ回るなか、アンディはライオンと鉢合わせに!!
「もう おしまいだ」
と思いましたが・・・そのライオンは・・・なんとこの前、アンディがとげを抜いてやったあのライオンだったのです。
二人は再会を喜び、躍り出してしまうほど。
そこへ、ライオンを生け捕りにしようと人々がやってきますが、アンディが。
「この らいおんを ひどいめに あわせないでください!これは、ぼくの ともだちです」
と言って、騒ぎをおさめました。
アンディは、勇敢だったご褒美に、市長さんからメダルをもらい、図書館に借りていたライオンの本を返しました。
読んでみて…
イソップなどで有名な寓話「アンドロクレスと獅子」を下敷きにしたお話。
「アンドロクレスと獅子」は後に、アイルランドの作家バーナード・ショー(1856~1950)によって戯曲化され、さらにはハリウッド映画にまでなったお話です。
ライオンに刺さったとげを抜いてやり、その恩義で逃亡奴隷が命拾いをする話ですが、この『アンディとらいおん』の話は、アンディが2度ライオンを助け、ライオンとの友情が強まり、褒められるお話になっていて、元の寓話よりとてもユーモラスで楽しい絵本になっています。
お話も絵も躍動感満点!!
前半部分では、ライオン好きのアンディが、図書館から借りてきた本を夢中で読むワクワク感、ライオンのことを考えて心ウキウキさせながら生活しているようすが、やや荒っぽさも感じられる黒と白、そして黄土色のみの、跳ね上がるようなタッチの絵で、表現されています。
アンディの身の周りには、ライオンがいっぱい!!
アンディが読んでいる本は、「らいおん ものがたり」「ひとくい らいおん」「らいおんの かいかた」「なだかい らいおんたち」などなど、らいおんの本だらけ。ダイニングの壁にはライオンの絵が飾ってあり、お父さんの読んでいる新聞には「らいおん にげだす サーカス」の記事が!!
ライオンと出会う前からすでに、アンディの日常にライオンが躍動しています。
そして、学校への道中でライオンに出会ったときの愉快さ!
ちょっといびつな長いもの。何だろう・・・?ライオンのしっぽ!!
驚いたアンディもライオンも、絵本のページからあふれんばかり、飛び出してきそうな勢いで描かれています。
ライオンの前足に刺さったとげが「すぽん」と抜けたときなんて、二人とも絵本から転がり出てきそうです。
愛してやまない、憧れてやまない対象が、身近なものになり、心を通わせることができるようになることは、この上なく幸せなこと。夢のような幸せの実現を、生命力あふれるダイナミックでユーモアに満ちたこのような絵本で、楽しく味わえることは、子どもたちにも、夢を見ること、幸せが実現することへの期待や希望を、大きく持たせてくれるようになるのではないかと思います。
アンディは、憧れのライオンと出会い、友達になり、サーカスでの騒ぎを丸くおさめ、めでたしめでたしの夢のような時を得ましたが・・・最後に、図書館にライオンの本を返しに行くとき・・・、ライオンを後ろに引き連れています。・・・はて?・・・
本を借りて、返す。このお話は、アンディが図書館で、ライオンの本を借りている間に起こった出来事です。
・・・もしかして、このお話は、ライオン好きのアンディに、ライオンの本がかけてくれた魔法?見せてくれた夢?だったのかな・・・?
いずれにしても、アンディとライオンの友情や、二人の間に起こった出来事は、アンディにとっては、「本当」のこと。かけがえのない楽しい時間です。
この絵本を読む子どもたちも、アンディと一緒に、躍動力あふれるダイナミックな夢を、楽しんでもらえたらいいなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『アンディとらいおん』
ジェームズ・ドーハーティ文・絵 村岡花子訳
1961.8.1 福音館書店 でした。
アンディとらいおん |
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