天真爛漫な絵本
幼い子の健やかな明るさが伸びやかに描かれた絵本です。
読み聞かせ目安 低学年 2分
あらすじ
卵から出てきたあひるのこ。
卵から出てきたひよこのこ。
あひるのこが、
「ぼく さんぽに いこう」
というと、ひよこのこも、
「ぼくも」
あひるのこが、
「ぼく あなほり しよう」
というと、ひよこのこも、
「ぼくも」
ひよこのこは、何でもあひるのこのまねをします。
みみずをみつけたり、ちょうちょうを捕まえたり、泳いでみたり。
でも泳ぎは・・・ひよこのこにはできません!
あひるのこが助けてやりました。
それからあひるのこは、泳ぎ直しをはじめますが・・・ひよこのこは、もう泳いだりしませんでした。
読んでみて・・・
幼い子どもそのものといった感じの、ひよことあひるのこ。
ひよこのこは、ちょっとだけ(ほんの一瞬?)早く生まれた、あひるのこのまねばかりしています。卵から生まれる瞬間から、散歩に、穴掘り、みみずやちょうちょを捕まえるのもなんでも、あひるのこと同じようにしたがります。
小さな子どもが、お兄さんお姉さんのまねをしたがるのと同じです。
いつもひよこのこと同じように、自分より大きな子や大人のまねをして、何でも覚えていくということをやっている子どもたちは、すぐにひよこのこに気持ちを重ねることができるでしょう。
あひるのこも、年下の子についてこられる子どものようすを、よく表しています。
なんでもかんでもまねされて、ずっと後をついてくるひよこのこを横目で見ながら、ひとつまねされれば、またひとつ違うことをやってみせ、またつぎ、またつぎと、大きな子の優越を示していきます。
嬉しいような、ちょっとした負けん気のような、微妙な表情がどの場面でもにじみでていて、とてもこの位置にいる子どもらしさが出ていて、微笑ましく映ります。
テクストはごく簡単で、お話は無駄なくずんずん進んでいきますが、絵がテクストに書いていないことも、雄弁に語ります。
はじめのページは、おんどりとめんどりが、目を座らせてじっとして・・・何をしているんだろう?次のページを開くと、テクストはまだ何も語りませんが、ちょうちょに気をとられ、動いた2羽の足元には、2つの卵が!
じっとして、卵を温めていたんだなとわかります。
卵から出てきたひよことあひるのこの表情も、とても豊かでくるくると変わっていきます。
目に映るもの出会うもの、全てに好奇心の向くままに、目をくるくると動かして向かっていくようすは、もう楽しくてしかたがないといった感じ。
新鮮な喜びが、弾けるようです。
白地にピンクや黄色、オレンジ色の花やちょうちょ、虫たちも、濁りのない明るく朗らかな色合いで描かれ、ひよことあひるのこのウキウキした新鮮な気分が、どのページも画面全体から伝わってきます。
ひよことあひるのこの表情はもちろん、背景の花や虫たちも、どこか飄々としていて、とぼけた愉快な味わいがあって、気さくな感じを与えています。
あひるのこが何かして、ひよこのこがまねをしてを繰り返すテンポよいお話は、最後に急変!
ひよこのこはあひるのこのように、勢いよく水に飛び込みますが・・・同じように泳ぐことはできません。
あひるのこに助けられ、ようやっと岸に戻ったひよこのこですが、ぐずぐずいじけることもなく、あっけらかんと、
「ぼく やーめた」
ちょうちょを追いかけはじめます。
この潔さ、屈託のなさ。
これもまた、いかにも子どもらしく、伸びやかで健やかで明るくて自由です。
ごく単純なお話ですが、天真爛漫で、読んでいると心が解放されていくような、健全な心地よさのある楽しい絵本です。
表紙見返しにもいっぱいに、ひよことあひるのこが、みみずやちょうちょを捕まえて遊ぶ姿が描かれていて、これだけでも十分に楽しくなってくる、朗らかさいっぱいの素敵な1冊です。
短いので、他の絵本との組み合わせにもピッタリです。
今回ご紹介した絵本は『ひよことあひるのこ』
ミラ・ギングズバーグ文 ホセ・アルエーゴ エーリアン・アルエーゴ絵
さとうとしお訳 1983.4.5 アリス館 でした。
ひよことあひるのこ改訳新版 | ||||
|
ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。