絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『やどなしねずみのマーサ』

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古き良き時代

 ノスタルジックで心暖まる絵本です。

 

やどなしねずみのマーサ (世界の傑作絵本B)

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読み聞かせ目安  中学年  10分

あらすじ

 寒空のした、街から街へとあてもなく歩きつづけるやどなしねずみのマーサ。

あるとき、きらきら光る映画館をみつけました。

 

「きっと あそこが あたしの おうちだわ。すぐ はいって たんけん して みましょう。」

 

映画館にはいると・・・、そこは夢のような所でした!

きらきら輝くシャンデリア、キャンディーやポップコーン、チョコレート・バーやナッツを売るお菓子の売店!!

マーサは、ここが夢に見た自分のお家だと、嬉しさでいっぱいに!!

あちこち建物のなかを探っていると・・・、男の人に出会いました。

男の人の名前はダン。この映画館の映写技師です。

マーサとダンは、すぐに友達になりました。

 

マーサは毎日、ダンの映す映画を見て過ごしました。

インディアンやカウボーイ、海賊やギャング、へんな怪物やきれいなお姉さん。

見たことのない楽しいお話。ポップコーンのご飯は、1日に3度も4度も食べられます。

 

「せかいいち すばらしい ねずみの くらしだわ!」

 

マーサはダンといっしょに、それはそれは楽しくて、うきうきした暮らしをおくっていました。

 

ところが、そんなある日のこと。

マーサが楽しく映画を見ていると・・・。

マーサのキーキー声を聞きつけたお客さんが、

 

「たすけて!たすけて!ねずみだわ!」

 

マーサは、ダンが引き留める手を振り切って、冬の寒空の下へ出ていきました。

 

またまた、やどなしになってしまったマーサ。

ゴミのバケツや下水管のなかで、寒い冬を過ごしました。

 

おなかがすいてやせ細ったマーサ。

ある雪の日、街を走って、またダンの映画館へいってみると・・・。

 

「きみを さがしていたんだよ。しんぱいして いたんだよ。」

 

ダンが、優しく迎えてくれました。

 

その晩のこと。

 

「ガシャ ガシャ ガシャン」

 

なんと、映写機が壊れてしまいました!!

ダンは大慌て!!

修理するにも、別の機械を動かすにも、時間がたりません!

お客さんを待たせることもできません!

 

そのとき、マーサがいいました。

 

「いま おたすけしますわ。ぶたいを あかるく してくださいな、ダン。そしたら あたし やってみます。」

 

マーサは舞台に立って、しっぽをくるくる、はなをぴくぴく。

にっこり笑って踊りはじめました!

映画で見ていたカンカン踊り、タンゴやワルツ、ツイストなど・・・。

 

お客さんはお喜び!

 

「ブラボー!やれやれ!」

 

それからマーサは、歌いました。

ゴミの山や、セメントの歌。

横丁のネコに、ねずみ捕り

暗くてびしょびしょの裏通り。

自分の悲しい昔の歌を。

 

お客さんは、みんな心打たれて泣きました。

そして拍手喝采!!

 

翌日、マーサの舞台は新聞にのり、街中にニュースが広がりました。

ダンの映画館は、マーサを見るお客さんでいっぱいに!!

マーサは、すっかり有名なスターになりました。

 

マーサは、世界一幸せなねずみになりました。

 

 

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 読んでみて・・・

 古き良き時代の、映画を見ているような絵本です。

 

表紙を開くと、真っ黒な画面。

上演開始前の、映画館のような真っ暗なページです。

そのページをめくると、電飾に囲まれたマーサ。ゴミの山にちょこんと座っています。

この最初の、表紙見返しの真っ黒なページは、真ん中に、

 

「切り抜くとスクリーンになります。」

 

と書いてあって、四角く切り取り線が描いてあります。

切り取ると、ちょうど次のページの、ゴミの上のマーサが見えるようになっていて、本当に真っ暗ななかに映しだされた映画のよう!

洒落た趣向の演出です!

 

ずっとやどなし。

ネコやねずみ捕りわんぱくこぞうに追い回され、寒くて汚い路地裏で暮らしていたマーサ。

そんなマーサが、やっと自分のお家をみつけます。

映写技師のダンと心通わせ、映画館での暮らしは夢のよう!

でも、そんな幸せな暮らしもつかのま。お客に見つかり、ダンは引き留めてくれますが、マーサは映画館を出ていってしまいます。

ずっとやどなしで、追われ続けて生きてきたマーサは、また嫌われた、疎外されたと感じたのでしょう。

 

でも、しばらくして帰ってみると、ダンは優しくまた受け入れてくれました!

このときのマーサの気持ち!!

雪に濡れた体とともに、マーサの心も暖かくくるまれ、さぞかし嬉しかったことでしょう。

その後すぐに、マーサはダンへの恩返しをする機会をえます。

壊れた映写機のかわりに、自分が舞台に立って、お客を喜ばせる。

結果、映画館は大繁盛。マーサも一躍有名スターになります。

これでめでたしめでたし 、といった感じですが、マーサが最後にいちばん嬉しかったこととして挙げられているのは、有名になってみんなから誉めそやされるのではなく、

「じぶんの していせきに すわって どっさりある ポップコーンを ぽりぽり かじりながら えいがを みる とき」「こおりの ういた レモン・コーラを すすって いる」とき、となっています。

自分のお家でゆったりくつろいで、おいしいものをいただきながら、大好きなダンの映す映画を見る。人に受け入れられ、安心して暮らすことの喜びが、しみじみと伝わってきます。

 

お客の前で、マーサの歌った歌は、自分のつらく寂しかったやどなしの暮らし。

その歌声は、とても穏やかだけれども、とても聞く人の心に沁み込むものでした。

涙を誘うこのブルースを、マーサはきっと、ずっと忘れないでしょう。

でも今は、このつらさ寂しさを、優しく包み込んでくれる暖かいお家と、愛するダンがいます。本当によかったねと、心が暖かくなります。

 

くすんだシックな色合い。薄暗い中に、スポットライトのように、ぽっとともる電灯の橙や黄色い灯の暖かさ、ぬくもり。絵本全体が、古き良き時代の映画のような、暖かく懐かしいゆかしさがあります。

 

ノスタルジックで、心がほーっと暖まるような、素敵な味わいのある絵本です。

優しい気持ちになりたいときに、ぜひどうぞ。

 

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今回ご紹介した絵本は『やどなしねずみのマーサ』

アーノルド・ローベル作  三木卓

1975.7.20  文化出版局  でした。

 

やどなしねずみのマーサ

アーノルド・ローベル/三木 卓 文化出版局 1975年07月19日頃
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