月夜の魔法
満月の光に誘われて子どもたちが踊りだす。
読み聞かせ目安 高学年 5分
あらすじ
くたびれたお日さまが眠ったら、月が昇ってくる。
ふくろうが目をさまし、猫が動きだす。
ひんやりとした夜の影。
年寄りガエルが鳴きはじめ、森から蛍が飛んでくる。
子どもたちは、夜の庭に出て、みんな裸足で踊りだす。
草を踏み、何度も何度も。
夜の木登り。
怖~い話。
でんぐり返し。
ジャンプ!ジャンプ!
何度も、何度も。
でも、お月さまには触れない。
「じかんよ」
と母さんに呼ばれ、ベッドに入る。
お月さまは、空の海をわたり、子どもたちは明日のお日さまの夢をみる。
読んでみて・・・
満月の光に照らされた、とても神秘的で詩的で夢幻的な絵本です。
日が沈んで夜。ふくろうや猫など、夜行性の動物たちが動き出し、空には満月の光が白く輝きます。
ひっそりと静かな月夜。
子どもたちは、月の光に誘われ庭に出て、夜の空気を身にまといながら、踊る踊る。
まるでお月さまの魔法にかかったように。
深い緑や紫の独特な色彩で描かれた夜の庭は、満月の白い光に煌々と照らされて、とても神秘的な透明感を醸しだしています。
カラーページとモノクロページが、交互にでてくる構成で、テクストがあるのはモノクロページだけ。テクストも物語というより、限りなく詩に近いものです。
詩のようなテクストと、カラーとモノクロが交互にでてくる変化が、絵本にリズムを与え、加えてカラーページで踊る子どもたちの姿が、音はないのにとても静かなのに、不思議な躍動感を感じさせます。
月の光のなかで、踊り遊ぶ子どもたちの顔は恍惚として、本当に魔法にかかっているよう。
夏の夜の開放感のなかで、木登り、でんぐり返し、「おばけだぞ!」と怖い話に興じながら、届かぬお月さまに向かってジャンプ!ジャンプ!
さまざまな動きをみせる子どもたちの自由な動きのなかで、いちばん印象的なのは、やっぱり踊りです。
「踊る」という、人間の動きの中で最も原初的な動作が、月の光に誘われて導きだされている。子どもたちの感じる、体の内側から沸き起こってくる、言葉にならない感覚が「踊る」という身体表現として表出されてくるのが、煌々と照る月の光のなかで、宇宙や自然、人間、生命の本源的な神秘が、言葉や感情とかいったものよりもっと深いところで受け取られ、あふれでてきているようで、少し怖いくらいの不思議な世界観をあらわしています。
心の深いところ、無意識の領域に沁み込んでいくような絵本だと思います。
月の輝く夜に、ひっそりと読みたい絵本だなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『ムーン・ジャンパー』
ジャニス・メイ・ユードリー文 モーリス・センダック絵 谷川俊太郎訳
2014.11 偕成社 でした。
ムーン・ジャンパー | ||||
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