絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ベンジーのふねのたび』

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気さくで明るいお友達のような絵本

子どもがすっと心を寄せ楽しめる絵本です。

            

読み聞かせ目安  中学年  10分

あらすじ

犬のベンジーは、リンダとジミーとお父さん、お母さんの4人家族と一緒に暮らしていました。

夏休みには毎年、みんなで旅行に出かけます。

でも・・・この年はベンジーだけお留守番になってしまいました。

家族はベンジーが乗ることのできない船の旅に出ることになったのです。

ベンジーはメアリおばさんに預けられ、港で家族を見送りました。

ベンジーはしょんぼり。

 

そんな翌朝のこと。

メアリおばさんと港を散歩していたベンジーは、家の人たちが乗っていったのと、そっくりな船をみつけます(もちろん違う船ですが)。

ベンジーは、首輪を外しいちもくさん!

船に乗り込んでしまいました‼

 

すると・・・乗り込んだ船には、ジンジャーという気性の粗い猫がいて、ベンジーは追い立てられ、逃げ回ることに!

しばらくは、倉庫でじっとしていなければなりませんでした。

 

やがて船は出航。

お腹をすかせたベンジーは、ジンジャーに見つからないよう気を付けて調理場へ。

やさしいコックさんがハンバーグをくれました。

でも・・・ジンジャーに見つかってしまいます!

またまた盛大な追いかけっこの始まりです‼

とうとう船長さんに怒られて、ベンジーはコックさんのもとへ。

ジンジャーはマストの上へ逃げました。

 

あくる朝、ベンジーが甲板へでてみると、「みゃー みゃー」。

上の方から鳴き声が聞こえます。

見るとジンジャーが、マストのてっぺんから降りられなくて、一晩中鳴いていたのでした。

ベンジーは航海士さんを呼んで、ジンジャーを助けてあげました。

ジンジャーはそれからもう、ベンジーを追いかけ回さなくなりました。

 

2週間後。

船はベンジーの町の港へ戻りました。

ベンジーはお家へ向かっていちもくさん!

家の人たちはみんな、ベンジーをみて大喜びです。

また家族そろって楽しい暮らしに戻りました。

 

2・3週間後。

ベンジーが子どもたちと、港を散歩していると、ベンジーが乗っていた船が、岸を離れていくところでした。

甲板には、コックさんとジンジャーが!

ベンジーは大喜びで飛び跳ねました。

                      

読んでみて・・・

とても気さくで明るくて、子どもたちの心にすっと寄り添える絵本です。

 

4人家族と一緒に暮らすベンジーは、とても明るく元気で楽天的な性格の犬。

いつも家族に愛され大事にされ、旅行も一緒。

でも、今回はお留守番です。

お留守番になるいきさつが、お父さんお母さんと子どもたちの会話で、丁寧に語られ、絵もお話の順を追って物語るように描かれているので、読んでいる子どもたちは、幼い子でも、すんなりと状況が理解できるようになっています。

絵もテクストも、ベンジーに寄り添って語られ、お話がベンジー目線で進んでいくので、子どもたちはすっと無理なく、ベンジーの気持ちを共有することができます。

 

お留守番でしょんぼりなベンジーですが、翌朝になると状況は一変。

家族の人たちが乗ったのとそっくりな船をみつけて、喜々として乗り込んでいきます。

この場面は、しょんぼりなページから開いた見開きで、事態がぱっと一変し、ベンジーの様子も静から動へ一変する場面展開の仕方が実に鮮やかで、実に上手い描き方になっているなと思います。見ている子どもたちの心も、はっと踊ることでしょう。

 

でも、期待いっぱいで乗った船には、おっとりとしたベンジーとは真逆の性格の、気性の粗いジンジャーという猫がいて、追いかけっこがはじまり、てんやわんやの大騒動!

賑やかな場面展開ですが、アウトラインだけのような、すっきりと単純化された絵と、あっさりと事実だけを語る簡潔なテクストが、淀みなく真っすぐにお話を進めてくれるので、すいすいと読み進めていくことができます。

単純な絵なのに、優しいベンジーと気の強いジンジャーの性格は、見事に描き分けられ、コックさんや船長さん、航海士さんなど他の登場人物も、それぞれのチャーミングな性格がよくわかるよう、描き分けられています。

 

すったもんだの後、ジンジャーともすっかり仲良くなったベンジーですが、家族の家のある町へ戻ったときの喜びよう。

いちもくさんに家へ駆け戻っていくさまは、お父さんお母さんのもとへ、喜び駆け戻る子どもそのものといった感じです。

 

抽象化など全くないごく簡単な絵とテクストが、ベンジーという犬、ジンジャーという猫を生き生きと描き出し、そして犬や猫を通して、子どもそのものをさらりと描き上げる。何の気どりもない、すっきりさっぱりとした絵本ですが、具体的なものだけを単純に描くことによって、生命感や心情までも描きあげているすばらしい絵本だなと思いました。

 

子どもがすんなりと受け入れて、ベンジーの目線を共有できる楽しい絵本です。

                     

今回ご紹介した絵本は『ベンジーのふねのたび』

マーガレット・ブロイ・グレアム作 渡辺茂男

1980.4.20  福音館書店  でした。

ベンジーのふねのたび

マーガレット・ブロイ・グレアム/わたなべしげお 株式会社 福音館書店 1993年01月28日頃
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