トルコのお話
愉快痛快!それでいてのどかで穏やかな絵本です。
新品価格 |
読み聞かせ目安 中学年 5分
あらすじ
むかしトルコのアダナという町に、母親と息子が住んでいた。
息子の名前はメルコン。メルコンは、ちびで貧乏だったが、とても利口だった。
メルコンの誕生日のこと。
おんどりを焼くことになり、メルコンはおんどりかついで、ベーカリーへおつかいに。メルコンが、花を摘みながら、おんどりが焼けるのを待っていると・・・。
3人組の泥棒たちが、焼きあがったメルコンのおんどりを、ひったくっていった!!
メルコンは、泥棒たちに仕返しすると心に決めた。
次の日、メルコンは、1人目の 泥棒が、洋服屋で上着の仕立て直しを頼んでいるのを見かけた。明日の四時に取りにくるといっている。
その次の日、メルコンは3時に洋服屋へ。そして・・・、
「ぼく しゅじんの うわぎを もらいにきました。四じじゃなくて、いま ほしいんです。」
メルコンは、泥棒の上着を持っていった。
4時になってやってきた泥棒はかんかん!
洋服屋のドアには、
「おんどりこぞうの しかえしさ。 またやるぜ。」
の張り紙が!
その次の日、今度は2人目の泥棒が時計屋に。
メルコンは、窓越しに話を聞いていた。
泥棒は、時計を修理に出し、明日の12時までに直して欲しいといっている。
次の日、メルコンは12時10分前に時計屋にいき、また主人の預け物を取りにきたといって、時計を受け取った。
12時に泥棒がやってくると・・・、時計屋のドアには、
「おんどりこそうの しかえしさ。またやるぜ。」
2、3日後、メルコンは、今度は3人目の泥棒が、ガチョウをベーカリーに持って行くのに出くわした。
ガチョウが焼けるまで、泥棒たちは風呂屋へ行った。
泥棒たちがお風呂に入っているあいだに、メルコンは泥棒のパンツをこっそり取って、
「おんどりこそうの しかえしさ。またやるぜ。」
紙切れ残して出ていった。
それから、ベーカリーで焼けたがちょうを受け取って、
「おんどりこぞうの しかえしさ。 またやるぜ。」
ドアに張り紙はって帰っていった。
ちびのメルコンとお母さんは、やっとお誕生日のご馳走を食べたとさ。
ワールドライブラリーのしかけ絵本。
読んでみて・・・
力の弱い者が、知恵を働かせて強い者をやりこめる、痛快な昔話風のお話です。
貧しいちびのメルコンは、楽しみにしていた誕生日のおんどりの丸焼きを、泥棒に取られてしまいます。
泥棒は、屈強な三人組の男たち!
それでもメルコンはひるみません!!
泣き寝入りなどせず、知恵をつかって仕返しです。
次々に、大の男を手玉に取っていくさまは実に痛快!
上着や時計を持って行かれた泥棒の、かんかんに怒る姿、そしてなにより、お風呂屋さんでパンツを取られて、裸ん坊で困り果てる泥棒たちの愉快なこと!!
窓の外から、してやったりというメルコンの顔がのぞいています。
実に痛快な、逆転劇のお話ですが、この絵本はとてものどかで、ゆったりとした雰囲気も持っています。
泥棒たちは、悪者ではありますが、どこか憎めないところのある、まぬけな泥棒。表情も豊かで、ニヤニヤ笑いながらメルコンのおんどりを盗んだかと思えば、上着を取られ、目をむき出しにして怒ったり。
裸ん坊の姿は、「いや~ん。」という声が聞こえてきそう。
洋服屋の主人の、「そんなこたあ、知らねーよ。」といっているかのようなすまし顔。
ベーカリーに連れていかれるおんどりの、なんともあわれな顔。
のどかでゆったりとしたなかに、愛嬌ある豊かな表情が、登場するそれぞれに描き込まれています。
色彩も明るくのどか。
表紙見開きは、緑の野原に真っ赤なポピーの花が鮮やかに咲き乱れ、うっとりするような美しさ!絵本全体的に、白地背景に、緑の草地があり、ポピーの赤や、トルコ風の建物のオレンジがかった茶色、メルコンの紫の服が補色となって、鮮やかに美しく映えています。
人物の顔も、バラ色の頬が美しく、中東の人らしい彫の深い顔立ち。
お母さんの衣装や、お家の絨毯、クッションも、トルコの民俗性豊かな模様の織物が、美しく描きこまれています。
ナニー・ホグロギアンは、以前ご紹介した『きょうはよいてんき』(1976..9.20 ほるぷ出版)でも、アルメニア~トルコ辺りの昔話を、民俗色美しく描いていましたが、『きょうはよいてんき』は、きつねのお話であるためか、やや野性的であるのに対し、この『どろぼうとおんどりこぞう』の方は、人間中心でより洗練された印象があります。
でもどちらも、のんびりと暖かな雰囲気は共通です。
中東のお話など、あまり出会える機会がないので、このような絵本を、子どもたちにできるだけ読んであげたいなと思います。
愉快痛快で骨太な、昔話風のお話を、民俗性のあるゆったりとした暖かな絵で描いたこの絵本。人や風土に対する、暖かい愛情や、ユーモアあふれる眼差しが、なんともいえない愛嬌のある味わいをかもしだしている素敵な1冊だと思いました。
ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。
今回ご紹介した絵本は『どろぼうとおんどりこぞう』
ナニー・ホグロギアン文・絵 はらしょう訳
1994.8.21 アリス館 でした。
どろぼうとおんどりこぞう | ||||
|