絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『もりのともだち』

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ロシアの昔話

 力強い美しさを持った昔話絵本です。

            

 読み聞かせ目安  低学年 7分

あらすじ

ある寒い日、きつねがのうさぎに出会い、一緒に家を作ろうと誘います。

のうさぎは、木の皮で住みごこちのいい家を作り、きつねは氷で家を作りました。

冬の間、二匹はお隣同士、仲良く暮らします。

 

でも、春になると・・・きつねの家はお日様で融けてしまいました!

きつねはのうさぎの家を横取りし、のうさぎを追い出してしまいます。

 

のうさぎが泣きながら森を歩いていると、おおかみに出会いました。

おおかみはきつねを追い出してやると請け合います。

おおかみは、勇ましく

 

「でてこい、きつね!」

 

と乗り込みましたが、きつねはあくびをしながら、

 

「もしも おいらが とびだしたらば ようじんしたほうが りこうだぜ けが ごっそりと とびちるぞ おいらが ほんとに でていけば」

 

と大声でいいました。

これを聞いたおおかみは、あっという間に逃げ出してしまいます。

 

また、のうさぎが泣きながら歩いていくと、今度はくまに出会いました。

くまもきつねを追い出してやると請け合い、木の皮の家に乗り込みます。

ところが、くまもおおかみといっしょ。きつねの言葉を聞くと、瞬く間に逃げ出してしまいました。

 

またまたのうさぎは、泣きながら森を歩きます。

今度は、おんどりに会いました。

おんどりもきつねを追い出してやると請け合い、木の皮の家に乗り込みます。

のうさぎが、どうせまたダメだろうと思っていると・・・おんどりは、

 

「コケコッコー!おれの けづめは くさかりがまだ きつねも ころしてやれるんだ もしも あいつが でてこなきゃ あたまを すとんを きりおとす!」

 

と鳴きたてました。

 

これを聞いたきつねは、木の皮の家から飛び出し、二度と戻ってきませんでした。

のうさぎとおんどりは、バタバタトントン踊りをおどり、木の皮の家で眠りました。

                      

 読んでみて…

ロシアの昔話です。

 

表紙を開くと、見開きいっぱいにロシアの深い森が広がっています。

左端の大きな木の影には、きつねが頭としっぽをのぞかせていて、どんなお話がはじまるのかなとワクワクさせます。

 

白地に黒と深緑、茶色がかった赤のみの抑えた色遣いで、動物も景色も力強いタッチで描かれた絵は無駄がなく、昔話の素朴で野性的な雰囲気をよく表しています。

 

登場する動物たちは、どれも表情豊かで、ユーモラスです。

赤いきつねは、いかにもずるがしこそう。赤い舌をのぞかせながら、魂胆ありげにのうさぎを誘い、家を作らせのっとります。おおかみが来ても、くまが来てもへっちゃら。大胆不敵におおあくびです。

 

荒々しい毛並みで、いかにも強そうなおおかみやくまは、緑の目をぎろぎろと輝かせ、意気揚々ときつねの所へ乗り込みますが、きつねの「けが ごっそりと とびちるぞ」の一言であっという間に退散!

 

それに比べて、おんどりのたくましいこと!!

赤いとさかに緑の羽。とても優美で猛々しい姿です。そして、自ら「おれの けづめは くさかりがまだ」という蹴爪の鋭さ!!

きつねは、いままでの老獪さはどこへやら。目をまん丸にして、なすすべもなく追い出されてしまっています。

 

本来、おおかみやくまはきつねより強く、おんどりはきつねより弱い。強いはずのおおかみやくまがあっけなく退散したのに対し、弱いはずのおんどりがきつねを負かしてしまう痛快さ、捕食の関係が逆転する面白さが愉快に描かれています。

 

おんどりがきつねに飛びかかっていく場面は、見開きいっぱいに、おんどりときつねだけを大きくクローズアップさせて大胆に描いていますが、おんどりの嘴の鋭さ、優美な毛並みのつややかさがとても神々しく、本来弱いはずのおんどりが、きつねを負かしてしまう不自然を、不自然と感じさせない強さを持った画面になっています。

 

そんなおんどりですが、きつねを追い出したあと、のうさぎとダンスしている場面では、パタパタトントン、とてもおどけたひょうきんな姿で踊っていて、ギャップが妙に愉快です。

 

この絵本は、以前ご紹介した昔話の絵本『パンはころころ』『3びきのやぎのがらがらどん』と同じ、マーシャ・ブラウンによるものです。昔話を絵本にするのは難しいとよくいわれますが、マーシャ・ブラウンは、昔話のもつ野性味、素朴さを壊すことなく、簡潔に、しかも味わい深く描けるとてもすぐれた絵本作家だなと、つくづく感心します。

 

masapn.hatenablog.com

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 素朴でたくましく大地に根差した昔話を、簡潔大胆に、しかも美しく描きあげた素敵な昔話絵本だと思います。

                      

 今回ご紹介した絵本は『もりのともだち』

マーシャ・ブラウン作・絵  やぎたよしこ訳

1977.11.7  冨山房  でした。

もりのともだち

マーシャ・ブラウン/八木田宜子 冨山房 1977年12月15日頃
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