豊かで楽しい農場の営み
農場の暮らしが細部まで楽しく描かれた絵本です。
読み聞かせ目安 中・高学年 ひとり読み向け
あらすじ
ねこのオーランドーは、息子が船乗りになって農場の経営に手が回らなくなってしまったバターフィールドさんの農場を買いました。
買った農場は荒れ放題!
大工さんやペンキ屋さんに頼んで、傷んだところを直します。
納屋はすぐにきれいになりましたが、大変だったのは動物たち。
客間のソファーに寝そべる豚や、台所の流しで遊ぶアヒル、お客様用の部屋を占領するミツバチなどなど、動物たちが母屋に入り込んで、好き放題に暮らしていたのです。
どうにかこうにか手をつくし、オーランドーと奥さんのグレイスは、動物たちをそれぞれの住処に戻しました。
本来の住処に戻ったら、動物たちはやっぱり快適で、それぞれの動物らしく暮らしはじめ、オーランドーたちに乗せられて、それぞれの仕事をはじめました。
季節は移り、草刈りの時期に。
草を刈り、馬のバルカンがコンベヤーを回します。
羊の毛を刈ったり、できた野菜を市場へ売りにいったり、忙しくも楽しい暮らしです。
やがて、家畜と野菜の品評会の日がやってきました。
入賞したら、王様から商品がもらえます。
「うちでとれるものは、ぜんぶだそう」
オーランドーが決めたので、農場のみんなは、いっそう野菜と家畜の世話に励みました。
そしていよいよ品評会の日。
なんと、オーランドーの出した物は、みんな一等賞の金メダルをもらったのです!
農場をはじめたばかりのオーランドーは、嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。
麦刈りの季節。
あんなに荒れていた農場も、今年は大豊作です。
果物もたくさんとれました。
冬になると、動物たちはふかふかの冬毛に包まれ、子猫たちはスケートをして遊びます。
やがて雪が消え、子羊が生まれる季節になり、小麦が芽をだし、オーランドーは次の計画を練るのでした。
読んでみて・・・
『ねこのオーランドー』の続きのお話です。
堂々とした立派な雄猫のオーランドーが、農場を買い営んでいくお話です。
オーランドーと奥さんのグレイスにとっては、はじめの農場経営。
はじめのうちは、母屋で好き放題に暮らす動物たちに手を焼きますが、知恵を働かせ、上手に動物たちを誘導して、それぞれの住処へ戻し、それぞれの仕事へと誘います。
無理やり追い立てるでなく、動物たちそれぞれの性格に合わせて、動物たちが気持ちよく暮らしながら働いていけるようにうながしていく手腕はなかなかのものです。
見栄っ張りな馬のバルカンは、みんなで髭をとかしたり、蹄を磨いてピカピカにして。立派な身なりになったバルカンは、すっかり得意になって、いいところを見せようと仕事にかかります。
客間に寝そべっていた豚たちも、もとはとってもきれい好きですから、豚小屋をすっかりきれいにしてもらえたら、進んで小屋に帰ります。
トリや牛が、たくさん卵やミルクを出してくれるように、楽しい音楽の仕掛けも小屋につけ、農場はどんどんきれいに豊かになっていきました。
オーランドーとグレイスの子どもの3匹の子猫たちも、いつもいたずらばかりしていますが、農場のお手伝いも楽しそう。
“ぐうぐう ぐうたら ジョセフどん
夢で えものを つかまえた
そろそろ おきて ひと仕事
羊さがしに いっといで
それでも ぐうすか ねてるなら
こわいぞ こわいぞ ねこのつめ”
なんて、遊び半分でふざけた歌を歌いますが、この歌がなんとも効き目のある魔法の歌で、犬のジョセフはたちまち羊さがしに出かけていったりと、子猫たちもしっかり農場のお手伝いをしていきます。
オーランドーが、動物たち全員に目覚まし時計と日めくりカレンダーを渡したら、朝がくるとそこらじゅうでいっぺんに、ジンジンベルが鳴ったり、カレンダーをめくる音がしたり、賑やかにそして規則正しく朝がはじまるさまも、ユーモラスで楽しい農場のようすが伝わってきます。
こうしてはじまったオーランドーの農場は、実りの季節になると、さっそく結果を出し、なんと品評会で、出品したものすべてが一等賞を獲得します。
この場面もユーモアはいっぱいで、グレイスが出品する豚に、青い大きなリボンを結んでやると、それがとてもすてきに見えたので、他の野菜や動物にも、山羊や羊や、カボチャやキュウリやジャガイモにも、きれいなリボンをかけてやったり!
一等賞を取った動物たちが得意になって、そっくりかえったまま、しばらく体が曲がらず、仕事ができなくなったり!
愛らしいユーモアがあふれています。
動物たちを養う農場を、本来動物であるねこのオーランドー一家が営んでいるのですが、オーランドーの農場経営は、もとの持主である人間のバターフィールドさんもいっしょに、その他、大工さんやペンキ屋さん、農夫たちなどなど、たくさんの人間たちとともに手を合わせて行われ、人間は人間らしく、ねこはねこらしくも人間らしく⁈テキパキ生き生きと働くさまが丁寧に描かれていきます。
作者のキャスリーン・ヘイルが、実際農場で働いた経験もあるそうで、農場での出来事は具体的で嘘がないからでしょうか。ねこの営む農場も本当らしく⁈自然に見えてくるから不思議です。
他の動物たちも、それぞれの動物がそれぞれの動物らしく描かれながら、上手い具合に人間の(オーランドーたちの)生活様式と組み合わさっていて愉快です。
季節の移り変わりとともに営まれていく農場の様子も、とても細かく詳しく描かれていきます。
草刈り、羊の毛刈り、麦刈り、果物の収穫、次の季節のための畑の準備、子羊の誕生etc。収穫したものを市場で売る様子も、賑やかで楽しそう。
人もねこも、農場の動物たちも、畑の小さな虫たちまでも、みんながそれぞれの生を謳歌しています。
各場面が本当に細部まで詳しく、盛りだくさんで描かれているので、読み飽きるということない絵本です。あんまりたくさん細かいところまで描かれているので、残念ながら学校での読み聞かせには向きませんが、お家でじっくり、すみからすみまで見てもらいたい絵本です。
主人公のねこのオーランドーの、雄々しく立派な姿も、前作に引き続き健在。
マーマレード色の毛並みも美しい肢体に、野性味のあるきりっとした目。堂々として紳士的な頼れる雄猫です。
奥さんのグレイスも、見るからに優雅で女性らしく、しなやかでお洒落。
二匹が寄り添って座っているときは、必ずしっぽの先が触れ合っていて微笑ましく、夫婦仲の良さが伝わってきます。
石板刷りの色彩豊かな絵が、明るく輝くように楽しい農場の暮らしを、隅から隅まで描きあげている、ステキな1冊です。
今回ご紹介した絵本は、『ねこのオーランドー農場をかう』
キャスリーン・ヘイル作・画 脇明子訳
1996.11.5 童話館出版 でした。
ねこのオーランドー農場をかう | ||||
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