絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『たんじょうび』

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幸福感に満ちた絵本 

大好きな人の誕生日を祝う、愛情いっぱいの絵本です。

 

たんじょうび

ハンス・フィッシャー/大塚勇三 福音館書店 1965年10月
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by ヨメレバ

 読み聞かせ目安  中学年  10分

 

あらすじ

 

森の中の一軒屋に、リゼッテおばあちゃんとたくさんの動物たちが暮らしています。

 

ねこのマウリとルリ、いぬのベロの3匹は、おばあちゃんと一緒に家の中で暮らしていますが、そのぶん家の仕事を手伝っていました。

 

ある日、リゼッテおばあちゃんが、村に買い物にいった時のこと。おばあちゃんの留守の間に、3匹はケーキを焼くことにしました。

 

その日は、リゼッテおばあちゃんの76の誕生日だったのです!!

 

いぬのベロは、表にいる他の動物たちにも呼びかけ、お誕生会の準備を始めました。

 

うさぎたちはろうそくを76本買いにいきます。

めんどりたちは、贈り物に卵を36個産みました。

おんどりはりんごをもぎ、やぎは花を摘み、していると・・・なんだか焦げ臭いにおい!

 

大変!!ケーキが真っ黒こげです!

ねこたちはケーキのことをすっかり忘れていましたが、砂糖をたっぷりかけて、何とかカバーしました。

 

夕方になりました。森の家はしーんと静まり返っています。村から帰ってきたリゼッテおばあちゃんは、心配になりました。

 

「いったい、どこに きえてしまったのかしら?あんまり しーんとしてて、なんだか きみがわるいわ!わたしの かわいい どうぶつたちは、どこに いっているんだろう?まさか、わるいことでも あったんじゃないだろうね?」

 

すると・・・、窓の隙間からうっすら灯が見えてきました!

おばあちゃんは家に駆け込み、びっくり仰天!!

 

家の中では、誕生日のお祝いの支度が華やかにできあがっています!!

おばあちゃんは嬉しくて泣きました。

 

お祝いの食事のあとは、マウリとルリのお芝居です。

あひるの池では、動物たちが手に手にりんごの燭台を持ち、キャンドルサービス!!

 

そして仕上げはプレゼント!

おばあちゃんが屋根裏にいってみると・・・

籠の中に、ねこの赤ちゃんたち!!

 

リゼッテおばあちゃんは大喜びです!!

 

みんなが寝静まった真夜中、籠の中でこねこが1匹だけ起きていました。

あたりをきょろきょろ眺めては、何かを考えているようす・・・。

何を考えているのかな?

 

 

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読んでみて…

 

横長の大きな画面に、優雅な線描きの絵で繰り広げられるお話。

表紙から最後のページまで、楽しそうに躍るような線が、リゼッテおばあちゃんの誕生会を準備する動物たちのワクワクした気持ちや、おばあちゃんの喜びをよく表しています。

まるで絵本全体からハッピーバースデーの歌が聞こえてくるよう!

 

表紙の絵は、失敗したけれどなんとか作り上げたバースデーケーキを得意そうに掲げるベロ。その両脇にすまして座っているマウリとルリも、自慢げに嬉しそうにケーキを見守っています。

 

そして3匹の周りには、一見模様のように見えますが、よく見るとペン描きの連なった線で描かれた、うさぎやめんどり、おんどり、あひるたちが、優雅にぐるりと取り囲んでいます!

地味な黄土色のベースに、黒と茶と白、くすんだ赤のみの抑えた色合いですが、とても優美で楽しい絵になっています。

 

表紙をめくると、表紙と同じ構図で、ベロとマウリとルリ。3匹をぐるりと囲む線描きの動物たちですが、表紙とは違って、このページは白地にほんの少し彩色が施してあって、そのほんの少しの彩が、ぱっと画面を明るく照らし、一気に楽しい誕生パーティーの雰囲気を盛り上げています。

真ん中の3匹はもうすでに踊っていますしね!

 

お話のはじめ、森の家とそこに暮らすリゼッテおばあちゃん、たくさんの動物たちを紹介する場面では、色鮮やかに森の家が描かれ、紹介されるそれぞれが、ぜーんぶ細かく描き込まれています。

 

子どもたちは、リゼッテおばあちゃんがどれで、ベロはどれ。マウリがどっちでルリがどっち。おんどり、めんどりは画面手前に大きくいて、うさぎたちは後ろの方で遊んでる。やぎは屋根の上!!と、それぞれを見つけては確認し、楽しみ、お話の中にぐんぐん引き込まれていきます。

 

おばあちゃんの留守の間、パーティーの準備をする動物たちは、一生懸命だけれどいたずらで、失敗もして・・・まるで子どものお留守番のよう!子どもたちも共感するところがきっと多いでしょう。

 

大好きなリゼッテおばあちゃんを喜ばせようと準備する動物たちは、みんなウキウキしていて楽しそう。どの子も楽しさと自信に満ちた表情が、生き生きとしていて魅力的です。

 

マウリとルリが焦がしたケーキを運んでいく場面なんて、マンガのように愉快です。

 

「マウリとルリは、ケーキを かかえて、」

「はこぼうとしますが、おっと たいへん!」

「うんよく、ベロが やってきました。」

 

それぞれのテクストにコマ割りのマンガのごとく絵が付けられ、「おっと たいへん!」の2匹の表情といったら!「ぎゃー!!」という声が聞こえてきそうです。

 

 

そして夕暮れ。にぎやかだった森の家は夕闇の中にひっそりと静まります。

 

静かなページをぱっとめくると・・・大きな見開きいっぱいにお誕生パーティーのテーブル!!

びっくりして佇むリゼッテおばあちゃんと、嬉しそうに自慢げに座る動物たち!!

黄色い灯に囲まれたお祝いのテーブルは、鮮やかでとてもにぎやかです!!

前のひっそりとした夕暮れのページとの対比がとても効果的で、華やかさがとても際立って見えます。

 

さらに、楽しい食事とお芝居のあとの、あひるの池でのキャンドルサービスの場面はうっとりするような美しさ!!

 

深い夜の闇の中に、たくさんのキャンドルの灯が瞬き、その中に木や池、動物たちのシルエットが浮かび上がり、とても美しく幻想的な景色が描き出されています。

 

そして、最後のプレゼントの場面は、屋根裏部屋全体がプレゼントの箱を開けたよう!

星月夜に照らされた部屋の中は、明るく輝き、びっくり喜ぶリゼッテおばあちゃんと、籠の中にはきょとんとしたこねこたち!!

ベロもマウリもルリも嬉しそうに見守っています。

 

そして、最後の最後、みんなが寝静まったあと、1匹だけ起きているこねこ。

 

「なにを かんがえているのでしょうねーー。」

 

と、続きをにおわせるような余韻を残して、この『たんじょうび』のお話は終わります。

 

このこねこが何を考えているか、この続きは、また次回ご紹介しようと思いますが、この『たんじょうび』という絵本。本当に伸びやかで美しく、楽しさに満ちた絵本です。

大好きな人のお誕生日を祝う、ワクワクした喜び、絵本全体から暖かい愛情が伝わってくる生き生きとした幸福感に満ちた1冊です。

 

心をぱっと解放して、楽しく幸せな気分にさせてくれる、そんな絵本だと思います。

 

 

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 今回ご紹介した絵本は『たんじょうび』

ハンス・フィッシャー文・絵 おおつかゆうぞう訳

1965.10.1 福音館書店  でした。

 

 

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