ピーターといとこのベンジャミンバニーのおはなし
『ピーターラビットのおはなし』の続編、ゆかいな子うさぎたちのお話です。
ベンジャミン バニーのおはなし |
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読み聞かせ目安 中学年 10分
あらすじ
子うさぎのベンジャミンは、いとこのピーターのところへ遊びにいきました。
けれどもピーターは、元気がありません。
マクレガーさんに、新しい青い服を取られてしまったからです。
ふたりは、服を取り返しに、マクレガーさんの畑へいきました。
ちょうどマクレガーさんは奥さんと出かけていたのです。
ピーターは、服を取り返し、ふたりは玉ねぎをいっぱいお土産にして帰ります。
ピーターは、辺りの様子をうかがいながら、恐る恐るいきました。
途中でねこがいました。
ベンジャミンは、自分とピーターと玉ねぎに、カゴを被せ、隠れました。
そこへちょうどねこがやってきて、そのかごの上に座り込んでしまいました!
なんと5時間も!!
夕方になってもまだ、ねこはかごの上に座っています。
そこへ、ベンジャミンのお父さん、ベンジャミン・バニー氏がやってきました。
息子を探しにきたのです。
バニー氏は、ねこに飛びかかり、ひっつかんで毛をむしり、ねこを温室に閉じ込めて、鍵までかけてしまいました。
バニー氏は、息子のベンジャミンとピーターにお仕置きし、家に帰りました。
マクレガーさんは、留守の間に変なことが起こっているのに気がつきました。
畑にたくさんの小さな木靴の足跡があること。かかしの服がなくなっていること。
そしてなぜか、ねこが温室に入り込んで、自分で?外から鍵をかけていることに。
ピーターのお母さんは、ピーターが服を取り戻してきたので、その日はとてもごきげんでした。
読んでみて・・・
『ピーターラビットのおはなし』の続きのお話です。
ピーターといとこベンジャミン・バニーが、マクレガーさんの畑に忍び込み、ピーターの服を取り戻し、玉ねぎを取って帰ってくる顛末を描いたもの。
先の『ピーターラビットのおはなし』で、ピーターがなくしてしまった、あの新しい青い上着。マクレガーさんは、畑のかかしに着せておいたのですが、ピーターはうまく取り戻すことができました。
ものおじしないベンジャミンは、玉ねぎをいっぱい取って、要領よく悠々とレタスを食べ食べ畑をいきますが、この前、マクレガーさんに追いかけられ、とっても怖い思いをして、ほうほうの体で帰宅したピーターは、恐る恐るマクレガーさんの畑へいきます。玉ねぎなんてどうでもよく、そわそわして落ち着かないようす。
ピーターとベンジャミンは、ともにいたずらっこの子うさぎですが、性格の違いがよく表されています。
ベンジャミンが遊びにきたとき、青い上着を失ったピーターが、服の代わりに赤いハンカチにくるまって穴の中でうずくまっている姿、その時の顛末をベンジャミンに話している姿は、本当に怖い思いをしたピーターの気持ち、おびえた子うさぎのいじらしさがよく伝わってくる絵になっています。
そもそも、うさぎが服を着て、靴を履いて、二足歩行するなんて、不自然なことなのですが、この『ピーターラビットの絵本』は、その不自然を不自然とは感じさせない、不思議な魅力があります。
絵はきわめて写実的。うさぎはうさぎらしく、ねこはねこらしく、正確なデッサンで丁寧に描かれています。正確な写実にもとづいているのに、うさぎが服を着るという不自然が、不自然と感じられず、自然に受け止められるのは、うさぎたちにそれぞれの性格が与えられ、感情や動作にぴったりあった動きをとらえた絵で、あらわされているからでしょうか。そこに描かれた服を着たうさぎたちの姿が、何の違和感もなく、自然に見えてきます。
ピーターのお父さんはもういない(マクレガーさんに捕まって、肉のパイにされてしまったから!!)ので、お母さんがおうちでうさぎの毛の手袋や、袖口飾りを編んで生計を立てています。カモミールなどの「せんじぐすり」や、ラベンダーの『うさぎたばこ』なんかも売っています。設定も細かく、うさぎのうさぎらしいかわいい暮らしぶりが、お話にいかにもありなんといった、自然な感じを与えています。
景色の描き方、畑、植物、鳥やねずみといった他の動物たちの描き方も、きわめて写実的で正確なのも、この絵本がいかにも自然な感じを与えるのに一役かっているようです。
淡い水彩でいろどられた絵からは、雨上がりの朝のにおいや、5時間もかごの中で、ピーターとベンジャミンが辟易した、玉ねぎのにおいまでも伝わってくるようです。
たがやしたばかりで柔らかな土に残った、小さな木靴の足跡が描かれていたり、かかしに着られたピーターの上着が、雨に濡れて縮んでしまったなんていう、細かい描写も、本来不自然であるはずの服を着たうさぎのお話に、いかにもありそうな「自然さ」を与えているよう。
細やかに自然を良く観察し、愛をもって見つめている目が描きあげた、うさぎたちのお話の世界があります。
それに、この絵本には、自然なかわいらしさだけでなく、ユーモアもいっぱい!
ピーターのお父さんが、実はマクレガーさんに肉のパイにされていた!なんてブラックなものから、ねこから身を守るために、ピーターとベンジャミンが隠れたかごのうえに、ねこが5時間も座り続けたなんてこと。そのかごの中で、取ってきた玉ねぎのにおいに泣かされたり!子うさぎたちの、ふんだりけったりなおっちょこちょいぶりもユーモラスです!
息子と同じ名前のベンジャミン・バニー氏(お父さんには氏がついています!)の、ゆうゆうと背中をそらせ、お腹をつき出し、うさぎたばこの入ったパイプをくゆらせ歩く姿も、なんだかちょっとユーモラス。
そして最後に、マクレガーさんに残されたなぞの数々!
留守の間に、かかしは裸になっているわ、畑中になんの足跡か、いっぱいのとっても小さな木靴の足跡があったり!
そしてそして、なぜだかねこが温室に入って、自分で!?外から??鍵をかけていたり!!
たっぷりのユーモアと、不自然を自然に描きあげる自然への深い愛情と観察眼、丁寧なで暖かな描写力が作りあげた、とても美しく面白く、かわいらしい絵本です。
『ピーターラビットのおはなし』につづけてどうぞご覧ください。
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いつもありがとうございます。
今回ご紹介した絵本は『ベンジャミン・バニーのおはなし』
1971.11.1 福音館書店 でした。