夢の中へ
不思議な感覚が心に残る夢幻的な絵本です。
読み聞かせ目安 低学年 4分
あらすじ
ぼくがラッパを持って森へ散歩にでかけます。すると、大きなライオンが昼寝をしているのに出会い、ライオンはぼくの散歩についてきます。
次に、2頭のゾウの子が、その次に2頭のクマが、お父さんカンガルーとお母さんカンガルーと赤ちゃんカンガルーの家族が、順にぼくの散歩についてきました。
年取った灰色のコウノトリも、2匹のちいさなサルもよそ行きの洋服を出して、ぼくの散歩についてきます。
ぼくを先頭にして歩いていくと・・・ウサギもぼくの散歩に加わり、ぼくはラッパを鳴らし、ライオンは吠え、ゾウは鼻を鳴らし、クマはうなり、カンガルーは太鼓を叩き、コウノトリはくちばしを鳴らし、サルは大声で叫びながら、にぎやかな散歩がはじまります。
しばらく行って、ぼくたちはみんなでおやつを食べ、遊んでいると・・・、かくれんぼでぼくが鬼になって目をつむっている間に、動物たちはみんないなくなって、かわりにお父さんが迎えにきます。
ぼくは、「さようならぁ。みんな まっててね。また こんど、さんぽに きたとき、さがすからね!」といって、お父さんの肩車に乗って帰るのでした。
読んでみて…
不思議な感覚・・・夢をみているような感じのする絵本です。
表紙は茶をベースに、黒と白で描かれていますが、中身はずっと白黒の画面で描かれていきます。
男の子と動物たちがにぎやかに鳴り物を鳴らしながら散歩し、楽しくおやつを食べ、遊ぶという、本来ならワイワイガチャガチャするはずの状況なのに、この絵本は実にひっそりとしていて、まるでモノクロの無声映画をみているような感じなのです。
夢幻的という言葉がしっくりくる、そんな絵本です。
子どもによっては、少し怖さを感じてしまうかもしれません。
あるいは、この男の子と共感して、自分の夢を紡ぐ子もいるかもしれません。
静かすぎてつまらなく思う子もいるかもしれません。
子どもによっていろいろな受け取り方をするだろうと思いますが、読む者の心に何か引っかかるもの、不思議な夢を見たような感覚の記憶を、深く残すような不思議な魅力を持った絵本です。
大人も子どもも忙しく、目まぐるしい世の中に暮らす昨今、時にはこんな絵本を読んで、夢の中にたゆたう時間を持つのもいいのかもしれないなと思いました。
深読みをすると、登場する動物たちや採り物に、何かシンボリックな意味があったりするのかもしれませんが、そこはひとまずは追求せず、心の奥底に夢幻の記憶を持つ、そんな読書のありかたもあっていいかなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『もりのなか』
マリー・ホール・エッソ文・絵 間崎ルリ子訳
1963.12.20 福音館書店 でした。
もりのなか | ||||
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