「井の中の蛙」でも・・・
井戸の中しかしらなかったかえるが外へ出て、いろんなものに出会います。
読み聞かせ目安 中・高学年 10分
あらすじ
井戸の中に住む1匹のかえる。
井戸の中は、なかなか素敵な住まいでした。
きれいな水と、青空やお月様が見える丸い天井。
蝿や虫も飛び込んでくるので、食べ物も十分ありました。
でも・・・、ある時水がなくなって、虫もこなくなってしまいました!
かえるは、「せかいのはて」を見にいこうと、井戸の外へ出ていきます。
するとそこには、眩しい陽の光、強い風に吹かれる木々、咲き乱れるひなぎくの花。おいしそうな虫もいっぱい飛んでいました。
かえるは世界の果てに来たのだと思いましたが、小川で出会った牝牛に、「せかいのはて」は納屋のずっと向こうだと聞きます。
かえるが、小川に沿って進んでいくと、蒲の穂に群がるブラックバードの群れに出会いました。
ブラックバードは「せかいのはて」は、もっと遠い陸の終わりにあるといいます。
かえるはなおも進み、森へいきました。
森の動物たちは、自分たちの森が、とてもすばらしい世界だといいます。
井戸の外の世界が、楽しくなってきたかえる。
小川をなおも進んでいくと・・・、「ガアガア、グワッ グワッ」とものすごい数のかえるの声!かえるの美しい音楽が聞こえてきたのです!
かえるは、今まででいちばん大きく跳ねて、たくさんのかえるの合唱に加わったのでした。
読んでみて・・・
「井の中の蛙」のお話です。
といっても、作者のアルビン・トゥレッセルトが、荘子の「井の中の蛙大海を知らず」を踏まえているかどうかはわかりません。
井戸の中だけしか知らないかえるが、井戸の外へでて、もっと広い世界を知っていくお話ですが、明るく軽快にすがすがしくお話が進み、荘子の説教臭さはない、楽しいお話になっています。
井戸の中だけが、世界のすべてだと思っていたかえる。
春の日差しや、睡蓮の花、他の生き物や、自分以外のかえるがいることも知らなかったかえるが、外の世界へ出てみて、いろんなものに出会い、面白さや楽しさ、美しさ、そして喜びを知っていきます。
ロジャー・デュボアザンの陽気で伸びやかな絵が、外の世界を知るかえるの喜びを、軽快に見せてくれます。
カラーのページと、モノクロに緑の彩色が施されただけのページが、交互に出てくるのですが、モノクロ緑のページは、かえるの身体の伸びやかさが、画面からはみ出してしまいそうなほど、十分に表現されています。しなやかで強い線が、かえるの伸縮自在な身体を生き生きと伝え、好奇心いっぱいの目、どことなく思慮深そうで、なんとなく人間臭い顔つきも、ユニークで洒落ています。
一方、カラーページは、目が覚めるような鮮やかさ!
井戸の底から遠くのぞく青い空、お月様が微笑む夜空の美しいこと!
井戸に降りてくる虫たちも、まるで散る花びらのようで夢幻的です。
井戸の外の世界も、もちろんステキ!
ひなぎくやさまざまな花が色とりどりに咲き乱れ、森の緑は色濃く暖かで、かえるが最後にたどり着いた湖は、ちょっと神秘的で興味惹かれます。
美しい色彩と、斬新な構図・構成が、お話に軽快な躍動感を与えているようです。
「井の中の蛙」だけど、「井の中」に凝り固まっているのではなく、伸びやかに柔軟に外へ出ていくかえるは、いつも上機嫌。呑気で楽天的な性格も魅力的です。
屈託のないかえるは、最後は仲間に出会い、群れの中へ。
かえるの大群も、1匹1匹それぞれ表情やポーズが違っていて、どの子も楽しそう!
でも・・・どれが主人公の「井の中の蛙」クンだったかは、もはやわかりませんww。
明るく軽快な楽しい絵本。梅雨空をすがすがしくしてくれそうな、素敵な絵本です。
今回ご紹介した絵本は『せかいのはてってどこですか?』
アルビン・トゥレッセルト文 ロジャー・デュボアザン絵 三木卓訳
1995.7.20 童話館出版 でした。
せかいのはてってどこですか? | ||||
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