絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

みつけたものとさわったもの

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明るく楽しくしなやかにたくましく

かわいい子犬の骨争奪戦!?

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読み聞かせ目安  低学年  8分

あらすじ

ナップとウィンクル、2匹の犬が、穴を掘っていると・・・1本の骨をみつけました。でも・・・最初に見つけたナップが、

 

「このほねは、ぼくのだよ」

 

最初に触ったウィンクルが、

 

「このほねは、ぼくのだよ」

 

お互いに譲りません!

2匹で骨をくわえ、歩いていくと、荷車の車輪をぬかるみに取られて、困っている農夫に出会いました。ナップとウィンクルは農夫に、骨がどっちのものか聞きました。

農夫は、ぬかるみから荷車を引き出す手伝いをしてくれたら、どっちの骨か考えてくれるといいます。

2匹は、一生懸命農夫を手伝いましたが、農夫は干し草を放り投げて、行ってしまいました。

 

するとそこへ、立派なひげのやぎがやってきました。

2匹は、どっちの骨かを、やぎに聞いてみました。

やぎは、干し草をくれたら、教えてやるといいます。

ナップとウィンクルは、やぎに干し草をやりましたが、やぎは教えてくれませんでした。

 

次に2匹は、床屋の見習いに出会いました。

見習いは、毛を刈らせてくれたら、どっちの骨か教えてくれるといいます。

ナップとウィンクルは、毛を刈らせてやりましたが、床屋は教えてはくれませんでした。

 

次は足の長い大きな犬です。

ナップとウィンクルは、大きな犬に聞きました。

すると・・・、大きな犬は、

 

「これは、なかなか けっこうなほねじゃないか」

 

といって、骨をくわえて門を出ていこうとするではありませんか!

ナップとウィンクルは、大きな犬に飛びかかり、必死になって骨を奪い返しました。

 

その後ナップとウィンクルは、2匹で仲良く骨をくわえ、もう何もいわなくなりました。

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読んでみて・・・

伸びやかで明るく楽しい絵本です。

 

真っ赤な表紙には、黄土色の2匹の犬。

表紙をめくると、またまた2匹の犬が、画面いっぱいに伸びやかに描かれています。

さらにページをめくると、またまた2匹の犬。

愛らしく屈託のない表情のナップとウィンクルが、次々と現れてきます。

お話がはじまると、この2匹が何やら楽し気に穴を掘り・・・。

もうこれだけで、これから楽しいお話がはじまるんだなと、ワクワクしてきます。

 

お話はごくシンプルですが、画面いっぱいの生気溢れる絵が、お話を十分に盛り上げて見せてくれます。

赤、黒、白、黄土色、4色だけのシンプルな色遣いが絶妙で、場面に合わせて配分される少ない色数が、かえって展開に躍動感を与えています。抑えた色味がかえって暖かみも与え、和やかな楽しい雰囲気を作り出しているようです。

 

好奇心旺盛な2匹の子犬ナップとウィンクルの、ページごとにくるくる変わる表情の豊かさも魅力的。他の登場人物や動物たちも、とても個性豊かです。

 

片側画面いっぱいに大きく描かれた立派なやぎは、ぐるりと巻いた強そうな角と、ギラリと光る大きな目をしていて、大きな顎でわしゃわしゃと干し草を噛む姿は、とても貫禄があり、一見とても思慮深そうな雰囲気があります。

でも・・・なんだかちょっとずるそうな、何かを企んでいるのがプンプン感じられます。

 

髪の切り方を習ったばかりで、切ってみたくてしょうがない見習いの床屋さん。仕事に一途でありすぎる床屋さんと、一途にどっちの骨かを知りたがっているナップとウィンクルとの、なんだかちょっとちぐはぐなやり取りもユーモラスです。

 

そして最後に出逢った、大きな犬。

一見優しく親切そうに見えますが、本当はとってもズルいヤツ。相談にのるふりをして、いつの間にか勝手に骨を持ちだしてしまいます!

愛らしく無邪気だったナップとウィンクルも、もうここではかわいらしいばかりではいられません!勇猛にも、大きな犬に跳びかかり、噛み合い、掴み合い、大迫力の骨争奪戦でを繰り広げます。

とてもスピード感溢れる場面ですが、ここでも限られた4色の色を効果的に配して、大乱闘が実にダイナミックに描かれていきます。

 

テクストも、余計な説明などなくすっきりとしていて、トントンとお話が気持ちよく前へ進みます。

すっきりとした絵と語りで、お話の中に見ている者をぐんぐん引き込み、暖かくユーモラスな絵が、テクスト以上にお話を語り、ごく単純なお話でも全く飽きさせません。

 

簡単に騙されてばかりいた、幼いナップとウィンクルも、お話の終わりではすっかり成長し、大きな相手と真っ向から立ち向かったり、世間というものを知り、仲間と分け合うという大事なことを知り、全てを納得して終わるところも、ストンとお話が落ち着くところに落ち着いて、読む者に安心感を与えます。

いろんな経験をしながら、しなやかにたくましく心と体を成長させていく子犬のナップとウィンクルは、幼い子どもそのもの。子どもたちも共感するところがきっと多いことと思います。

 

すっきりと明るく楽しく、子どもが成長していく姿を見せてくれる絵本。

読んでとても気持ちのいい絵本だなと思いました。

 

今回ご紹介した絵本は『みつけたものとさわったもの』

ウィルとニコラス作 晴海耕平訳

1997.11.10  童話館出版  でした。

みつけたものとさわったもの

ウィリアム・リプキンド/ニコラス・モードヴィノフ 童話館出版 2018年12月
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