はじめて知る雪の楽しみ
『とらたとまるた』のとらたがはじめての雪遊び!
はじめてのゆき | ||||
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読み聞かせ目安 低学年 5分
あらすじ
ある朝のこと。トラの子とらたが熱いミルクを飲んでいると・・・
「あれ?」
外は、どこもかしこも真っ白!
雪です‼
とらたは、運動靴を履いて雪のなかへ。
足が雪に埋まってしまったので、長靴に履き替えました。
雪は、柔らかくふわふわ。座ってみると・・・おしりごと埋まってしまいました!
家へ駆け込み、ストーブでおしりを暖め、セーターを着て、また表へ。
雪を両手いっぱいに乗せると、あまりに冷たくて、またストーブへ逆戻り!
今度は、手袋をして表へ行きました。
すると・・・。
屋根の雪が、とらたの上へ落ちてきて、
「ひどい ひどい」
また、ストーブへ逆戻り。
帽子を被って出かけます。
すると・・・。
「とらたちゃーん、ゆきがっせんだよーー」
雪の玉が飛んできました。
見ると、ちっちゃな雪だるまです。
雪だるまは、雪の上を転がって、みるみる太って大きくなります。
とらたは、大きくなりすぎて転んだ雪だるまを、助け起こしたり、雪だるまが、とらたのシャベルで雪をすくって食べ、ますます大ききなっていくのを見たり、雪だるまと楽しく過ごします。
でも、いつしか空は晴れ渡り、お日様の熱で雪だるまは、みるみる痩せていきました。
「さあ うちへ かえろう。」
雪だるまは、バケツとシャベルをとらたに返し、垣根の向こうに帰っていきました。
「さようなら」
雪だるまを見送ったとらたは、家へ帰り、雪だらけのセーターと手袋と、帽子を脱いで、ストーブで乾かしました。
読んでみて・・・
以前ご紹介した『とらたとまるた』のとらたが、はじめて雪遊びをするお話です。
はじめての雪。
いつも見慣れた景色が、すべて真っ白な雪に覆われた、はじめて見る銀世界。
ふわふわで冷たい雪の感覚。
はじめて雪というものを知った子どもの、驚きと喜びが、絵本いっぱいにあふれています。ひとつひとつ、表に出ては家に帰り、出ては帰りしながら、そのつど雪への新しい発見をし、喜び味わう新鮮な感覚を味わうとらた。
降り積もった雪は、すべてを覆い隠し、見えなくしてしまうもの。
雪の上では、運動靴は役に立たないこと。
雪はとっても冷たいこと。濡れてしまうこと。
とらたは、はじめての雪を、ひとつひとつ具体的に体感しながら、実感をもって認識していきます。転んだり、頭から雪を被ったり!その姿はとても愛らしく、またユーモラスです。
はじめ、小さな雪の玉として飛んできた雪だるまが、雪をまとうごとに、どんどん大きくなっていく面白さ。とらたと雪だるまの交流は、もちろん子どもの空想の遊びですが、この絵本では、子どもの実感と空想が、ごくごく自然に融合する形で描かれ、何の違和感もなく、ごく自然にお話が進んで行きます。
雪だるまが、お日様の熱で溶けて消えてしまう場面も、とらたと雪だるまの間に、へんな別れの感傷などもなく、実にあっさりと
「さようなら」
でおしまい。
はじめての雪への感動と、楽しい思いだけが残る屈託のなさ。
驚き、喜び、楽しんで、変に執着はしない。
子どもが、日々経験する新しいものとの出会いって、こういうことなのかなと感じます。
テクストも、無駄がなくすっきり。
お話が、前へ前へポンポンと、まるで雪の玉が弾むように進んでいきます。
絵も、『とらたとまるた』に引き続き、白地に青、赤、黄、黒だけの、無駄のないすっきりしたもの。
細く伸びやかな線が、軽やかで躍動的な子どもの心と体の動きを、よく表しているようです。全体的に、余白がたっぷり取られているのも、雪景色を感じさせるのにぴったり!
表紙見返しは、薄いグレーの地に淡雪がいっぱいで、「あ!雪だ‼」と、まるで雪が降りはじめる空を見上げているようです。
そして、雪だるまが溶けてしまう場面は、目の覚めるような、真っ青な空を思わせるブルーが、実に鮮やか‼ お日様に照らされた、雪景色のまぶしさを、はっとするほど感じさせます。お日様の熱で、あんなに大きかった雪だるまが、小さく小さくなってしまいますが、眩いばかりのこの空色は、センチメンタルな気持ちなどになることなく、雪への好奇心あふれる思いのまま、お話を進めるのに、一役買っているようです。
明るくて伸びやか。はじめての雪を楽しむ子どもの、弾んだ気分が生き生きと、気負ったところなどみじんもなく実に軽々と、リズム感あふれる絵とテクストで、見事に描かれた絵本だなと思いました。
年末年始、寒波がやってくるそうです。どこかでとらたのように、弾むような新鮮な思いで、はじめての雪を楽しむ子が、いるかもしれませんね。
今回ご紹介した絵本は『はしめてのゆき』
中川李枝子作 中川宗弥絵
1970.2.1 福音館書店 でした。
はじめてのゆき | ||||
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