絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ふしぎな500のぼうし』

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スピード感あふれる愉快なお話。

 農夫の子バーソロミューの帽子に、お城のみんなが振り回されてしまいます。

ふしぎな500のぼうし新装版

ドクター・スース/渡辺茂男 偕成社 2009年02月
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 読み聞かせ目安  中・高学年  ひとり読み向け

あらすじ

 むかし、デイビッド王国にバーソロミュー・カビンズという少年が住んでいました。バーソロミューは、羽のついた赤い帽子をひとつ持っていました。それはお父さん、そのまたお父さんから受け継いだ、とても古い帽子でした。

 

ある朝のこと、バーソロミューが帽子を被って町へでかけると、王様の馬車が通りかかりました。護衛隊の隊長は、

 

「ぼうしを とれえ!」

 

と叫びます。

王様の前では帽子を取るのが礼儀です。バーソロミューも帽子を取りました。

ところが・・・。王様の馬車は、バーソロミューの前で止まり、

 

「これ、これ、こぞう。」

「おまえは、おまえの王さまの まえで ぼうしを とるのか、それとも とらんのか?」

 

と問われました。バーソロミューは、確かに帽子を取って手に持っています。それなのに、なぜかもうひとつの帽子が、バーソロミューの頭の上に載っているのです!

 

「ぼうしを とれえ、とれといったのが わかったのか、わからんのか?」

 

バーソロミューは、また帽子を取りました。けれども、バーソロミューの頭には、まだ帽子が載っています。取っても取っても、帽子は次々とあらわれ、バーソロミューの頭の上には、常に帽子が載ったまま・・・!!

 

「この ずうずうしい いかさまこぞうを とらえよ。」

 

バーソロミューは、王様のお城へ連れていかれてしまいました。

お城へ行く道中もずっと、帽子は取っても取ってもあわられ続け、お城に着くまでに、なんと135個もの帽子が出てきました。

 

王様は、帽子作りの名人スニップス卿に、バーソロミューの帽子を調べさせました。

けれども、スニップス卿は驚くばかり。悲鳴をあげて逃げ出してしまいました。

 

次に王様は、3人の物知り博士を呼び出しました。それでも、バーソロミューの帽子を取ることはできません。

王様の甥っ子ウィルフレッド大公や弓の名手ヨーマンが、弓を引いて、バーソロミューの帽子を射抜いてもダメ。帽子は次々とあらわれます。

魔法使いが、まじないをしても効き目がありません。

 

王様は怒り、ウィルフレッドの進言で、とうとうバーソロミューは、首を切られることになってしまいました!

バーソロミューは、ひとり歩いて、首切り役人のいる地下牢へ向かいます。石段を下りるあいだも、帽子は脱いでも脱いでも、次々にあらわれました。

そしてとうとう、首切り役人のところへ着きました。

けれども・・・首切り役人は、バーソロミューの首を切ることができません!帽子を被ったものの首は切ることができないという決まりがあったのです!!

王様は、がっかりしました。それでも帽子は出続けます。もう300を超えました。

 

ウィルフレッド大公は、バーソロミューを塔から突き落とそうと、王様に勧めます。

王様とウィルフレッド、バーソロミューは、お城でいちばん高い塔の石段を登っていきました。すると・・・、その間も、取ってはあらわれる帽子の形が、しだいに変わり始めたのです!1本だった羽が、2本、3本。どんどん立派な帽子に変わっていきます!

塔の上に立ったときは、国中の誰も見たことのない、すばらしい帽子になっていました!!

ウィルフレッドは、バーソロミューを突き落そうとしました。そのとき・・・、

 

「まてっ!」

 

王様が止めました!!

王様は、バーソロミューの帽子が欲しくなり、売って欲しい言いはじめたのです。

そして、帽子がちょうど500個目になったとき、立派な立派な帽子は、バーソロミューの頭から離れ、王様の頭へ。

 

バーソロミューは、金貨を500枚もらって、家へ帰りました。

もう、バーソロミューの頭の上に、帽子は載っていませんでした。

 

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読んでみて・・・

 昔話風の、愉快なお話です。

王様の前で、取っても取ってもあらわれるバーソロミューの帽子。王様の怒りにまかせて、お話はぐんぐんスピードアップしていきます。

当のバーソロミューは、わけがわからないままお城へ連れていかれ、命まで狙われるように!それでも、終始ひょうひょうとしたバーソロミューと、怒り狂う王様の対比が、印象的で愉快です。

 

バーソロミューは、農夫の子。

お城からは、ずっと離れた、沼地の端の小屋に住んでいました。

バーソロミューの小屋の先に、街の人々の家があり、その先に金持ち商人の屋敷、王様のお城はさらにその先の、山の上にそびえ建っています。バーソロミューは、いつもお城を見上げるばかり。一方王様は、いつも山の頂から、国中を見下ろして暮らしていました。

物語でははじめに、この農夫の子バーソロミューと王様の暮らしの対比が、場面設定として明確に提示されています。

 

権力者である王様や、甥っ子のウィルフレッド大公、権威ある博士たちや、王様のお雇い職人、恐ろし気な魔法使いが、よってたかって取ろうとしても取れないバーソロミューの帽子。強い者が弱い者に振り回されるこっけいさが、昔話風で愉快痛快!

 

そして何より、このお話の面白さは、スピード感!!

ぽいぽい出て来る帽子とともに、お話しもぐんぐん進んでいくのです。

何もわからずに振り回されるバーソロミューのとぼけた感じ、空回りばかりする王様やウィルフレッドの怒り、手も足も出せない家来たち。みんなが帽子に振り回されて、ぽいぽい!読んでいる私たちも、息着く暇もないほどのスピード感なのです!

 

お話は、語り手が余計な心情など語らず、事態だけを語るのも昔話風。

会話文が多く、会話の応酬でお話しが進んでいくのも、スピード感を感じさせる要因になっているようです。それを冷静な語り手が、外側からしっかり物語を支えているような感じです。

 

絵は、人物も背景も、白地に黒の濃淡だけ。そこに帽子だけ真っ赤に描かれているのが、とても印象的です。絵でも、ぽいぽい出て来る赤い帽子が、お話を進めていっているのがよくわかります。

そして、その帽子が、最後にはとても優雅で立派な帽子に!

貧しい農夫の家に伝わってきた帽子が、王様を魅了するこんなにすてきな帽子になってしまうのも、痛快なところ。

王様は、この立派な帽子と、他に出てきたのこりの499個の帽子も全部、大きな水晶の箱に入れ、大事に玉座の横に据えたんだそうです。

 

痛快でユーモアいっぱいなこのお話。ちょっと長くて、残念ながら、時間に制限のある読み聞かせには向きませんが、お家でゆっくり時間をとって読んであげられるときや、子どものひとり読みには、とてもおすすめの1冊です。

長いけれども、なにしろこのスピード感。子どもでも、いっきに楽しく読めてしまえる絵本になっています。

 

ふしぎな500のぼうし新装版

ドクター・スース/渡辺茂男 偕成社 2009年02月
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今回ご紹介した絵本は『ふしぎな500のぼうし』[新装版]

ドクター・スース作・絵  渡辺茂男訳  1981.12  偕成社  でした。

 

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