絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ちゃぼのバンタム』

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本当の強さ

  小さなちゃぼのバンタムが勇気を出して大活躍! 

ちゃぼのバンタム

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 読み聞かせ目安  中学年  8分

 

あらすじ

 

デュモレさんの農場には、たくさんの動物がいます。

牛、豚、あひる、にわとり・・・、にわとりの群れの中には、体の小さなちゃぼのバンタムも混じっていました。

 

にわとりの中の、いちばん大きなおんどりは、みんなから「たいしょう」と呼ばれ、とてもいばっていました。

たいしょうは、いつも農場の門の上で胸を張って、声高らかに堂々と時を作りました。

 

「コケコッコーオ・・・・・・」

「みんな、おれをみろ、おれは のうじょういちの おんどりだあ」

 

バンタㇺも時を作ってみたいと思いましたが、いつもたいしょうから追いやられます。

 

バンタムは、めんどりのナネットが大好き。でも、めんどりたちのそばに寄ることはできませんでした。

なぜなら、たいしょうが、

 

「めんどりのせわは おれがする。おまえなんか あっちへいけ。すずめにさえ ばかにされる よわむしめ!」

 

と、ここでもまた追いやられるからです。

 

そんなある日、農場主のデュモレさんは、何の役にも立たないバンタムを、市場に売りにいくといいだしました。めんどりたちを守る仕事は、たいしょうにまかせておけば十分だと思ったのです。

 

でも・・・、翌日の朝はやく、農場にきつねが忍び込んできました!!

動物たちは大慌て!!

めんどりもあひるも、たいしょうさえも逃げ出しました。

 

ところが、ナネットは逃げられません!

きつねにしっぽの羽をくわえられてしまっていたのです!!

 

そこに・・・、

 

「コケコッコーオ!」

 

高らかに叫んできつねに襲いかかったものがいます!

バンタムです!!

 

バンタムは、鋭い嘴と爪で、きつねの目や鼻を突きひっかき、めまぐるしく飛び回ります。

きつねがバンタムを捕まえようと、ぐるぐる回っているすきに、ナネットは逃げ出しました。

 

「コケコッコーオーォー!」

 

きつねは逃げました。

 

「コケコッコーオ!ぼくは ナネットを まもったぞー!ぼくは のうじょうを まもったぞー!」

 

デュモレさんは、バンタムを売るのをやめました。

ナネットは、

 

「あなたのたたかいぶり すばらしかったわ」

 

といいました。

ほかのめんどりたちも、バンタムを誉めそやしました。

 

たいしょうは、いつものいばった様子はどこへやら・・・。ひどくはずかしそうに立っています。

 

バンタムはいいました。

 

「ぼくたち、もう けんかはやめて、なかよくしようしょ。でないと、デュモレさんが こんどはきみを うってしまうかもしれないよ」

 

たいしょうも、おんどりにとって一番大切なのは勇気だとわかり、バンタムと仲直りしました。

それからのち、デュモレさんの農場では、動物たちみんなが仲良く暮らしました。

 

 

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読んでみて…

 

人間関係の縮図を見ているようです。

 

体が大きく力が強くて、いつも威張っているもの。

その陰で、何もできず、できないと思われ、いつも小さくなっているもの。

それが、ある事件で真実の力が試され、本当の力量が露呈する。

 

子どもたちの社会にも、同じような力関係があることだと思います。

 

強い子の陰で、自分が出せないでいる子。

好きな子にも近寄れない子。

なかなか思いを伝えられない子。

 

無邪気に屈託なく遊んでいるようにみえる子どもの社会にも、いつのまにか出来上がる勢力関係。子ども社会だからこそ、よりいっそう払拭しがたい力関係かもしれません。

 

この絵本では、そういった力関係を、動物のお話を通して、楽しくおもしろく描いています。

 

強い子の陰で、小さくならざるおえない場面があることや、威張っている子を快く思わない気持ちをわかっている子は、バンタムの大活躍を見て、心がすく思いをすることでしょう。

 

 

小さくて何の役にも立たないと思われているバンタムが、大きなきつねに襲いかかる場面は、白黒だけの場面ですが、見開きいっぱい使ってダイナミックに、とても躍動感ある描き方になっています。

 

バンタムときつねの毛が、こちらにまで飛び散って来そうな勢い!。

 

以前ご紹介した、『もりのともだち』(マーシャ・ブラウン作・絵 やぎたよしこ訳 1977.11.7 冨山房)で、おんどりがきつねに襲いかかっているのに匹敵する迫力です。

 

masapn.hatenablog.com

 

 絵の構成としては、モノクロページとカラーページが交互に出て来る構成ですが、カラーページといっても、この絵本は、ベースの白に赤と黒と茶を基調にした抑えた色合い。絵本としては、ずいぶん地味な色遣いです。

 

でも、全体的に暖かみがあって、筆の運びは軽やか、躍動感があります。

動物たちの、ちょっととぼけた愛嬌のある表情は、豊かでユーモラスです。

社会における力関係、生存競争ともいえる厳しい問題を、楽しい絵で、さらりとユーモアたっぷりに描きあげているのです。

 

人と人が関係性を築いていく中で、必ず経験してしまう勢力関係や競争。それにともなって味わう劣等感や敗北感。そういった経験、感情を経て知ることができる本当に大切なもの。

 

子どもたちの人間関係でも、ときに厳しい状況におかれてしまうこともあるかもしれないけれど、こういった絵本を読んで、ちょっとでも心の支えにしていってもらえたらいいなと思いました。

 

小さな心に勇気を与えてくれる絵本です。

 

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今回ご紹介した絵本は『ちゃぼのバンタム』

ルイーズ・ファティオ文 ロジャー・デュポワザン絵 乾侑美子訳

1995.9.20  童話館出版  でした。

 

 

 

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