ウクライナの昔話
素朴で大胆な発想の楽しい昔話です。
てぶくろ |
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読み聞かせ目安 低学年 3分
あらすじ
子犬を連れたおじいさんが、雪の降る森を歩いていました。
おじいさんは、てぶくろを片方落としてしまいましたが、そのまま行ってしまいました。
すると・・・、ねずみがやってきて、てぶくろに入り・・・てぶくろの中に住むことにしました!
次に、かえるがやってきて、仲間に入ります。
次は、うさぎ。
その次は、きつね。
おおかみも入ります。
いのししも。
ついには、大きなくままで入ってきました!
手袋は、もうぱんぱんで、今にもはじけそうです!!
その時、おじいさんがてぶくろを落としたことに気づき、探しにきました。
いぬが、
「わん、わん、わん」
と吠えたてると、動物たちはみんなびっくりして、てぶくろから這い出してしまいました。
そこへおじいさんがやってきて・・・、てぶくろを拾いました。
読んでみて…
東欧に伝わる昔話です。
おじいさんが落としたてぶくろに、小さなねずみから大きなくままで、7匹もの動物が入ってしまうという、いかにも昔話らしい楽しい展開を持ったお話です。
お話は、始めにねずみがてぶくろに入ったあと、うさぎ、きつね、おおかみ・・・と続くたびに、
「だれ、てぶくろに すんでいるのは?」
「くいしんぼねずみ。あなたは?」
「ぴょんぴょんがえるよ。わたしも いれて。」
「どうぞ」
というパターンの、居住者の確認と新参願いの掛け合いで進んでいきます。
掛け合いが繰り返され、動物が増えるにつれ、「だれ?」のあとに、「くいしんぼねずみと ぴょんぴょんがえると はやあしうさぎと・・・」という具合に、どんどん動物の名前が増えていくおもしろさ、てぶくろがどんどんぱんぱんになってきて、張り裂けんばかりになっていくおもしろさが重なります。
また来た!また来た!
いっぱい!いっぱい!もういっぱい!!
絵も、最初はただのてぶくろだったのが、ページを追うごとに、高床に持ち上げられ、はしごがかかり、軒が付き、ドアが付き、軒にクギが刺さったかと思うと、つぎのページでそのクギにベルがかかり・・・窓まで付いて、立派に家らしくなっていきます。窓からは、うさぎやかえるが覗いています。
てぶくろに、大小取り混ぜたくさんの動物が入り、家になる!
ダイナミックな大転換です!!
現実にはありえないことが、実に自然に無造作に語られ、描かれていて、いかにも昔話という感じがします。
森は雪が深くつもり、空は灰色で寒そうですが、東欧の民俗的な色遣いというのでしょうか、深みがかった暖かな色合いで描かれ、絵本全体からは寒さより、炉辺の暖かみを感じます。
動物たちの衣装や表紙の模様も、東欧の衣服らしいテキスタイルで、かわいらしい暖かな魅力があります。
動物たちの表情も、写実的でありながら、愛らしく、それぞれの性格がユーモラスに描き出されています。
あれほどぱんぱんに盛り上がったてぶくろででしたが、最後はなんともあっけなく、いぬに「わん、わん、わん」と吠えられたとたん、動物たちが逃げ出して、てぶくろは何事もなかったかのように、元どおりの普通のてぶくろになり、おじいさんに拾われて終わります。
ちょっと肩透かしをくらったような、あっけない終わり方ですが、それもまた昔話。
つべこべ理屈を問わず、ああそうか。そうなのねと、現実にはありえないお話を、さらりと楽しむべきなのでしょう。
画面いっぱいにダイナミックに繰り広げられる、民俗的な味わいと遊び心のある暖かな絵と、テンポよくまっすぐ進んで行くお話で構成されたこの絵本は、小さな子どもたちにもわかりやすく楽しい一冊だと思います。
冬の寒い日に、暖かなお部屋でゆっくり楽しむのにおすすめの絵本です。
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いつもありがとうございます。
今回ご紹介した絵本は『てぶくろ』
エウゲーニー・M・ラチョフ絵 うちだりさこ訳
1965.11.1 福音館書店 でした。
絵本とお茶で暖かなくつろぎを♡