今週のお題「クリスマス」
クレメント・ムーアの詩の絵本
神聖な美しさとワクワクする楽しさに満ちたクリスマスの絵本です!
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読み聞かせ目安 中学年 5分
あらすじ
クリスマスの前の晩、父さんも母さんも、子どもたちもみんな、気持ちよさそうに眠っている。
表でガチャンと音がした。
父さんは跳ね起きて、窓を開け、辺りを見回す。
父さんが見たものは・・・、なんと8頭のトナカイに引かれた雪ゾリとサンタさん!!
ソリは鷲より速く、サンタは口笛鳴らし、掛け声をかけてやってくる。
「はしれ、はしれ、それ、はしれ!」
サンタは屋根から煙突に入り、煤だらけになりながら、おもちゃの袋を運び込む。
サンタは丸々太った愉快な妖精。
父さんが見ていることに気づいたら、パチッとウインクしてくれた!
それから、靴下全部におもちゃを入れると、ないしょないしょとうなずいて、煙突登って出て行った。
サンタはソリに飛び乗って、空高く飛び去った。
「みなさん クリスマスおめでとう それでは みなさん おやすみなさい」
父さんは、サンタの叫びを聞いた。
読んでみて…
アメリカの科学者クレメント・ムーアが、わが子へのクリスマスプレゼントとして書いた詩を絵本に仕立てたものです。
この詩の絵本は、他にも数冊出されていますが、中でもトミー・デ・パオラによるこの絵本は、清潔感ある美しさと、暖かさ、ワクワクするような楽しさで際立っていると思います。
デ・パオラの絵本は、以前『ヘルガの持参金』(1981 ほるぷ出版)『まほうつかいのノナばあさん』(1978 ほるぷ出版)を、ご紹介したことがありますが、どれもきっちりとした直線や曲線を駆使した、幾何学的な構図、極端に様式化した描き方が特徴で、一目見てデ・パオラのものであることがわかります。
ですが、味わいは一冊一冊それぞれ違っていて、似ているようでありながら、それぞれ別の味、世界観がある絵本になっています。
共通する点といえば、幾何学的でありながら決して機械的でないこと。
ややくすんだ薄い青みがかかった色遣いも共通ですが、この色合いが幾何学的な絵に、暖かみと、どこか懐かしい感じを与えているのだろうと思います。
今回の『あすはたのしいクリスマス』では、暖かみや懐かしさに加え、すっきりとした清潔感がいっそう際立たせてあるようです。
最初の見開きページでは、一家の暮らす家と周りの風景が、クリスマスを迎える雪景色として描かれています。
木立は丸く刈り込まれたように様式化され、家はきっちりと直線で描かれていますが、真っ白な雪、道と丘陵は青みがかった雪になっていて、とても清潔なすがすがしい景色で、クリスマスの神聖さにぴったりです。
全ページに渡って、絵の周りにステンドグラスのような色鮮やかな枠が施され、それもまた神聖さと、枠物語を覗いているような楽しさを与えています。
サンタさんが、8頭のトナカイに引かせたソリでやってくる場面は、青い夜空と水色の丘陵に白い月が輝き、まさに夢の美しさ!!。
そしてサンタさんは、きらきら星のように輝く目と、バラ色の頬、サクランボのような鼻が愛くるしい、茶目っ気たっぷりの素敵なおじいさん!
家の中の様子は、古風で質素な暮らしぶりが伺えるような造りになっていますが、クリスマスを心待ちにしている家人の、華やぎが随所に施され、美しいしつらえになっていて、見ているだけでワクワクしてきます。
このような清潔で神聖な美しさと、ワクワクする楽しさを兼ね備えた素晴らしい絵本を、ぜひクリスマスの前に、サンタさんを心待ちにする子どもたちに読んであげたいなと思います。
ですが・・・この絵本、現在品切れ中とのこと・・・。
ここ数回に渡って、何冊かクリスマスの絵本をご紹介しましたが、素敵な本なのに品切れのものが多く、残念です。
手にするには、中古で買うか図書館で借りるかしかなく、ご紹介しておきながらすみません・・・。再版を願うばかりです。
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いつもありがとうございます。
今回ご紹介した絵本は『あすはたのしいクリスマス』
クレメント・ムーア文 トミー・デ・パオラ絵 金関寿夫訳
1981.11.15 ほるぷ出版 でした。