絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ものいうほね』

*当ブログではアフェリエイト広告を利用しています。

春爛漫のかわいらしい絵本

奇想天外なお話を表情豊かに描きます。

            

読み聞かせ目安  高学年  15分

あらすじ

うららかな春の日。

豚の女の子のバールが、学校からの帰りに寄り道していると、森で不思議な声を聞きました。

 

声の主は、なんとほね!

木の根元のすみれの花の中にあるちいさなほねが、ものをいっているのです‼

バールはびっくり仰天。

 

ほねは、魔女が落としていったものでした。

バールは、ほねを家へ連れて帰ることにしました。

ほねも魔女といるより、かわいいバールといるほうがいいと承知しました。

 

バールとほねが楽しく歩いていると、道中なんと追いはぎに出会ってしまいます!

追いはぎはバールに、バッグを渡せと迫りますが、バッグからはほねの唸り声!

へびのシューシューいう音や、ライオンの声まで聞こえてきました。

追いはぎは、あっという間に逃げてしまいました。

 

しばらく行くと、今度はきつねがやってきました。

ほねはワニのふりをして、ガツガツ音を立てましたが、ずる賢いきつねは騙されません。ものいうほねに気付き、「これはしたり!」とバールとほねを捕まえ、家に連れて帰りました。

 

きつねの家では、バールを料理する準備が進みます。

バールは、怖くて悲しくて震えるばかり・・・。

と、突然ほねが、

 

「イーブラム・シビブル!」

「ジブラッケン・シビブル・ディグレー!」

 

と魔法の呪文をとなえました。

すると・・・きつねがぐんぐんちいさくなっていくではありませんか!

ずっと魔女と暮らしていたほねは、知らず知らずのうちに、魔法の呪文を覚えていたのです。

ほねがなおも呪文を続けると、とうとうきつねはねずみくらいにちいさくなって、穴の中へ逃げてしまいました。

 

バールとものいうほねは、無事家に帰り、幸せに暮らしました。

 

 

読んでみて・・・

なんてかわいい絵本♡

春の野原でみる夢のような、かわいらしく美しい絵本です。

 

主人公の豚の女の子バールは、全身ピンク色。

ワンピースも、頭に被ったボンネットも、バッグの花模様と内布もピンク。

全部ピンク色の可憐な女の子です。

 

どのページも、春のうららかな暖かさに満ちています。

花咲く野原は、蝶やミツバチが舞い春爛漫。

街中も、追いはぎが出る野原まで、桜満開の美しさですw。

 

ものいうほねに出会い、絶体絶命のピンチから救われるという、奇想天外なお話ですが、学校からの帰り道、百花繚乱の春を満喫して歩くバールの、心地よさそうな顔を見ていると、見ている方も自然とその心地よさに身をゆだね、お話の中にすっと入っていけます。

 

街中で、空飛ぶ鳥をうっとりと眺めるバール。

興味津々で、大人たちの仕事を見つめたり、花々が咲き乱れる森のなかで、自分も花になったかのような気分に浸るバールの表情は、おっとりとしていながら、とても豊かです。

ものいうほねに出会ったときの驚いた顔。

ほねが、いろんな音を出せるのに感心した顔。

きつねの家でおびえる顔。

ほねといっしょに慰め合う顔。

その時々でくるくると、様々な顔を見せてくれます。

 

バール以外の登場人物(動物?)も表情豊かです。

気難しそうな顔した、清掃員のやぎのおじさん。

ひょうひょうとした顔の、花売りのおんどり。

せっせと忙しそうに働く、豚と犬のパン屋さん。

蹄鉄投げに興じる豚と馬のおじさんたちは、茶目っ気たっぷり。

それぞれの動物たちが、さもありなんといった風で、それぞれの職に就き、動物たちの世界が、いかにも現実にありそうな雰囲気で、自然に楽しく描かれていきます。

 

バールを襲う、3人の追いはぎもユーモラスです。

お化けみたいなマントを着て、ハロウィンの仮面を被って、怖いんだかおかしいんだか。恐ろし気に、ピストルや短剣をかざしますが、ものいうほねの出す音に驚いて、あっけなく退散してしまいます。

そのときのバールの、してやったりの表情も愉快です。

 

そして、バールを食べようとやってきたきつねの、ずる賢そうなこと!

にやりと笑う口の中は、恐ろし気な牙がきらり。

ものいうほねにも騙されず、ほねもバールももろとも連れ帰り、ちゃくちゃくと料理の準備を整えます。

でも・・・ものいうほねの魔法の呪文に、あっけなくちいさくされたときの、情けない顔!

 

どの動物たちも、目の点ひとつで下心や恐怖心、心地よさや忙しさ、さまざまな表情が巧みに表され、奇想天外なお話なのに、それがごく自然に受け入れられるよう、お話を支えているのです。

 

絶体絶命のピンチを迎えるハラハラドキドキの場面でも、どこか陽気さがずっと漂い、春のうららかな気配が全体を覆っている、楽しく生き生きとした明るい絵本です。

瀬田貞二の軽妙な訳文も、お話に心地よいリズムを与えています。

明るくてうららかで楽しい、ずっと眺めていたくなる、とってもかわいらしい1冊です。

 

今回ご紹介した絵本は『ものいうほね』

ウィリアム・スタイグ作 瀬田貞二

1978.6.30  評論社  でした。

ものいうほね

ウィリアム・スタイグ/瀬田貞二 評論社 1978年06月
売り上げランキング :
by ヨメレバ

ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。

いつもありがとうございます。

にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

絵本ランキング
絵本ランキング

 

このブログに掲載している著作物の書影・書誌データ等は、版元ドットコム・各出版社ホームページ・個別の問い合わせ等を経て、使用の許諾を確認しています。