有名なイギリスのわらべ歌の絵本
誰もが聞いたことのあるわらべ歌を、ストーリー性ある絵で表現した絵本です。
ロンドン橋がおちまする! | ||||
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読み聞かせ目安 高学年 5分
あらすじ
♪ ロンドン橋がおちまする、おちまする、おちまする、♪
♪ ロンドン橋がおちまする、おちまする、マイフェア・レディー。♪
架けては落ち、架けては落ちするロンドン橋。
木に粘土→鉄はがね→じゃりと石→金と銀。
次々と材質を変えて、新しく橋を架けなおします。
金と銀で作ったら、盗まれないか心配になり、見張りを立てたり、見張りが居眠りしないように、パイプを持たせたり、番犬を放したり、繋いだり・・・。
ロンドン橋の架けかえに、人々が様々な工夫をこらします。
読んでみて・・・
誰もが一度は聞いたことのあるロンドン橋の歌。
イギリスのマザーグースのわらべ歌を、絵本に仕立てた1冊です。
「ほいきた どっこいしょ、ロンドンの町は どちらでござる?片足あげて 片足さげて、そうすりゃ ロンドンへ いきつくさ。山こえ 谷こえも おなじこと、いきたいとこへは そうしていくさ。
ほいきた かきねのなかのおにいさん、ロンドン橋は どちらでござる?くつはいてさ てくてくあるけ、そうすりゃ ロンドン橋へ いきつくさ。」
導入には、別のわらべ歌が載っていて、絵を見ると、農村の辻で、道を尋ねる旅人に、村人たちが道を教えてやっています。
でも・・・、村人たちが指し示す方向は、みんなそれぞれ違ってる!
のどかな農村風景に、おひとよしな村人。わらべ歌の本ですが、なんだか楽しいお話がはじまりそうな、ワクワク感が伝わってきます。
絵は、とても細かく、まるで探し絵のよう!
旅人、農夫、村長さんのような風情の人、それぞれに物語がありそうで、牛や犬、空飛ぶ鳥にさえ、物語が息づいているように感じられます。
細密な絵は、絵本全体にわたっています。
木のロンドン橋を渡る人々。馬車や荷車、兵隊たち。橋の下を通る舟。
壊れた木のロンドン橋の架けなおしを相談するお役人たち。
架けなおしのための砂利や石を運ぶ、大きな帆船、その上でせっせと働く人々。
いろいろな材料で、架けては落ち、架けては落ちするロンドン橋に、右往左往する人々の様子などが、とても愉快に描かれています。
またロンドン橋は、ただ川を渡るだけの橋ではなく、その上に住居や商店が建ち並び、人々が生活する場、ひとつの小さな街でもあった時代もあり、橋の上に建った住居に、洗濯物が干してあったり、橋の上に酒樽や果物が転がっていたり・・・etc。橋の上とは思えないほどの賑わいよう!
金と銀で橋を作っている場面では、その金銀を盗みにやってくる泥棒が、スチーブンソン(1850~1894)の『宝島』に出てくるシルバー船長のような、片足の海賊みたいだったり!ユーモアもいっぱいで、18世紀ごろの人々の風俗が、実に生き生きと、楽しく愉快に描かれているのです。
絵としても、細密で楽しいだけでなく、月夜のロンドン橋や、まるでターナー(1775~1851)の絵を髣髴とさせるような、霧のロンドン橋の絵などは、この絵本の愉快さのなかに、しっとりとした詩情をもたらしてもいます。
訳文も簡潔で、歌の調子をそこねず、リズミカルに歌っていけます。
よく、絵本のなかで歌があったり、「○○は歌いました。」という感じで歌がでてくると、読み聞かせのときに、本当に歌うかどうかが、問題になったりします。私は、淡々と読む派なので、あまり歌わず「読む」だけにすることが多いのですが、この絵本は「歌う」ほうが読みやすく、歌った方が圧倒的に自然なので歌います。よく知られたメロディーなので、「マイフェア・レディー」の繰り返しのところなど、子どもたちも自然と声を合わせてくれたりします。
巻末には、付録として楽譜と英語の歌詞。それから、紀元前43年にローマ人がブリテンに侵攻したときに架けたというロンドン橋の伝説から、1971年アメリカのコロラド河に移築されるまでの、ロンドン橋の歴史およびその注釈が、くわしく書かれています。
よく知られたわらべ歌を、絵本にしたものですが、その絵といい付録といい、実に精緻に丁寧に描き作られた、素敵な絵本です。
1ページ1ページ、細かいところまでじっくり見て、いろいろな物語を想像しながら、豊かにいつまでも味わっていきたい、飽きず眺められるすばらしい1冊だと思いました。
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いつもありがとうございます。
今回ご紹介した絵本は『ロンドン橋がおちまする!』
ピーター・スピア画 渡辺茂男訳
2011.12.26 復刊ドットコム でした。
英語の名作絵本をご家庭にお届け!