様々に変化する「しずく」の大冒険!
液体・気体・固体、水の三態変化を軽快にわかりやすく描いた絵本。
読み聞かせ目安 中学年 8分
あらすじ
ある日のこと。
おばさんのバケツから、水がひとしずく飛び出して、ひとりぼっちで旅にでた。
しずくは、裏庭で泥だらけ。
きれいにしようと洗濯屋にいってみたり、お医者にいってみたり。
しだいにお日様照り付けて、しずくはどんどん痩せてった。
でも黒雲が広がると、しずくは雨になり、岩の割れ目に落ちたしずくは、寒い夜には氷になって、またお日様が照りだすと、しずくに戻ってまた旅へ。
川から水道、蛇口から洗濯機。
洗濯物が乾いたら、寒い軒先でつららになって。
春が来たらまた旅へ。
読んでみて・・・
氷・水・気体。水の三態変化を、とてもわかりやすく、軽快に楽しく描いた絵本です。
子どもたちも、小学校の4年生で、「ものの三態変化」として、理科で学習するお馴染みの内容なので、とても身近に感じるだろうと思います。
バケツから飛び出したしずくの冒険は、裏庭からクリーニング屋さん、病院といった身近な場所から、大空や山、川といったスケールの大きな世界へ広がり、また身近な水道から洗濯機、軒先へと戻ってきます。
子どもたちも、水という身近な物質が、さまざまに様態を変えながら、自分たちの身の周りから、広大な自然へつながっていくこと。変化のいろんな場面で、自分たちとのつながりがあることに気づきながら、水というものの性質と、自然の大きさ、人間とのかかわりなどを、理解していきます。
それも、楽しい絵とリズムに乗って。
細めの黒いアウトラインがきいたしずくの絵は、とても気さくで軽やかです。
子どもが落書きでもしたかのような、ラフなタッチの絵は、水の三態変化という化学現象を、肩ひじ張らずに、子どもたちにより身近なものとして見せてくれます。
柔らかく明るい色彩も、この絵本に軽快さを与えています。
そしてテクストも軽やかです。
この絵本は、ポーランドの絵本で、もちろん翻訳なのですが、七五調に訳されているので、リズミカルで馴染みやすく、読み聞かせもとてもやりやすいテクストになっているのです。
「お勉強」として学ぶ「ものの三態変化」も、このような飾り気のない、気さくで率直でテンポのよい楽しい絵本で、まるでお友達のように付き合うと、より子どもたちに身近なものとして、深く抵抗なく、理解できるものになるだろうなと思います。
「ためになる絵本」「勉強になる絵本」などといういいかたは、あまり好きではないのですが、遊びながら学び、学びながら遊べる、とても優れた絵本になっていると思います。
この絵本は、私が読み聞かせをしている小学校でも、子どもからも、ボランティアのお母さんたちからも「しずくちゃん」と呼ばれ、とても人気です。
最寄りの公立図書館でも、いつも貸し出し中の人気者です。
気取りのない親しみやすさ。軽快な伸び伸びとした楽しさ。そして学び。
そういったものが全て、さりげなくバランスよく配されたゆえの、人気なのだろうなと思います。
一見とてもラフに、簡単に作られたような感じに見えますが、とても優れた、子どもには欠かせない、優れたおすすめの1冊です。
今回ご紹介した絵本は『しずくのぼうけん』
マリア・テルリコフスカ作 ボフダン・ブテンコ絵 うちだりさこ訳
1969.8.10 福音館書店 でした。
しずくのぼうけん | ||||
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