絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『こねこのぴっち』

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好奇心旺盛なかわいいこねこのお話 

 

『たんじょうび』の最後に登場したこねこのお話です。

 

こねこのぴっち改版

ハンス・フィッシャー/石井桃子 岩波書店 1987年11月
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 読み聞かせ目安  中学年  10分

 

あらすじ

 

 りぜっとおばあさんのもとで暮らすねこのまりるりには、5匹のこねこがいます。みんなやんちゃでいたずらばかりしますが、その中で1匹、ぴっちだけはみんなと遊んだりしませんでした。

 

ぴっちは、みんなとは違うことをしたかったのです。

 

りぜっとおばあさんのところには、たくさんの動物がいます。

ぴっちは、おんどりのところへ行き、

 

「ぼくも りっぱな おんどりになりたいなあ!」

 

と思い、2本脚で歩く練習をしたり、「こけこっこう!」と鳴く練習をしたりします。

でも、おんどり同士がけんかをするので逃げました。

 

次はやぎのところへ行き、木の枝を2本頭に付け、やぎになってみます。

でも、やぎがおばあさんから乳を搾られているのを見て、嫌になりました。

 

次はあひる。

あひるたちと一緒に、ぴっちも池で泳ぎます。

でも、ぴっちはたちまち溺れてしまいます!

あひるのおばさんに助けられ、今度はうさぎたちとうさぎ小屋へ入りました。

 

ところが大変!!

りぜっとおばあさんが、ぴっちがうさぎ小屋にいるとは知らず、鍵をかけてしまったのです!

真夜中になると、森から黒い獣たちがやってきました!!

獣は怖くて、昼間池で濡れた体は冷えて寒くて、ぴっちは「にゃお、にゃお!」泣きました。

 

ぴっちの鳴き声を聞きつけて、いぬのべろがぴっちを探し出してくれました。

ぴっちは無事、りぜっとおばあさんの暖かい家に帰りました。

 

でもあくる日、ぴっちは病気に!

おばあさんの家の動物たちが、みんなお見舞いにきてくれます。

ぴっちのことが大好きなみんなは、とても心配しました。

 

ぴっちが、日一日と元気になると、動物たちはみんなで、ぴっちの快気祝いをしてくれました。

 

ぴっちは、もう他の動物になりたいとも、よそへ行こうとも思わなくなりました。

りぜっとおばあさんの家が、1番いいところだと思いました。

 

 

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 読んでみて…

 

前回ご紹介した『たんじょうび』の最後のページで、1匹だけ寝ずに起きていたこねこ、何か考えているようすで、じっとこちらを見ていたこねこのお話です。

 

 

masapn.hatenablog.com

 

 こねこの名前はぴっち

りぜっとおばあさんの家で暮らす、まりるりの子どもです。(福音館書店刊・おおつかゆうぞう訳の『たんじょうび』では、「リゼッテおばあちゃん」「マウリ」と「ルリ」となっていましたが、今回の『こねこのぴっち』は、『たんじょうび』の続編ではありますが、岩波書店刊・石井桃子訳で「りぜっと」「まり」「るり」となっています。このブログでは、それぞれ原文のママに従って表記します。)

 

好奇心旺盛で、兄弟とは違ったことがしたい。その気になって何にでもなりたがって挑戦してみます。

 

でも、やってみると・・・。嫌な目に遭ったり、とんだことになったり・・・。挙げ句の果てには、うさぎ小屋に閉じ込められ、寒くて怖い思いまでしてしまいます。

 

好奇心に任せて向う見ずなことをしてしまうのは、やんちゃな子どもそのものといった感じです。

 

小さなこねこのぴっちの好奇心は、体いっぱい使って表現されています。

 

表紙のぴっちは、大きな満月のあかりを背に座り、興味深そうな目でじっとこちらを見ています。深い青緑の夜空、輝く星・月、じっと眼差すこねこが神秘的で、物語に吸い込まれていくようです。

 

優雅に躍動する線描は、前作『たんじょうび』に引き続き、楽しく美しくお話を彩っていますが、今回の『こねこのぴっち』では、コントラストの付け方がひときわ利いていて、美しさとともに、好奇心旺盛なちいさなぴっちの姿を描き出すことと、お話に躍動感を与えることに、大きな効果を発しています。

 

自分とは違う動物になりたいと思うぴっち

おんどりとぴっちが並んで描かれている場面では、真ん中に堂々としたおんどりが色鮮やかに描かれ、その端に小さなぴっち

大小の対比が鮮やかで、ちいさなぴっちの子どもらしさと、それでも好奇心では負けない存在感の強さが際立っています。

おんどりと一緒に「こけこっこう!」と鳴く場面では、小さなを体を力いっぱいに伸ばし、体中で鳴いていて、全くおんどりに負けていません。

 

やぎのところでも、大きなやぎに小さなぴっち

木の枝を付けて、やぎになったつもりでいる、小さなぴっちのかわいらしさが際立ちます。

 

絵本全体も、絵と余白のコントラストの付け方が上手く、小さなぴっちと大きな動物、動物たちの静と動が、余白があることによって際立っているように思います。

 

そして、夜。闇の中、煌々と照る月に映し出されたきつねやふくろう、こうもりといった森の獣の黒い影。闇夜に月と獣の目だけ光って、ぴっちが感じる闇夜の怖さが際立っています。

 

怖い闇夜の次に現れるりぜっとおばあさんの家は、ほっとする安心感が満点!

余白の白が、清潔で安心なわが家を感じさせ、動物たちがお見舞いにきてくれる場面は、色鮮やかでこまごまとたくさんの動物たちが描かれ楽しそう!

 ぴっちの安心しきった気持ちと、りぜっとおばあさんの家の暖かさ、りぜっとおばあさんや動物たちの愛情が、明るく豊かに伝わってきます。

 

そして、みんながぴっちのために開いてくれた、快気祝いのパーティーの場面の美しさ!!

 

見開きいっぱいに繰り広げられるパーティーは、花々が咲き乱れ、たくさんの動物たちが、お料理したり、音楽を奏でたり、踊ったり・・・。見ているだけで心が晴れ晴れとする、楽しく美しいページになっています。

 

明と暗、絵と余白、大と小、さまざまなコントラストが効果的に絵本全体を彩って、お話の躍動感、ぴっちというこねこの好奇心やかわいらしさ、各場面の情景を豊かに描き出しているのです。

 

絵本から伝わってくる、幸福感・安心感は『たんじょうび』に、引き続きこの『こねこのぴっち』でも満点です。

 

この絵本を読んで、やんちゃなぴっちと一緒になって、冒険をした子どもたちは、ハラハラドキドキを経験した後、りぜっとおばあさんの家で心からほっとして、幸福感に包まれることと思います。

 

ぴっちと同じように、幼い子どもたちの周りには、いつも未知のものがいっぱいです。

子どもたちもみんなそれぞれ、日々いろいろな冒険をしては、ドキドキしたりハラハラしたりしていると思います。そんな子どもたちに、いろんな出来事があっても、最後は心から安心できる幸福感に満ちた絵本を読んで、暖かさで包んであげたいなと思います。

 

暖かく迎えてくれる場所があるからこそ、また冒険に出る勇気も出てきますしね。

 

 

今回ご紹介している『こねこのぴっち』(岩波書店刊)は、『たんじょうび』(福音館書店刊)とほぼ同じ大きさの大型本です。『ぴっち』は同じく岩波書店から、「岩波子どもの本」として、小型本でも出版されていますが、お手に取っていただけるなら、ぜひ大型本の方をお勧めします。小型本は小型にしたためか、絵が反転していたり、せっかくの余白がなくなって、構成がばらばらになってしまっていたりしていて、とても残念なことになってしまっています。小型本の方が、多く出回っているようですが、なんとか大型本の方で、伸びやかでコントラストの利いた、躍動感ある優美な絵とお話を、子どもたちに味合わせてあげてください。

 

 

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 今回ご紹介した絵本は『こねこのぴっち』

ハンス・フィッシャー文・絵  石井桃子

1987.11.25  岩波書店  でした。

 

 

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