絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ジョン・ギルピンのゆかいなお話』

*当ブログではアフェリエイト広告を利用しています。

コルデコットの絵本

 18世紀イギリスのユーモア・バラッドを絵本に仕立てたクラッシックな1冊

 

          f:id:masapn:20201127171822j:plain

 読み聞かせ目安  高学年  10分

あらすじ

 昔、イギリスのロンドンに、律儀な洋服生地の商人ジョン・ギルピンが住んでいた。

 

明日は、20回目の結婚記念日。ギルピンは、奥さんにせがまれて、エドモントンのレストランで食事をすることに。

奥さんと子ども3人、奥さんの妹と子どもは、馬車に乗り、ギルピンは後から、友達から借りた馬で行くことになった。

 

さて当日、奥さんたちはめかしこんで、馬車に乗りこみ出発したが、ワインを持って行くのを忘れてしまった。

ギルピンは、頭のてっぺんからつま先まで、きちんと身なりを整え、ワインを剣をつるす皮バンドに引っかけて、馬に乗って出発した。

 

けれども、借りてきた馬は、いつもと乗り手が違うので、今日は何を乗せたかと、ギャロップで走り出した!

 

しがみつくジョン・ギルピンの頭から、帽子が吹っ飛ぶ!かつらが吹っ飛ぶ!

マントも吹っ飛び、腰につるした瓶は丸見え‼

猛スピードのギルピンを見て、犬は吠える!子どもはわめく!

家々の窓から次々に、人が顔出し、やんやと囃す‼

 

「こしにハンディがついてるぞ! 馬のレースだってさ! しょうきんが 千ポンド!」

 

爆走するうち、馬のお尻が上にあがって、ワインの瓶は当たって砕け、秘蔵のワインは道に飛び散り、それでもギルピン、割れた瓶首ぶら下げて、ロンドンの北、イズリントンを走り抜け、エドモントンの湿地を爆進!泥のしぶきが飛び散った‼

 

レストランで待っていた奥さんは、亭主のみっともない姿を見て、びっくり仰天‼

奥さんが、止まってと叫んでも、馬はまだまだぐんぐん走る!

結局馬は、自分の家まで走って帰り、馬の飼い主は、ジョン・ギルピンの乱れた姿に驚いて、かつらと帽子を貸してやり、ギルピンさんは、また馬に乗り、今来た道を引き返す。

 

ところがその時、ロバがヒーホーと鳴いたのを、ライオンが吠えたと勘違いした馬が、またもや爆走‼

帽子は吹っ飛ぶ!かつらは吹っ飛ぶ!

 

ギルピンの奥さんは、貸馬車の御者に頼んで、ギルピンを追いかけさせた。

ギルピンを乗せた馬は、驚いてもっと速く走る!

御者の馬も走る!

それを見た紳士6人は、泥棒の捕物と勘違い‼

 

「とまれ、どろぼう!やーい とまれ!」

 

それを見た沿道の人々も、追いかけっこに加わった‼

 

道の料金所では、番人が馬のレースと勘違い。

すばやく門が開かれて、ギルピンは一着で、馬はやっとここでぴたりと止まり、今朝出たロンドンの、出発地点にゴールイン‼

 

元気に帰れて、おめでとう‼

 

絵本のある暮らし、幸せな時間。|絵本ナビ

 

 読んでみて・・・

 18世紀のイギリスの詩人ウィリアム・クーパーの詩に、ランドルフ・コルデコットが絵を付けた1冊です。アメリカで、その年最も優れた絵本に与えられる、あの有名な「コルデコット賞」はこのランドルフ・コルデコットを記念したもので、「コルデコット賞」のメダルには、この絵本『ジョン・ギルピンのゆかいなお話』で、ギルピンが馬で爆走する姿が、表に彫られています。

 

絵本の奥付を見てみると、いかにも18世紀の人という感じの、ウィリアム・クーパーの肖像と、それよりちょっと新しい(でも十分古い)、コルデコットの写真が載っていて、時代を感じます。

 

クーパーのユーモアバラッドによるお話は、ユーモアのかたまり!といった感じ。

最初から最後まで、ギルピンの滑稽な、息も付かせぬ大爆走で貫かれています。

 

せっかくの結婚記念日。それも、結婚後20年にして初めての、レストランでのお食事なのに、ギルピンはもうさんざん‼

かつらに帽子、マントも羽織って馬に乗り、立派な紳士として悠々と、郊外レストランベル亭へ向かったはずが・・・。

いつもの主人と勝手が違う乗り手に驚いて、馬が大爆走‼

帽子が吹っ飛び、かつらも吹っ飛び、ギルピンさんの禿げ頭は丸出しに‼

マントも吹っ飛び、腰にぶら下げていた秘蔵のワインの瓶も割れ、びしょびしょぐしゃぐしゃ‼

馬の腹は、ワインを浴びて湯気を立て、ギルピンの禿げ頭も汗で湯気立ち、周りの人は馬のレースと勘違いして、やんややんやと囃し立て・・・。

目的のベル亭を通り過ぎ、馬の主人の家に着き、身なりを整えたかと思ったら、馬はまたまた爆走し、またもやボロボロぐちゃぐちゃに!

やれ泥棒だ、馬のレースだ。周りも巻き込み、より一層の大騒ぎ‼

 

困った事態に落ち込んで、何とかしたいと精いっぱい頑張っても、どうにもならない。

精いっぱい頑張って突っ走っているときは、なりもふりも構っちゃいられない。

周りがどう口出ししても、手出ししても、構っちゃいられない。

まるで滑稽な、人生ドラマを見ているようです。

 

それでも最終的には、元来た場所に落ち着いて、やれやれ元気で帰れて何よりと、ほっと一安心。あんなにレストランでの食事を楽しみにしていた奥さんも、夫をなじるでもなく、無事に帰れたことを喜び、熱い抱擁で迎え、子どもたちも大喜び!

 

なんだかんだあっても、結局は落ち着くところに落ち着くもんだと、これまた人生ドラマのよう。すったもんだがあるけれど、人生を、人間というものを肯定する、暖かい眼差しが感じられます。

 

コルデコットの絵は、古めかしいながら、細部まで丁寧に描き込まれ、ヴィクトリア時代の風物をよく写し、当時の人々の暮らしぶりを、豊かに伝えています。

白地にセピアの線だけのページの間に、時折挟まれる水彩のカラーページが、お話にリズムを与え、ほのぼのとした中にも、このお話のユーモアとスピード感を表しているようです。

 

ユーモラスで楽しく、人生の一面を垣間見せてくれる絵本の古典中の古典!といった感じです。

 

ただ、ちょっと残念なのは、詩の翻訳・・・。

韻文を、そのリズム・味わいともに残しながら、訳するのは至難の業なのでしょう。言い回しが独特であったり、日本語としてのリズムが掴みづらい。どうにも声に出して読みにくい、という難点があります。

せっかく素敵な絵本なので、ぜひとも子どもたちに読んであげてたいと思うのですが、本当に、よくよく練習して、区切る場所、リズムの取り方を、読み手が十分習得してからでないと、人前ではなかなか読めない難しさがあります。

 

でも、ユーモラスで楽しく、人生への暖かい眼差しが感じられ、かつ、時代の雰囲気や絵本の歴史まで見てとれる、素晴らしいクラシック絵本です。

いつの日か、よくよくしっかり練習して、たくさんの子どもたちの前で読んでみたいなと思いました。

 

今回ご紹介した絵本は『ジョン・ギルピンのゆかいなお話』

ウィリアム・クーパー詩 ランドルフ・コルデコット絵 吉田新一

1985.9.15  ほるぷ出版  でした。 

ジョン・ギルピンのゆかいなお話

ウィリアム・ク-パ-/ランドルフ・コルデコット ほるぷ出版 1985年09月
売り上げランキング :
by ヨメレバ

 ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。

いつもありがとうございます。

にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村


絵本ランキング

 

このブログに掲載している著作物の書影・書誌データ等は、版元ドットコム・各出版社ホームページ・個別の問い合わせ等を経て、使用の許諾を確認しています。