心地よい空からの冒険のお話
軽快で楽しいおつきさまとつきのぼうやのお話です。
読み聞かせ目安 低学年 7分
あらすじ
ある日のこと。夜空のおつきさまが下を見ると・・・おや、まあ、池の中にももうひとりおつきさまがいるではありませんか。
おつきさまは気になってしかたないので、つきのぼうやに連れてくるように頼みます。
つきのぼうやはかごをさげて、元気よく下りていきました。
柔らかいお布団みたいなわたぐもを抜け、飛行機や渡り鳥の群れの中をすぎ、怖い顔した凧に会ったり、こうもりや黄金虫、小鳥にトンボ、たんぽぽの種に風船。いろんなものに出会いながら。
丘のてっぺんの木では、はしごに登った娘から、リンゴをもらいました。
丘のふもとの家の煙突を抜け、煤だらけになりながら子どもたちにご挨拶。
街にはたくさん丸いものがありますが、どれもおつきさまではなさそうです。
とうとう「ばしゃーん!」と、水の中に飛び込んで・・・、水の底できらきら光る丸いものに出会います。それは女の人が落とした手鏡で、つきのぼうやが覗いてみると・・・
「わあ、なんて かわいらしい おつきさまだ!やっと みつけたぞ。さあ、つれて かえろう!」
つきのぼうやが連れてきたおつきさまを見た空のおつきさまは、
「なんと りっぱで うつくしい かただろう!」
気の合うお友達ができて、すっかりご機嫌になりました。
読んでみて・・・
縦34㎝横12.5㎝の、細長い変形の絵本です。
サイズ的に珍しいので、すぐ子どもたちの目を惹きます。
明るい空色の背景に、明るい黄色のおつきさま。
まん丸な顔のかわいらしい男の子が、ばんざいして空に浮かんでいるようです。
男の子の持つかごも、星も明るい黄色。
明るくて気さくな感じが、子どもたちに親しみを感じさせます。
絵本の中でも、この明るくて気さくな感じはずっと続き、おつきさまが出ている夜なのに、昼間のような明るさ⁉です。
おつきさまもつきのぼうやも、屈託なく明るくまっすぐな性格。
お話もまっすぐ、軽快にトントンと進んでいきます。
テクストも短く、簡潔な語りで無駄がありません。
おつきさまのお使いで、空から地上へ降下していく、つきのぼうやの動きも小気味よく、降りていくごとに、子どもたちもよく知った、日常世界と次々に交錯しながら進んでいくので、子どもたちはたちまち、つきのぼうやといっしょになって、うきうきと冒険を楽しんでいけます。
飛行機、渡り鳥、こうもり、黄金虫、トンボ、たんぽぽの種、風船etc・・・。
出会うものすべてが、子どもたちにとって身近なものばかり。
飛行機に乗った女の子の、
「おとこのこが そらに うかんでいるわ」
という声に、
「ばかなことを いわないで。そらに うかぶのは おつきさまだけですよ」
というお母さんの言葉や、
煙突を抜けて煤だらけになったつきのぼうやの顔をみて、
「ほらね、かおを あらわないと、あんなふうに なりますよ」
というお母さんのお小言も、子どもたちにとっては日常聞きなれた、親しみのある親子のやりとりですね。
空から降りてくる非日常が、自然と身近なものに感じられ受け入れられるように、とても上手く描かれています。
屈託なくざっくばらんな、つきのぼうやの性格も近しいもの。
空の冒険のさなか出会うものたちどれにも、親しみをもって接するので、子どもたちも自分の身近なものに親しまれる喜びと近しさで、一気につきのぼうやとお友達になって、いっしょに空を駆け回ることができるでしょう。
丸い大きなおつきさまも、優しくのんきでユーモアがあって、親しみのあるおつきさまです。
なてったって、おつきさまもつきのぼうやも、鏡に映った自分の顔にご満悦!
「わあ、なんて かわいらしい おつきさまだ!」
「なんと りっぱで うつくしい かただろう!」
お気楽感がなんともユーモラスで、よりいっそう親しみを感じさせます。
幸せな心地よい浮遊感のある、楽しい絵本です。
裏表の表紙見返しの絵も、夜空の雲間に見えるおつきさまと、おつきさまの光に照らされた、子どもや猫、水上に帆を張ったボートなどがとても美しく抒情的で、絵としてもとてもステキです。
今回ご紹介した絵本は『つきのぼうや』
イブ・スパング・オルセン作・絵 やまのうちきよこ訳
1975.10.20 福音館書店 でした。
つきのぼうや | ||||
|
ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。