のびやかな発想と遊び
子どもの遊びの世界をそのまんま絵本にしたような1冊です。
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読み聞かせ目安 低学年 3分
あらすじ
広っぱに丸太が1本ありました。
とらの子とらたがやってきて、
「あ、うまだ」
というと・・・、
「そりゃ、もちろん わたしは うまだ」
丸太は馬になって、とらたを乗せ、駆けだします。
しばらくいくと、川があり、丸太はカヌーに!
とらたはカヌーに乗って川下り。
でも・・・、カヌーは岩にぶつかってしまいます‼
すると・・・、丸太はすばやく橋になり、とらたを向こう岸に渡してくれました。
そこへ、とらこがやってきて、丸太は今度は汽車になり、2人を乗せて走ります。
山をまわって、トンネルくぐって。
広っぱにもどって、
「しゅうてん!」
「さようなら」
また明日、あそぼうね!
読んでみて・・・
子どもの自由な発想と遊びを、そのまま絵本にしたような1冊です。
何の変哲もない1本の丸太でも、子どもにかかれば、たちまちいろんな物に変身!
馬、カヌー、橋、汽車・・・。
次々に姿を変え、とらたを楽しませます。
途中で遊びに加わったとらこも、何の抵抗もなく、ごくごく自然に、とらたと丸太の遊びの仲間入り!
自由で伸びやか、何の屈託もない、健やかな子どもの遊びの世界です。
保育者として、長年子どもに寄り添ってきた、作者の中川李枝子らしい、子ども心の捉え方が、生き生きと現れている絵本だと思います。
とらたが、「あ、うまだ」といえば、丸太は「そりゃ、もちろん わたしは うまだ」。「カヌーに のろう」といえば、「そりゃ、もちろん、わたしは カヌーだ」。川でぶつかりそうな岩を見て、「あ、かいぶつ。たすけて!」といえば、「わたしは、まるたの いっぽんばし!」
丸太が、即座にとらたの発想と言葉に反応し変化するさまは、子どもの自由な発想を、まったく遮らず、さらに生き生きと伸ばしてくれます。
子どものファンタジーの世界を、外側から傍観しているのではなく、いかにも寄り添い、内側から見ている感じです。
白い余白の多い画面は、細いけれどもスピード感のある線が、お話のまっすぐ進んでいくさまをよく表しています。
濁りのない青、黄色、赤、茶色だけのシンプルな絵も、すっきりと鮮やかで、子どもの心の濁りなさを表しているようです。
単純な絵ですが、とらたととらこの表情も豊か!
楽しい遊びに夢中になっている、子どもそのものといった感じです。
そして、自由な発想を繰り広げ、その場その時、それぞれの遊びを満喫したあとは、とらたもとらこも丸太も、実にあっさりあっけらかんと、
「さようなら」
「さようなら」
「さようなら」
でおしまい。
こんなところにも、子どもの屈託のなさがよく現れています。
「今を生きる」子どもそのものです。
子どもの日常をよく観察し、寄り添った者の、暖かな眼差しが感じられる、楽しい絵本だなと思いました。
短くて、あっけらかんとした絵本なので、読み聞かせのとき、じっくり読み込む絵本などの後に読むと、ちょっと気分を解放できていいかなと思います。
長い本との組み合わせに、ぴったりの1冊だなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『とらたとまるた』
中川李枝子文 中川宗弥絵
1980.1.1 福音館書店 でした。
とらたとまるた | ||||
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